ノンシーケンシャル オブジェクトにコーティングと散乱関数を追加する方法

ノンシーケンシャル オブジェクトは 3 次元の体積です。薄膜コーティングや散乱関数は、これら 3D 体積の面のプロパティです。この記事では、オブジェクトの「フェイス番号」の概念、オブジェクトのさまざまなフェイスに薄膜コーティングや散乱関数を適用する方法や、これらのプロパティを CAD オブジェクトに適用する際に固有な課題を取り上げています。

著者 Mark Nicholson

Introduction

ノンシーケンシャル モードで光の伝播をシミュレートする場合、各オブジェクトが正確なコーティングと散乱の定義を持ち、分析中に最高の精度を得ることが不可欠です。 OpticStudioは、ユーザーにオブジェクト「フェイス」のこの機能を提供します。 ユーザーは、プログラムに事前にロードされた(パラメトリックオブジェクト)または手動でインポートされた(CADデータファイル)3Dボリュームをレンダリングできます。 これらの3Dオブジェクトには、ユーザーがコーティングデータと散乱データを個別に編集できるようにするさまざまなサーフェスに割り当てられたフェイス番号があります。

この記事では、フェイスにコーティングおよび散乱関数を配置する方法について説明し、これらの顔が両方のオブジェクトタイプに対してどのように定義されるかを示します。

パラメトリック オブジェクト

標準レンズ オブジェクトなどのパラメトリック オブジェクト。前面の曲率半径、後面の曲率半径、中央の厚み、放射開口などのパラメータで定義するオブジェクトです。パラメトリック オブジェクトとして、ホログラム オブジェクト、回折オブジェクト、シリンダ オブジェクト、バイコーニック オブジェクトなど、数多くのオブジェクトがあります。 パラメトリック オブジェクトではフェイスを容易に定義できることが普通です。たとえば、研磨された前のフェイス、研磨された後のフェイス、および両者を接続する研磨されていない粗仕上げのシリンダで標準レンズを構成できることは容易に理解できます。

簡単な標準レンズ オブジェクトを考えます。このオブジェクトには、次のように 3 つのフェイスがあります (フェイス番号はゼロから始まります)。
 

The_Standard_Lens_Object  The_Coat_Scatter_Dialog

 

どのオブジェクトについても、それを構成するフェイスについての説明が OpticStudio のマニュアルにあり、そのフェイスを表現するわかりやすい名前が [コーティング/散乱] (Coat/Scatter) タブに表示されます。フェイスを選択すると、光線がそのフェイスとどのように相互作用するかを 3 つの選択肢から指定できます。
 

Face_Defaults

 

[オブジェクト デフォルト] (Object Default) を選択すると、ノンシーケンシャル コンポーネント エディタに入力したガラスの屈折性材料、反対側のフェイスを構成する屈折性材料、フェイスに適用した薄膜コーティング (後述)、フェイスに到達する光線の波長、偏光状態、入射角でフェイスの反射性を定義できます。散乱関数の適用も可能です。

[反射性] (Reflective) を選択すると、フェイスは光学材料がミラーであるかのような挙動を示します。フェイスのどちらの面に入射する光線も反射します。コーティングや散乱関数は、通常どおり適用可能です。

[吸収性] (Absorbing) を選択すると、フェイスに入射した光線はすべてそこで伝搬を終了します。コーティングや散乱関数は適用できません。

この記事では、[オブジェクト デフォルト] (Object Default) を選択することを前提に説明します。

フェイスを選択すると、[コーティング] (Coating) ドロップダウン リストを使用して、現在読み込まれているコーティング ファイルにある任意のコーティングをそのフェイスに適用できます。OpticStudioは、偏光光線を追跡および解析するための総合的な機能を備えています。入力偏光状態を任意に定義でき、透過、反射、吸収、偏光状態、消光比、リターダンスを考慮できます。

コーティングは、任意の材質と任意の数の層で構成できるほか、それぞれの層に複素屈折率を定義できます。コーティング材料に対しては、その分散を全面的にモデル化できます。基板には、ガラス、金属、ユーザー定義材料を使用できます。詳細は、マニュアルの「偏光解析」の「OpticStudioでのコーティングの定義」を参照してください。The Essential MacleodFilm Star などの薄膜コーティング設計パッケージからコーティング定義を直接インポートすることもできます。フェイスが空気からガラスに変化し、次いでガラスから空気に変化する場合、OpticStudio では自動的にコーティング層の順番が反転します。したがって、「ミラー反転」したコーティングを定義しなくても、同じコーティングを多くのフェイスに適用できます。

