この記事では、シーケンシャル モードでビーム スプリッタ キューブを作成する方法を説明します。 このようなシステムをモデリングするための最大の課題の一つは、シーケンシャル モードでは複数の光線パスを同時にトレースできないことです。 したがって、ビーム スプリッタ内の透過経路と反射経路の両方に沿って光線をトレースするために、複数のコンフィグレーションが必要になります。 この記事では、偏光効果と薄膜コーティングを考慮して、透過ビームと反射ビームの両方のトータル パワーを計算する方法についても説明します。
著者 Nam-Hyong Kim
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Introduction
ビーム スプリッタは、OpticStudio のシーケンシャル、ノンシーケンシャルの両方のモードでモデル化できます。
ノンシーケンシャル モードでは、光線を屈折面で屈折光線と反射光線にオブジェクトのインターフェイスを使って分割できます。複数の透過および反射光線光路を同時にトレースする機能と、座標ブレークを使用せずに軸外形状を簡単に定義できる機能は、ノンシーケンシャル モードの核となる利点の2つです。
シーケンシャル モードでは、複数の光線光路を同時にトレースすることはできません。 表面からの透過光と反射光の両方の光路を追跡するためには、それぞれの光路を別々のコンフィグレーションでモデル化する必要があります。 この記事では、実用的な透過率と反射率が 50/50 となるビーム スプリッタの設計例を用いて、このようなインターフェースをモデル化する方法を探ります。
光学系とスプリッタ面の定義
複数の透過光線と反射光線の経路を追跡する必要のあるシーケンシャル モード光学系をモデル化する方法を実証するために、以下の偏光に依存しない50/50ビーム スプリッタ キューブを構築します。
このキューブは、MgF2 コーティングの N-BK7 ガラスで作成されています。この場合は、偏光、入射角、波長に依存しない 50/50 コーティングが理想的です。緑色で示された反射光線は、上方の像面に到達する前に下方のミラーで反射します。ここでは、N-BK7 のバルク吸収、薄膜コーティング表面によるフレネル損失、理想コーティングによる 50/50 分割を考慮しながら、両方の像面での正確な強度を計算します。
この例を開始する前に、OpticStudio で光学系と面のプロパティを指定する方法を知っておく必要があります。この方法については記事「シングレット レンズの設計方法 パート1:セットアップ」および「シーケンシャル光学部品にティルトとディセンタを適用する方法」を参照してください。
設計を始めるにあったって、以下の設定をシステム エクスプローラで行います。
- アパチャータブで, アパチャー タイプ: 入射瞳径とし、値: 15.0 とします。
- 視野タブで軸上視野を1つだけ設定します。視野 1 を X=0 , Y=0 とします。(デフォルト)
- 波長タブで 1 波長を設定します。 波長 1 で 波長 (μm) = 0.550 とします。(デフォルト)
- 単位タブで レンズ単位を Millimeters とします。(デフォルト)
レンズ データ エディタで次のように各面を入力します。
レンズ データ エディタ ツールバー の [ティルト / ディセンタ エレメント] (Tilt/Decenter Elements) を使用して、面 3 の X ティルトを -45 度に設定します。
3D レイアウトを開きます。[設定] (Settings) から、[光線本数] (Number of Rays) を5、[光線パターン] (Ray Pattern) を [Y ファン] (Y Fan) を設定して Y 軸方向にのみ光線を追跡します。
矩形アパチャーの設定
シーケンシャルの Zemax のシステム アパチャーは円形で、デフォルトではすべての面に円形アパチャーがあります。ビーム スプリッタの形状を立方体にするには、矩形アパチャーを適応する必要があります。ここで、10 X 10 の矩形アパチャーを面 2 と面 6 に、傾斜した分を加味した10 X (√2*10) のアパチャーを面 4 にそれぞれ配置します。これ等のアパチャーの配置には [面のプロパティ] (Surface Properties) → [アパチャー] (Aperture) で [アパチャー タイプ] (Aperture Type) を [矩形アパチャー] (Rectangular Aperture) に、[X 半幅] (X-Half Width) と [Y 半幅] (Y-Half Width) にそれぞれ適切な値を入れます。
3D レイアウトを更新します。
ビネッティングされているマージナル光線をレイアウトから削除するには、3D レイアウトの設定で [ビネット光線の削除] (Delete Vignetted) ボックスをチェックし、更新します。
