OpticStudio では、シーケンシャル面またはノンシーケンシャル オブジェクトを CAD プログラムにエクスポートすると、これらが NURBS (Non-Uniform Rational B-Splines) で記述されます。この記事では、OpticStudio の面とオブジェクトのうち、CAD エクスポート ファイル形式を使用して正確に定義できる範囲について説明し、高次非球面をエクスポートして、その精度を検証する例を紹介します。
著者 Mark Nicholson, Kristen Norton
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Introduction
OpticStudio では、シーケンシャル面またはノンシーケンシャル オブジェクトを CAD プログラムにエクスポートすると、これらが NURBS (Non-Uniform Rational B-Splines) で記述されます。
NURBSは、球、楕円、放物線、双曲線を正確に表現できるので、光学技術者にとって非常に便利です。
一方、有理 b - スプラインには限界があり、高次の光学系 (多項式非球面など) を限られた精度でしか表現できません。従って、OpticStudio で非常に高精度にモデリングされるオブジェクトについては、CAD ファイルとしてエクスポートされる時に精度が低下して、一貫性のない解析結果になりことがあります。
この記事では、CAD データへのエクスポートで正確にモデリングできるオブジェクトについて説明し、高次非球面を使用した例を紹介します。
OpticStudio の CAD への変換精度について
有理 b - スプライン (NURBS) の効果的な特性として、コーニック非球面を NURBS で正確に表現できる点があります。したがって、球面、楕円面、放物面、双曲面は NURBS 面形状で正確に表現可能です。これらの形状は光学設計で広く使用されているので、設計現場にとって、これは大きな利点です。
一方、NURBS では任意の面を任意の精度でモデル化できません。有限本数の直線では単純な円さえも正確にモデル化できないように、NURBS では円以外の面もモデル化の精度は有限になります。多項式非球面のような高次非球面は、セグメント化した複数のスプラインを使用して近似します。これは、一般的に、複数の低次多項式面を使用し、部分単位の一致によって光学面全体を近似する手法です。多くの場合、複数の 3 次または 4 次の多項式を使用して面の近似計算が実行されます。機械設計ではこの近似で十分な精度が得られますが、光の波長程度の精度で面を把握する必要がある光学精度の光線追跡では十分な検証が必要です。
光学的な高精度の面を OpticStudio でモデル化して CAD ファイルとしてエクスポートし、機械構造部を追加したうえでそれを CAD ファイルとしてインポートして光線追跡を継続する場合に、この点が問題になります。非コーニック非球面の光学的精度は、ネイティブな OpticStudio オブジェクトを NURBS 面形状としてエクスポートするときに低下します。非結像光学の場合、通常、CAD 表現の精度は十分です。しかし、結像光学系の場合、インポートした CAD 部品が、必要な形状の十分に正確な表現であることを検証する必要があります。OpticStudio では、約 10-12 の相対的な内部光学精度が光線追跡に使用されています。ほとんどの CAD では、これよりも数桁精度が低くなります。
変換精度の検証例
最適な検証方法は、NURBS 部品を使用して光線追跡解析を繰り返すことです。たとえば、r4 項と r6 項を追加したコーニック非球面による面で構成した偶数次非球面レンズを考えます。このような面は、非球面エレメントとして広く使用されていると考えられます。
スポット ダイアグラムでは、回折限界の性能が得られています。横収差図では、焦点、球面、高次球面で良好なバランスが得られ、r8 の高次球面でバランスが崩れていることが示されています。
ベースラインの測定結果が得られたので、[ファイル] (File) → [CAD ファイル] (CAD Files) ツールを使用してレンズをエクスポートします。
以下のデフォルト設定を使います。
デフォルトの設定では、32 本のスプライン セグメントを使用して非コーニック非球面を表現しており、そのエクスポートの概略精度は 10-4 レンズ ユニットです。このファイルでのレンズ ユニットはミリメートルなので、この概略精度は 0.1 ミクロンになります。この部品の製造に使用する製造手法とこの数値を比較し、通常は、その製造手法に妥当な精度まで、この設定による精度を低くします。
結果として得られるSTEPファイルは、以下のような光学性能を持っています。
スポットダイアグラムの解析結果から、光線分布がやや大きくなっており、横収差図ではスケールが +/- 0.5 ミクロンに増加しています。32 本の低次スプラインによる近似では、特に r6 次非球面の記述が不十分であることがわかります。エクスポート設定の精度を上げることで、ネイティブオブジェクトを含む光学系とCADオブジェクトを含む光学系の差を小さくすることはできますが、それにも限界はあります。NURB表現はコーニック非球面の場合にのみ厳密に正確であり、高次の非球面とその CAD 表現の間には、必ず違いが出てきます。また、公差とスプライン エクスポート設定は、製造方法により回避できる値よりも厳しい値に設定しないようにします。
性能に差があるという理由だけで、その差が重要であり、それを排除する必要があるという考えには陥らないようにする必要があります。実際に、この性能差が重要であるかどうかを判断できるのは、仕様性能の実現を担当している技術者のみです。今回の非球面の例では、横収差とスポットダイアグラム解析は、組み込みの偶数次非球面レンズとSTEPファイルの性能差を示す高感度な解析方法です。これほど高感度ではない解析機能がほかに存在することも考えられます。たとえば、STEPオブジェクトと組み込みのオブジェクトは、両方とも回折限界内の性能を持つため、PSF性能はほとんど差がありません。
MTF性能も、同様に影響を受けません。
回折限界の性能が得られる範囲であれば、良好な設計を維持できるからです。したがって、必ず現実的で物理的に有意な性能基準を光学系に適用し、CAD エクスポートの品質を評価します。
形状を直接比較する方法
上記の非球面の例では、エクスポートの性能をミックスドモードを使用したシーケンシャル解析で見てきましたが、ノンシーケンシャルで、サグをその NURBS 等価形状と直接比較すると効果的な場合があります。この比較は、各オブジェクトまで光線を追跡し、そのオブジェクトに光線が到達した点を比較することで容易に実現できます。
この記事の添付ファイルのなかの CAD_Testing.zmx というファイルでは、OpticStudio ネイティブ オブジェクト (下図のオレンジで描画されている方) をその STEP 等価形状と比較しています。
ここでは、各オブジェクトまで光線を追跡しています。2 本の光線がオブジェクトと交差する位置を評価関数で計算してその差分を求めます
ユニバーサル プロットでは、DIFF オペランドが使用されています。光源の光線が Y 軸の 0 - 30 mm をスキャンし、交差点の差分を位置の関数としてユニバーサル プロットでプロットしています。
一般的に、この差分は [エクスポート] (Export) ダイアログ ボックスで指定した [公差] (Tolerance) 設定と比較して小さいことが必要です。この値が大きい場合は、満足できる精度が得られるまで、使用するスプラインを多くします。
KA-01375
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