この記事ではOpticStudioでのアフォーカル光学系の設計方法を紹介します。 特に、アフォーカル系とは何か、角度単位でのアフォーカル系の解析方法、円筒系の扱い方、複数の焦点空間とアフォーカル空間を持つ系の扱い方について議論します。
フォーカル光学系とアフォーカル光学系の主な違いは、フォーカル光学系は空間単位で測定し、アフォーカル光学系は角度単位で測定する点です。
以下の内容を取り上げています。
- アフォーカル光学系について
- アフォーカル光学系を最適化する方法
- 角度の単位でアフォーカル光学系のデータを取得する方法
- シリンダ光学系を扱う方法
- 複数のフォーカル空間とアフォーカル空間を持つ光学系を扱う方法
この記事には、サンプル ファイルを収めた zip アーカイブが付属しています。
著者 Mark Nicholson
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Introduction
厳密には、物体と像の両方が無限遠で共役関係になる光学系をアフォーカル光学系と定義しています。このような光学系として、入力ビームと出力ビームの両方が平行光線となるレーザー ビーム エクスパンダなどがあります。もう 1 つの例としては、光が眼で焦点を結ぶ双眼鏡のような光学系があります。双眼鏡自体は、無限遠の共役点にある物体から、無限遠の共役点にある像まで、一定の角倍率を伴って光を導くように設計されています。
無限遠の共役点に像が形成されるあらゆる光学系を指すために「アフォーカル」という用語が使用されることもあります。OpticStudio では、厳密なアフォーカル光学系または上記の広義のアフォーカル光学系を記述するために「アフォーカル像空間」という語を使用しています。
アフォーカル光学系とは
単位を選択するには、[システム エクスプローラ] (System Explorer) → [単位] (Units) タブを使用します。
像空間における光学性能の記述に使用する単位が空間単位から角度単位に変化します。使用する単位は用途ごとに異なります。
この結果、さまざまな OpticStudio 解析機能が異なる単位でレポートされます。OpticStudio でフォーカル単位またはアフォーカル単位のどちらを使用するかは、[システム エクスプローラ] (System Explorer) → [単位] (Units) タブの [アフォーカル像空間] (Afocal Image Space) で設定します。
単位が変更される点を除けば、ほとんどの OpticStudio の機能は、フォーカル像空間とアフォーカル像空間でまったく同様に動作します。フォーカルモードでは基準の波面が球面なのに対し、アフォーカルモードでは基準の波面が平面です。
機能によっては、フォーカル光学系に固有なものがあります。たとえば、アフォーカル光学系では相対照度に物理的な意味がありません。また、どちらのモードにもデフォルトの評価関数があります (フォーカル光学系ではスポット半径、x 方向のみのスポット半径、y 方向のみのスポット半径など、アフォーカル光学系では角半径、x 方向のみの角半径、y 方向のみの角半径など)。波面収差は、どちらのモードでも使用できます。
この記事では、2 つの簡単な光学系を設計します。1 つは、真のアフォーカル光学系であるレーザー ビーム エクスパンダ、もう 1 つは一方向がフォーカルでもう一方の方向がアフォーカルであるシリンダ レンズです。
アフォーカル光学系の最適化
この記事に付属する zip アーカイブ (記事の最終ページからダウンロードできます) には、出発点となる design beam_expander.zmx が収められています。ここでは、赤色の He-Ne 線で動作し、RMS 波面収差が最小となる 5 倍のビーム エクスパンダを作成することを目的としています。当初の設計では、光学系にパワーがないため、ビームも拡大されません。
[システム エクスプローラ] (System Explorer) → [アパチャー] (Aperture) をクリックし、[アフォーカル像空間] (Afocal Image Space) を選択して、すべてのパラメータがアフォーカル単位で計算されるようにします。
次に、評価関数を開き ([最適化] (Optimize) メニュー → [メリット ファンクション エディタ] (Merit Function Editor))、次のように [最適化ウィザード] (Optimization Wizard) を選択します。
波面収差、スポット半径 (x 方向と y 方向個別の値も可能)、または角半径を最小にするデフォルトの評価関数を、動径座標と xy 座標で独立して作成できます。ここでは適切に修正した光学系が必要なため、波面収差の最小化を選択し、ガウシアン求積法のアルゴリズムで 5 つのリングを使用します。[OK] をクリックして、デフォルトの評価関数を構築します。
