重要度サンプリングを使用して散乱を効率的にモデル化する方法

OpticStudio には、高い散乱効率を得るための 2 つの機能として、散乱方向と重要度サンプリングが用意されています。この記事では、これらの各機能について詳しく説明し、重要度サンプリングを使用して迷光解析を実施します。

著者 Akash Arora

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序論

面散乱のモデル化は、多くの光学系で重要であり、迷光解析には不可欠です。面散乱を正確にモデル化するには、膨大な本数の光線が必要になりますが、その場合は演算時間が非常に長くなることが考えられます。したがって、多くの場合、散乱方向または重要度サンプリングを活用して、解析の範囲を絞り込む必要があります。これらのどちらの機能でも、ほぼすべての散乱プロファイルを扱うことができる柔軟性を保持すると同時に、高い散乱効率が得られます。この記事では、[オブジェクト プロパティ] (Object Properties) ダイアログの [散乱方向] (Scatter To) タブにある [重要度サンプリング] (Importance Sampling) の機能について解説します。

 

重要度サンプリングを使用して高い散乱効率を得る方法

重要度サンプリングの機能は、基本的に散乱方向の機能とは異なります。散乱方向の機能では、目的のオブジェクトと相互作用する散乱光線のみを追跡します(その散乱光線が、目的のオブジェクトに必ず到達するわけではありません)。一方、重要度サンプリングのリストにオブジェクトを追加すると、OpticStudio によって、そのオブジェクトを中心とする目標球の方向に必ず光線が散乱するようになります。OpticStudio では、散乱プロファイルを考慮するために、オブジェクト位置での光束が現実的な状態になるように、これらの光線のパワーが重み付けされます。その結果、S/N 比が高くなります。目標球の大きさおよび目標球が適用できる最大立体角はユーザーが指定します。

下図の光学系では、入射光がランバーシアン面で半球範囲の各方向へ散乱しています。1 本の入射光線あたり 10 本の光線が散乱しても、小型のディテクタに到達する光線はほとんどありません。

 

Scatter without importance sampling

 

しかし、重要度サンプリングを有効にすると、多数の光線がディテクタに到達します。

 

Scattering with importance sampling

 

重要度サンプリングを使用する場合、理解しておくべき重要な点がいくつかあります。第一に、散乱光線の到達目標はオブジェクトそのものではなく、オブジェクトのローカル原点を中心として特定の半径を持つ球体 (目標球) であることです。したがって、目標球の大きさをオブジェクトよりも若干大きく設定し、目的のオブジェクトよりも広い領域を散乱光線が満たすようにする必要があります。

目標球で定められた立体角の範囲で散乱面の BSDF が大幅に変化しないように、目標球には限界パラメータを定義します。この設定が必要になる理由は、OpticStudio によって散乱光線にパワーが割り当てられる方法にあります。前述のとおり、光線の方向は BSDF に依存しないため、光束に対して適切な重み付けが必要です。特定のオブジェクトを目標として重要度サンプリングした各光線は同じ光束で構成されます。OpticStudio では、目的の立体角の範囲で BSDF の平均が計算され、それに基づいて各光線に光束が割り当てられます。下図の散乱関数のプロットは、散乱ベクトルの大きさの特定範囲 (縦方向の赤線で区切られた範囲) と、重要度サンプリングした光線に対して OpticStudio が選択すると考えられる BSDF の概略値 (横方向の赤線) を示しています。

 

BSDF plot

 

目標球の立体角の範囲で、検知できる程度の大きい変化が BSDF にあると、重要度サンプリングした光線の光束は目標球の位置で不正確になります。

散乱効率と解析時間を重要度サンプリングでどの程度改善できるかを実感するには、通常の散乱と重要度サンプリングによる散乱を比較します。下図は、1E5 本の解析光線および散乱点から約 0.2 sr の立体角を張る目標オブジェクトを設定した光学系で、ディテクタに到達する光線数を示したものです。

 

Detector hits plot_IS_vs_no_IS

 

重要度サンプリングを使用すると、1 本の散乱光線による散乱の時間と同じ時間で、数倍の本数の光線が到達しています。次に、重要度サンプリングを使用した迷光解析の例を検討します。

 

望遠鏡内部の散乱光のモデル化

迷光解析が必要であることが最も広く知られている光学系として天体望遠鏡があります。その理由は、多くの場合、目的とする信号 (光源としての天体の光度) がきわめて弱いため、ノイズとしての迷光が重大な悪影響を及ぼすためです。

この例では、望遠鏡の鏡筒内壁で散乱してディテクタに到達する迷光の量を測定します。重要度サンプリングを使用することで、多くの光線がディテクタに到達するようにして、ディテクタに到達する迷光の測定精度向上を確認します。この記事の添付ファイル "IS.zmx" を開いてください。

 

Telescope model

 

このファイルは、マクストフ望遠鏡をモデル化したもので、光学系内部でのノイズの主要な発生源となる軸外光源が設定されています。光が望遠鏡に入射すると、鏡筒内面で反射または散乱します。注 : 光学面でもいくらかの散乱は発生しますが、この解析の目的に照らして鏡筒による影響にのみ注目します。望遠鏡の鏡筒は、100% の光線が散乱するランバーシアン散乱プロファイルでモデル化します (鏡筒は正反射を抑止するように機械仕上げ加工されていると仮定します)。光線追跡を実行すると、ディテクタ ビューアには次のような統計データが表示されます。
 

Detector without importance sampling

 

このデータから、エネルギーの 0.6% に相当する、光源光線の約 4% が実際にディテクタに到達していることがわかります。散乱光によってディテクタ上に得られるパワーを正確に測定するには、ディテクタに到達する光線数を可能なかぎり多くする必要があります。重要度サンプリングが効果的なのは、このような場面です。

第 2 補正レンズの位置に置かれた目標球に重要度サンプリングを設定します。ディテクタにはどの散乱点からも光が直接到達しないので、ディテクタを重要度サンプリングには使用できません。注 : 大きさのパラメータは、目標球の半径を定義します。目標球は主鏡のアパチャーよりも意図的に若干大きく設定し、ディテクタに到達するすべての光線がその中に必ず収まるようにします。立体角の限界はデフォルト値のままにします。[散乱方向] (Scatter To) タブに、下図のようにデータを入力します。

 

Scatter To tab settings

 

光線追跡を実行すると、次のようなディテクタの統計データが得られます。

 

Detector with importance sampling

 

重要度サンプリングを使用することで、ディテクタに到達する光線本数が 2 倍になり、散乱強度のより詳細な構造を確認できるようになりました。

ディテクタに到達するパワーを測定できたので、迷光を抑えるために詳しい測定が必要かどうかを判断できます。迷光が残っていても、目的を達成するうえで十分な S/N 比を確保できるのであれば、望遠鏡にバッフルを実装する時間とコストを避けるという判断もあり得ます。光学系の仕様を満たすために一歩踏み込んだノイズ抑制が必要と判断した場合は、バッフルの設置が必要になることもあります。

KA-01586

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