物理光学伝搬 (POP) の使用方法第 2 部 : ビーム強度の検証

この記事では、OpticStudio の物理光学伝搬 (POP) を使用する際に、ビーム強度プロファイルに発生する可能性がある問題について検討します。このような問題として、ビームのサンプリング不足やビーム周辺での適切なガード バンドの欠落などがあります。これらを修正する方法をいくつか紹介します。
 

著者 Erin Elliott

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序論

この記事は、POP シリーズの第 2 部です。このシリーズでは、POP を使用して簡潔な光学系の設定と評価を適切に進める方法について説明します。第 1 部では、例として使用する光学系について説明し、そこで実行した POP の結果を評価する方法を取り上げています。第 2 部では、ビームの強度および強度に関連して発生する問題について検討します。第 3 部では、ビームの位相および位相に関連して発生する問題について検討します。

物理光学伝搬 (POP) の使用方法第 1 部 : 設定およびビーム ファイル ビューア」では、設定を確認し、例でサンプルシステムを検証しました。物理光学伝搬 (POP) の使用方法第 3 部 : ビームの位相の検証 では、ビームの位相を検証します。

ビーム強度データの問題点

第 1 部で述べたように、サンプル光学系のさまざまな面でビームを検証するには、ビーム ファイル ビューアを使用します。

図 1 : サンプル光学系のレイアウト プロットとレンズ データ エディタ
 

POP を実行したときにビーム ファイルを保存しているので、ビーム ファイル ビューアで適切なファイルを選択すれば、任意の面におけるビームを検証できます。

図 2 : ビーム ファイル ビューアでのファイルの選択
 

面 1 は物体面に位置するダミー面です。したがって、面 1 でのビームは、この光学系に入射したビームを示しています。図 3 に示すように、ウェスト半径が 6.4 ミクロンのガウス ビームが予想どおりに得られています。

図 3 : ビームの開始面である面 1 で得られている予想どおりのビーム強度

一方、面 2 ではグリッド幅がきわめて大きくなり (248.4 mm)、ビームの解像が不十分です (図 4)。1 番目のレンズの前面である面 4 では、グリッド幅が 511.8 mm となり、ビームのサンプリングがさらに不足しています (図 5)。ビームを拡大すると、個々のピクセルを判別できることがわかります (図 6)。ピクセル端では強度が急激に変化するので、ビームの伝搬距離が長くなるに伴い、X 方向と Y 方向に高周波のアーチファクトが発生するようになります。

図 4 : きわめて大きいグリッド幅に起因してサンプリング不足となっている面 2 のビーム強度
 

1 番目のレンズの前面である面 4 では、グリッド幅が 511.8 mm となり、ビームのサンプリングがさらに不足しています (図 5)。ビームを拡大すると、個々のピクセルを判別できることがわかります (図 6)。ピクセル端では強度が急激に変化するので、ビームの伝搬距離が長くなるに伴い、X 方向と Y 方向に高周波のアーチファクトが発生するようになります。

     

図 5 : サンプリングが完全に不足している面 4 (1 番目のレンズの前面)              図 6 : 強度分布のピークがわずか 4 ピクセルで表示されていることがわかる面 4 でのビームの拡大

サンプリングの問題の解決方法

この問題を解決するには、開始時点でのグリッド幅を大きくする必要があります。ビームは焦点から 1 番目のレンズの前面まで長い光路を伝搬しています。これは実質的にビームのフーリエ変換に相当します。フーリエ変換では、ある面での解像度は、その前面のグリッド幅に反比例します (図 7)。

図 7 : 焦点からレンズまで伝搬するビームのフーリエ変換。ある空間のグリッド幅が以降の空間のピクセル サイズを決定。第 1 の面のグリッドが大きくすることにより、第 2 の面で高い解像度が実現

したがって、面 2 ~ 4 の解像度を高くするには、開始面のグリッド幅を 0.1 から 0.4 mm に変更します(図 8 を参照)。

図 8 : 開始面 (面 1) 以降の面での解像度向上を図るために、大きいグリッド幅を開始面に設定

POP の実行後、まず面 1 のビームを拡大して (図 9)、グリッド幅を変更した後も十分な解像度が得られていることを確認します。図 10 から、ビームのサンプリングが引き続き問題ないレベルであることがわかります。

     

図 9 : 面 1 で適切なサンプリングが維持されていることを確認するために、面 1 でのビーム (開始ビーム) の拡大を設定
図 10 : 面 1 のビーム (開始ビーム) を拡大して、合計グリッド幅を 0.4 mm に大きくしてもサンプリングが適切であることを確認
 

一方、面 4 のグリッド幅は、より妥当な値である 126 mm になっています (図 11)。拡大図 (図 12) でも、ビームのサンプリングが大幅に向上していることを確認できます。

     

図 11 : 面 4 で、より妥当なグリッド幅である 126 mm が実現                         図 12 : 面 4 のビームを拡大して、サンプリングの大幅な向上を確認

光線が平行光線になっている空間でのサンプリングの調整

つづいて、円形遮蔽を配置した面 9 に到達したビームを調べます。図 13 を見ると、グリッド幅は変化していません。それでも、円形遮蔽の形状にはピクセルが目立ちます。X 方向と Y 方向の縁に沿った鋭いエッジにより、以降の伝搬に伴って非物理的なアーチファクトが発生します。