スプリッタ用コーティングの適応
ここで、プリズムの内面と外面の両方にコーティングを設定します。外側の面である面 2 と面 6 には「AR」コーティングを配置します。同様に内側のスプリッタ面 4 に「I.50」を配置します。AR は厚みが 1/4 波長の MgF2 反射防止コーティングであり、 I.50 は透過率が 50% 、反射率が 50% の理想コーティングです。これらのコーティング設定により、プリズムの前面と後面での透過率を高め、内面でビームを均等に分割します。
透過光強度の解析
これで、モデル化するビーム スプリッタの直線 (屈折) 光路を作成しました。コーティング ファイルで理想コーティングを定義して追加することで、任意の透過量を指定できます。また、コーティング層の厚みと材料タイプを指定するか、コーティングの透過プロパティを波長と入射角の関数として指定することで、非理想コーティングを作成することもできます。OpticStudio でコーティングを定義する方法の詳細については、ヘルプ ファイルの「コーティングの定義」を参照してください。
コーティングが理想的であっても、計算や解析で偏光の効果を検討する場合にのみ、薄膜コーティングの効果を考慮できます。OpticStudio では、偏光を扱うことができる解析や計算で像面での全透過率を評価できます。ここでは、偏光光線追跡を使用して、像面での主光線の全透過率を計算します。
偏光光線追跡を開き ([解析] (Analysis) → [偏光] (Polarization) → [偏光光線追跡] (Polarization Ray Trace))、以下の設定を指定します。
全透過率がウィンドウの下部にレポートされます。
偏光光線追跡では、追跡する光線の波長や面に対して光線が成す角度に関係なく、損失の要因がすべて考慮されます。このような要因として、AR コーティングが設定された N-BK7 面、50/50 での分割、N-BK7 によるバルク吸収などがあります。
マルチコンフィグレーションを用いた、反射光路のモデリング
マルチコンフィグレーションを使用して反射光路をモデル化します。マルチ コンフィグレーション エディタを開き ([設定] (Setup) タブ → [MC エディタ] (MC Editor))、[コンフィグレーションを挿入] (Insert Configuration) 又は <Ctrl+Shift+Ins> キーを使ってコンフィグレーションを挿入します。
マルチコンフィグレーション エディタで PRAM オペランドを挿入し、座標ブレーク面 5 に X 軸を中心としたティルト (パラメータ 3) を指定します。
2 番目のコンフィグレーションに倍率が -1 のピックアップ ソルブを配置します。
コンフィグレーション 2 では反射光路をモデル化するので面 4 では、材料タイプを N-BK7 から MIRROR に変更する必要があります。面 4 に対して GLSS オペランドを挿入し、コンフィグレーション 2 で MIRROR を指定します。レンズ データ エディタをコンフィグレーション 2 に切り替えるために <Ctrl+A> キーを使います。レンズ データ エディタのタイトル バーに [コンフィグ 2/2] (Config 2/2) と表示されます。
3D レイアウト用に次の設定を入力して、すべてのコンフィグレーションを表示します。
反射光線 (緑色) が誤った方向 (上方) に伝搬していることがわかります。この原因は、コンフィグレーション 2 のミラーに設定した反射後の厚みの符号規則が正しくないため、光線の「仮想」伝搬が発生したことにあります。実伝搬に相当する厚みは、ミラーでの反射の後、その符号が必ず反転します。偶数個のミラー (ミラー 0 も考慮します) で反射した後、実伝搬では厚みが正の値となり、仮想伝搬では負の値になります。奇数個のミラーで反射した後、実伝搬では厚みが負の値になり、仮想伝搬では正の値になります。この符号規則は、ミラーの総個数や、座標ブレークが存在するかどうかについても関係なく適用されます。この規則は基本的なものであり、180 度の座標回転を使用しても回避できません。したがって、コンフィグレーション 2 の面 5 と面 6 の厚みを変更する必要があります。面 5 と面 6 に THIC オペランドを挿入し、2 番目のコンフィグレーションに -1 倍のピックアップ ソルブを配置します。
仮想伝搬に関するより詳細な情報は、ヘルプ ファイルの「規則と定義」の中の「仮想伝搬」の項目を参照してください。
3D レイアウトを更新たあと、光線が期待通り伝搬していることを確認します。
2つ目のビーム光路の定義