元のコーティング データ一覧を入手できない場合でも、波長と角度に対するコーティングの性能データを記述した TABLE (表形式) コーティングや、あらゆる角度と波長の光線すべてに対する反射率と透過率を定義した IDEAL (理想) コーティングを使用できます。

OpticStudio では、コーティング データを設定すると、入射光の偏光状態、波長、角度の関数として消光比、位相、リターダンス、反射、透過、吸収がすべてのコーティングについて計算されます。

続いて、面の散乱関数を適用できます。ランバーシアン、ガウシアン、ABG、ユーザー定義などの散乱関数が用意されています。

たとえば、レンズの前側フェイスは十分に研磨され、1/4 波長厚の MgF2 コーティングが適用されていると考えられます。このコーティングは、OpticStudio に付属するデフォルトのコーティング カタログには「AR」という名前で収録されています。このコーティングをレンズの前側フェイスであるフェイス 1 に次のように適用します。

 

Front_face_of_the_lens

 

側面フェイスであるフェイス 0 には、研磨もコーティングも施されていない可能性が高いので、次のように設定します。

Side_face

 

CAD オブジェクト

CAD オブジェクトデータ ファイルで定義するオブジェクトです。このオブジェクトとして、ポリゴン オブジェクト、表形式フェーセット オブジェクトなどのほか、STEP、IGES、SAT、STL の各フォーマットを通じて CAD パッケージからインポートしたオブジェクトもあります。これらのオブジェクトには、フェーセットした不連続面で構成したもの、滑らかに連続した面で構成したもの、フェーセットした面と連続した面の両方の領域を持つものがあります。データ ファイルによるオブジェクトの定義では、「フェイス」の定義が複雑になります。フェイスの構造を明確に把握できるような単純なフェーセット ミラーであっても、多くのフェーセット面で構成されており、フェイスの数学的記述がきわめて複雑になることがあります。複雑な CAD オブジェクトが関与すると、平坦面、曲面、スプラインなどのセグメントで構成された数メガバイトもの巨大なファイルを扱うことが必要になります。

SolidWorksCreo ParametricCATIA 3D CAD パッケージで設計した体積オブジェクトを、各種のCAD 交換フォーマット. を介して OpticStudio にインポートできます。これによって、光学モデルの作成に幅広いオブジェクトを使用できるようになります。なお、このようなオブジェクトの面に光学特性を設定する場合に特有の課題があります。

まず、CAD オブジェクトは数メガバイトもの大容量のデータとして記述されていることが普通です。次に、CAD プログラムでは多くの場合、データが意味のある順序ではエクスポートされません。したがって、オブジェクトの面を構成する各 CAD エンティティを意味のあるフェイス群として編成する作業が必要になります。

より複雑な光学系は存在するものの、レンズマウントのCADを考える事とします。

 

Mobile_phone_lens

 

このオブジェクトには、55個の独立した CAD 面が存在します。CAD 面とは、オブジェクトを記述するために CAD プログラムで使用する基本単位です。さらに、それらの面は脈絡のない順序で記述されています。したがって、たとえば CAD 面 45 の記述位置がわかっていたとしても、CAD 面 46 の記述位置を知る手立てにはなりません。

レンズマウントや他の機械的部品の場合、オブジェクト全体がひとつの面特性で表すことは困難です。この例では、レンズマウント内部は墨塗りなどで反射率及び散乱特性が低く、レンズマウント外部は鏡面仕上げが施されていない、粗い散乱性の仕上げ面が形成されているとします。それらの設定を55の面に施す必要があります。

当然のことながら、55 もの CAD 面を手作業で編集することは非現実的です。他の CAD オブジェクトでは、サイズがこれよりはるかに大きくなる場合もあります。こうした理由から、OpticStudio にはフェイスを CAD 面にどのように割り当てるかを指定する便利なオプションがあります。このオプションは、インポートするオブジェクトの [フェイス モード] (Face Mode) プロパティで設定します。このプロパティには以下の値を指定できます。