OpticStudio で必要な追加情報は出力ビームのサイズのみです。入力ビームは 5 mm で、倍率が 5 倍であるため、出力ビームの直径は 25 mm になります。評価関数で DMFS 文の前に新しいオペランドを挿入し、次のように REAY オペランドを入力します。
ここでは、面 6 (像面) で実光線が占める y 座標の高さを 12.5 mm にする必要があります。続いて、[最適化] (Optimize) メニュー → [最適化] (Optimize) をクリックし、[開始] (Start) ボタンをクリックします。
アフォーカル光学系を短時間で最適化できます。
角度単位でのデータの解析
作成したアフォーカル光学系を評価します。評価関数で REAY オペランドの値を確認します。正確に値 12.5 になっている必要があります。これで、目的のビーム拡大が実現しました。次に、[OPD] ウィンドウ、[横収差図] (Ray-Fan) ウィンドウ、[点像強度分布] (Point Spread Function) ウィンドウ、[MTF] (Modulation Transfer Function) ウィンドウを開きます。OPD は次のような結果になります。
焦点、球面収差、高次の球面収差すべてのバランスが取れていること、光学系の PTV 波面収差が 1/1000 波長未満であることがわかります。横収差図プロットにも興味深い結果が得られています。
RMS 角偏差は 0.001 arc-min 未満です。当然のことながら、回折効果のほうがはるかに大きくなっています。スポット ダイアグラムの設定で、[エアリー ディスクを表示] (Show Airy Disc) をクリックします。
回折効果によって、分解能が 0.107 arc-min に制限されています。この点を確認するには、[解析] (Analyze) → [PSF] (PSF) → [FFT PSF 断面] (FFT PSF Cross-section) を参照します。
これは、回折効果によって、約 0.107 arc-min のエアリー ディスクが発生することを示しています。
[解析] (Analyze) → [MTF] (MTF) → [FFT を使った MTF] (FFT MTF) には、arc-min 当たりのサイクル数の単位で光学系のコントラスト比が示されます。
シリンダ光学系
シリンダ光学系は、一方の平面でフォーカルであり、他方の平面でアフォーカルなので、やや複雑になります。記事の添付ファイルから cylindrical_lens.zmx ファイルを開きます。
このファイルでは、後面が平坦で前面がトロイダル面であるシリンダ レンズが示されています。このレンズは直線状の焦点を形成することを目的としています。この焦点は、y 方向に最小限の空間を占め、x 方向に最小限の発散角を持ちます。このレンズは容易に実現できます。再びメリット ファンクション エディタとデフォルトの評価関数ツールを開きます。これを次のように設定します。
これにより、y 方向のスポット サイズを最小化する評価関数が得られます。
評価関数の末尾までスクロールすると、42 行のオペランドが入力されていることがわかります。続いて、デフォルトの評価関数ツールを再び使用します。
これによって、x 方向のビーム発散角を制御するオペランドが構築されます。43 行から始める理由は、y 方向のスポット サイズを扱うオペランドを維持することにあります。これにより、この評価関数では、y 方向に最小限の空間、x 方向に最小限の発散角を持つ直線状の焦点が求められます。最適化変数は、y 方向の半径、x 方向の半径、後側焦点距離です。最適化を実行すると、最適な光学系が再び短時間で生成されます。
なお、この技法は IMSF オペランドを使用して拡張できます。IMSF を使用すると、評価関数を実行しながら像面を再定義できます。したがって、面 10 でフォーカル、面 6 でアフォーカルな光学系は、評価関数で角半径の評価関数を作成してその直前で IMSF=6 を指定し、RMS スポット半径の評価関数を追加してその直前で IMSF=10 を指定することで容易にモデル化できます。
マルチコンフィグレーション オペランド AFOC を使用して、コンフィグレーション間でアフォーカル モードをズームすることもできます。ZPL キーワードの GETSYSTEMDATA と SETSYSTEMPROPERTY を使用すると、ZPL マクロでアフォーカル像空間の切り替えを制御できます。
KA-01529
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