ここでは、2 つ目のビーム光路をモデル化します。この光路は、逆反射された後にビーム スプリッタを透過するような光路です。この光路では、光線は1回目の光路と同じ形状に遭遇しなければなりません。 光線はある面から次の面へと順次移動しなければならないので、光線が再びビーム スプリッタと相互作用できるように、この2回目の光線のためにビーム スプリッタ キューブを再定義しなければならないことを意味します。 新しい面 7 を挿入し、面の厚みに面 6 の厚さの -1 倍のピックアップ ソルブを配置します。この面には MIRROR を適用します。
次に、スプリッタ キューブを再定義します。レンズ データ エディタで面 7 の後に 3 面挿入します。材質は最初の 2 面は N-BK7 で3番目の面は材料を設定しません。ティルト/ディセンタ エレメントを使用して、立方体の対角面に 45 度のティルトを適用します (面 10)。この面の材料タイプは MIRROR ではなく N-BK7 です。下方のミラー (面 7) で光線が反射した後、上方の像面に到達する透過光線と反射光線を追跡する必要があるからです。
現在のコンフィグレーション (コンフィグレーション 2) が表示されるように 3D レイアウトを設定し更新します。
今のところレイアウトは奇妙に見えますが、これは単に、2番目の光路の面に面のアパチャーをまだ適用していないからです。 これは次のセクションで行います。
最終設計の整理
面 8、面 10、面 12 に矩形アパチャーを設定するには、面のプロパティのウィンドウで適切な面のアパチャーをピックアップします。面 8 と面 12 には面 2 から、面 10 には面 4 からピックアップします。
面 10 のコーティングを I.50、面 8 と面 12 のコーティングを AR にそれぞれ設定します。
3D レイアウトを更新すると、ビーム スプリッタの 2 つ目のパスが正しく定義されていることがわかります。
However, although we have the correct setup for Configuration 2, we do not for Configuration 1, because Surfaces 7-12 are also present in that configuration. To see this, display all configurations in the 3D Layout.
これでコンフィグレーション 2 は正しく設定できましたが、コンフィグレーション 1 は面 7 から面 12 がコンフィグレーション 1 にも存在しているため、正しく表示できていません。すべてのコンフィグレーションを表示すれば、この様子がわかります。
To correct this, we can insert one IGNM operand into the Multi-Configuration Editor. This operand allows us to ignore a range of surfaces in a given configuration. Insert one IGNM operand with First Surface: 7 and Last Surface: 12. Notice that the 3D Layout now looks great!
これを修正するために、IGNM オペランドをマルチコンフィグレーション エディタに挿入します。IGNR (面の無視) オペランドを使用すると、導入されたコンフィグレーション でこれらの面が無視されるようになります。面 7 から面 12 に IGNR オペランドを挿入し、コンフィグレーション 1 での値を「1」(無視) に設定します。これで 3D レイアウトも整いました。
ビーム光路強度の解析
2 つの像面でのビーム強度を調べるために、[偏光光線追跡] (Polarization Ray Trace) をそれぞれのコンフィグレーションで開きます。最初の [偏光光線追跡] (Polarization Ray Trace) ウィンドウ ツールバー の [クローン] (Clone) をクリックすると、最初のウィンドウと設定が同じで別の [偏光光線追跡] (Polarization Ray Trace) ウィンドウを開きます。
ウィンドウごとに異なるコンフィグレーションを選択します。
これで、両方のコンフィグレーションで全透過率が表示されます。予想通り、コンフィギュレーション2の透過強度はコンフィギュレーション1の半分以下となります。これはビームが2回プリズムを透過したからです。
立方体がその中心を基準として回転するように光学系を変更することもできます。このように変更したファイルは Rotating BS.zmx として用意されています。
KA-01588
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