  • [フェイス モード] (Face Mode) = 0 :すべての面にフェイス番号 0 を割り当てます。オブジェクト全体で定義されるフェイスは 1 つのみです。
  • [フェイス モード] (Face Mode) = 1 :長さがゼロではない曲線で複数の面のエッジどうしが接していて、その曲線上でそれら各面の法線ベクトルが、ユーザー定義の許容角度の範囲で平行と見なせる場合に、それらすべての面に共通のフェイス番号を割り当てます。この許容角度は、[フェイス角] (Face Angle) (パラメータ 8) で定義します。このモードでは、どの程度の細密さでフェイスに番号を付けるかを調整できます。[フェイス角] (Face Angle) に大きな値 (180 など) を設定すると、互いに接するすべてのフェイスに同じ番号が割り当てられます。[フェイス角] (Face Angle) が大きくなるほど、一意の面が少なくなります。
  • [フェイス モード] (Face Mode) = 2 :すべての面のそれぞれに一意のフェイス番号を割り当てます。このモードでは、一意のフェイスの数が最大になります。
  • [フェイス モード] (Face Mode) = 3 :インポートしたファイルで定義されているフェイス番号を保持します。Zemax で作成したファイルのように、CAD ファイルの中にはフェイス番号が定義済みとなっているものがあります。Zemax でこれらのフェイス番号を認識できれば、そのまま使用します。Zemax でこれらのフェイス番号を検出できない場合、面には [フェイス モード] (Face Mode) = 2 と同じ方法でフェイス番号が割り当てられます。
  • [フェイス モード] (Face Mode) = 4 :CAD ファイルで定義されている独立したオブジェクトごとに、そのすべての面に同じフェイス番号を割り当てます。1 つの CAD ファイルに複数のオブジェクトが定義されている場合に、それらオブジェクトごとにすべての面に 1 つのプロパティを割り当てる場合に便利なオプションです。

各 CAD 面には、フェイス 50 まで一意のフェイス番号が割り振られていることがわかります。50以上は面0の設定になります。

この場合、2つの表面仕上げのみを使用して、コーティング/散乱特性を定義します。1つは十分に研磨され、低散乱、無反射コーティング、もう1つはコーティングなしで散乱が非常に強いです。 これを行うには、CADオブジェクトのオブジェクトプロパティを開き、[CAD]タブに移動します。 ここでは、Surface to Face Mappingダイアログボックスで、すべてのCADサーフェスのリストと、それぞれが現在マップされている面番号を確認することができます。


Surface-to-Face-Mapping-dialog-box

 

オブジェクト ビューアを起動する前に [強調表示] (Viewer Highlights) で [面] (By Surface) を選択してから [オブジェクトの表示] (View Object) をクリックします。オブジェクト ビューアが表示されます。

Object_Viewer

 

[スピン] (Spin) コントロールとクリックしてドラッグする操作を組み合わせて、ビューアに表示されたオブジェクトを見やすい方向に回転させます。[オブジェクト プロパティ] (Object Properties) ダイアログに戻り、[全てを選択] (Select All) をクリックします。オブジェクト ビューアで、すべての CAD 面が強調表示されます。
 

The_Surface_to_Face_Mapping_and_the_Object_Viewer

 

次に、[以下へ変更 ->] (Change To ->) ボタンをクリックして、すべての CAD 面がフェイス 0 に関連付けられるように変更します。

Non-sequential_component_editor


最後に、[全てクリア] (Clear All) をクリックして、すべての面の強調表示を解除します。ここまでの操作によって、オブジェクトのすべての面に同じフェイス番号 (フェイス 0) が割り当てられます。しかし、研磨したレンズ面にはフェイス 1 などの異なるフェイス番号を割り当てる必要があります。それらのオブジェクトをオブジェクト ビューアでクリックすると、選択したフェイスが強調表示されます。


Unpolished_faces_number

 

マウスでオブジェクトをクリックして回転させると、オブジェクトの中で滑らかに研磨されたレンズ領域を構成するすべてのフェイスを容易に選択できます。

All_surface_excluding_the_outer_surface

 

オブジェクト ビューアでクリックして回転させる操作の方が、[オブジェクト プロパティ] (Object Properties) の [フェイス] (Face) タブでドロップダウン リストから面を選択するより、はるかに容易です。マウス操作によってビューアで選択した CAD 面は、ダイアログのドロップダウン リストでも強調表示されます。目的の CAD 面をマウス操作ですべて強調表示した後、[フェイス] (Face) のドロップダウン リストで [フェイス 1] (Face 1) を選択し、[以下へ変更 ->] (Change To ->) を再度クリックします。強調表示したすべての面がフェイス 1 に設定されます。
 

Adding_scatter_models

 

その他のファイルベースのオブジェクト

CAD オブジェクトは最も重要と考えられますが、OpticStudioがサポートするファイルベースのオブジェクトはこれだけではありません。OpticStudioは、データ ファイルで定義するポリゴン オブジェクトや表形式オブジェクトにも対応しています。これらはフェーセット面で構成したオブジェクトであることが普通ですが、フレネル オブジェクトのような回転オブジェクトもあります。

ポリゴン オブジェクトの場合、そのオブジェクトの作成に使用するデータ ファイルにフェイスのデータが格納されます。ポリゴン オブジェクトの詳細は、マニュアルの「ノンシーケンシャル形状オブジェクト」の「ポリゴン オブジェクトの定義」を参照してください。矩形や三角形のフェーセットごとにフェイス番号を割り当てることができます。


 

KA-01354

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