ジョーンズ行列面の使用方法

ジョーンズ行列面は、偏光成分を容易に定義できる方法です。この記事では、その使用方法の例を紹介します。

著者: Mark Nicholson

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はじめに

偏光解析は、従来の光線追跡の延長として、光学コーティングおよび反射と吸収による損失が光学系における光の伝搬に及ぼす影響を考慮します。

OpticStudio には、ほぼあらゆるコーティングや複屈折媒質を対象とした詳しい解析機能が用意されています。ただし、現実のプリスクリプション データがないことから、より簡潔なモデルの使用が必要になることもあります。たとえば、OpticStudio は、実際のコーティング データが入手できない場合に使用する IDEAL コーティングと TABLE コーティングをサポートしています。同様に、ジョーンズ行列を使用すると、詳しい物理的モデル化をせずに偏光成分を記述できます。何らかの偏光効果をモデル化するうえで、ジョーンズ行列は有用な「ブラック ボックス」的手法です。

ジョーンズ行列

電界の振幅と偏光状態は、複素成分 {Ex, Ey, Ez} で構成するベクトル E で記述します。光線の伝搬ベクトル k は成分 {l, m, n} で構成されます。l、m、n はそれぞれ x 方向、y 方向、z 方向に光線が成す方向余弦です。電界ベクトル E は、次の式が成り立つように伝搬ベクトル k と直交している必要があります。

この式は次のように表現できます。

2 種類の媒質間のどのような境界でもビームが偏光する可能性があります。OpticStudio は、このような偏光を詳しくモデル化します。一方で、偏光が発生する一般的な機器の理想モデルにも対応しています。このようなモデルは、シーケンシャル光線追跡では特殊な「ジョーンズ行列」面タイプとして実装され、ノンシーケンシャル光線追跡では「ジョーンズ行列」オブジェクト タイプとして実装されます。電界を記述するジョーンズ ベクトルは、次の式に従い、ジョーンズ行列を使用して書き換えることができます。

A、B、C、D はすべて複素数です。OpticStudio では、レンズ データ エディタとノンシーケンシャル コンポーネント エディタに、A の実数と虚数などの複素成分を定義するセルがあります。

ジョーンズ行列では、Ez 成分に発生する効果を定義していないことに注意が必要です。したがって、光線が面に垂直に入射すること、言い換えると、平行ビームに対し、理想化した偏光子が配置されていることを前提としています。大半の偏光子と波長板は、平行ビームまたは発散角が小さいビームに対してのみ使用されるので、この前提は妥当です。

ビームが平行でジョーンズ行列面に垂直に入射するのであれば、kE = 0 が成り立ち、k の成分は {0, 0, 1} なので、Ez はゼロになります。これにより、Ex と Ey の項のみで偏光を指定できます。光線が {0, 0, 1} 以外の {l, m, n} で入射する場合、OpticStudio では、kE = 0 が成り立つように、また E の大きさが増加しないように Ez または {Ex, Ey} が調整されます。しかし、この調整では E の大きさを小さくすることを余儀なくされることがあり、その場合は透過エネルギーの損失が発生します。

ジョーンズ行列の各係数の一般的な設定を以下に示します。これは、OpticStudio のヘルプにある設定です。

以下は、1/4 波長板として使用するジョーンズ行列面の例です。このサンプル ファイルは、この記事の添付ファイルに収められています。

ジョーンズ行列面では、曲率半径の列が使用されない点に注目です。つまり、この面は必ず平面です。このことは、垂直に入射する平行光線で使用することが普通であるという特質に即しています。この行列の要素は、レンズ データ エディタでパラメータ データとして入力します。この例のジョーンズ行列は、x 方向で 1/4 波長板のように機能するように設定されています

ジョーズ行列面の効果を簡単に確認する方法として偏光瞳マップがあります。この瞳マップは、[解析] (Analyze) [偏光] (Polarization) [偏光瞳マップ] (Polarization Pupil Map) にあります。

Polarization_pupil_map

入力の円偏光が 100% の効率で直線偏光に変化していることがわかります。x 方向の 1/2 波長板となるように、このジョーンズ行列の要素を変更すると (Areal = -1、Dreal = +1、他の要素はすべてゼロ)、回転方向が反転した円偏光が出力に現れます。偏光楕円上に表示された回転方向の矢印に注目です。

Polarization_pupil_map_2

このジョーンズ行列を X アナライザとして設定すると (Areal = +1、他の要素はすべてゼロ)、X 方向に偏光した光のみが通過するので透過率は 50% に低下します。

Polarization_pupil_map_3

注意 : [解析] (Analyze) [偏光] (Polarization) に用意されているすべての解析機能には、入力偏光を直接入力できる設定ダイアログがあります。偏光を使用するかどうかを指定するチェックボックスはあっても光の偏光状態を明示的に定義できない解析機能 (ホイヘンス PSF など) を使用すると、[システム エクスプローラ] (System Explorer) [偏光] (Polarization) のグローバル設定で偏光が制御されます。

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