図 13 : 面 9 でサンプリング不足になっている中央遮蔽

レイアウト プロット (図 1) を見ると、面 3 (1 番目のレンズ前方のダミー面) から面 9 (遮蔽) まで、ビームのサイズは大きく変化していません。ビームが伝搬する光路も長くありません。このような場合、面 3 のサンプリングを変更すると、光線が平行光線である空間に存在する以降のすべての面にもその変更が適用されます。
 

面 3 に戻ってビーム ファイルを表示すると、合計グリッド幅は 120 mm です (図 14)。このビームのサンプリングを見直します。図 15 に示すように [面のプロパティ] (Surface Properties) → [物理光学] (Physical Optics) メニューを使用します。ここで合計グリッド幅を 30 mm に設定することで、ビーム断面を表示するピクセルが 4 倍に増加します。

図 14 : 面 3 の合計グリッド幅は 121 mm

図 15 : 面 3 のグリッド幅を 30 mm に小さくすることで、以降の面でのサンプリングが 4 倍向上

POP を再度実行すると、面 3 のグリッド幅が想定どおり 30 mm になっていることを確認できます (図 16)。さらに、面 9 まで進んでビームを拡大すると、中央遮蔽の解像度が大幅に向上していることがわかります (図 17)。この解像度であれば、ピクセルのエッジに起因するアーチファクトも最小限に抑えることができます。

     

図 16 : 面 3 のグリッド幅を [面のプロパティ] (Surface Properties) メニューで 30 mm に変更
図 17 : 面 9 で適切にサンプリングされている中央遮蔽

サンプリング不足の像

上記の 2 点の変更により、2 番目のシングレットの後面である面 13 までは良好なサンプリングを設定できました。残念ながら、像面 (面 15) のビーム強度を検証すると、サンプリングに再び問題が発生していることが明らかになります

図 18 : 像面でサンプリング不足になっているビーム
 

ここでも、ビームは 2 番目のレンズ後面から焦点まで長い光路を伝搬しています。したがって、像面での解像度は、2 番目のレンズ後面の合計グリッド幅に反比例します。2 番目のレンズ後面のグリッド幅を大きくすることで、像面上でのサンプリングの問題を修正できます。
 

2 番目のレンズ後方のダミー面 (面 14) で実際に再サンプリングしてみます。当初のグリッド幅は 30 mm です (図 19)。

図 19 : 面 14 での当初のグリッド幅は 30 mm

面のプロパティで、このグリッド幅を 60 mm に変更します (図 20)。

図 20 : グリッド幅を 60 mm に変更することで、像面上の解像度を 2 倍に改善可能

POP を再実行すると、面 14 でのサンプリングが良好に維持されていることを確認できます。像面では、ビームの解像度が 2 倍に向上しています (図 21)。

図 21 : 像面上のビームでサンプリングが変更前の 2 倍に向上していることを確認
 

幾何光学光線追跡の結果との比較

このサンプル光学系の場合、焦点の近傍を除けば、幾何光学光線追跡でもガウス ビームが適切に再現されています。したがって、POP の結果を幾何光学光線追跡の結果と相互に検証できます。この相互検証にはフットプリント ダイアグラムが特に効果的です。面と幾何光学光線の交差、およびその面のアパチャーと幾何光学光線との交差がプロットされるからです。

フットプリント ダイアグラムによる相互検証の例を下図に示します。幾何光学光線に対しては、ガウシアン アポダイゼーションを 1 として設定します。したがって、光線のエッジはビームの強度が 1/e2 になる位置に相当します。ビーム ファイル ビューアで面 9 を表示すると、グリッド幅は 7.8 になっています。比較のため、面 9 のアパチャーの [最大半径] (Maximum Radius) を 7.2 に設定します。これによって、ビーム ファイルと同じスケールのフットプリント プロットが生成されます。2 つのプロットを比較すると、ビームのサイズはよく一致しています。

しかし、同じ比較を焦点面で実施すると、2 つの図は一致しません。幾何光学光線は理想的な焦点を結ぶのに対し、ガウス ビームには有限のウェスト サイズがあるからです。焦点近傍では、フットプリント ダイアグラムを使用して POP 結果との相互検証はできません。

ポアソン スポット

2 番目のレンズの手前、中心遮蔽から一定の距離だけ離れた位置に面 11 が設定されています。この面のビーム ファイルには興味深い特徴があります。予想どおり、アパチャーの縁から外側に向けてフレネル リングが波紋状に広がっています。
このほか、ビームの中心に明るい点があります。この点はポアソン スポットと呼ばれています(1818 年、ポアソンはフランス科学アカデミーが主催する懸賞論文の審査員を務めていました。フレネルは光を波動とする回折理論の論文で懸賞に応募します。光の粒子説を支持していたポアソンは、中央遮蔽の後ろに明るい点が発生すると予想するこの理論は馬鹿げていると主張します。この論争は、審査員長が実験でこの輝点を再現できたことで決着が付き、フレネルは懸賞を獲得しました)。

フレネル リングのサンプリング

ちなみに、面 11 のビーム強度の断面図 (図 26) から、フレネル リングとも呼ばれるこの波紋と輝点のサンプリングを改善できることがわかります。

その実現には、面 3 のグリッド幅を 30 mm (図 16) よりも小さくする方法がありますが、ビーム周囲に残るガードバンドが大幅に減少することから、積極的に使用するわけにもいきません。

より優れた解決策として、合計サンプリング数を 1024 から 2048 に引き上げる方法があります。この変更は、POP ウィンドウだけでなく、すでに面ごとに調整した物理光学の各種プロパティにも適用する必要があります。図 27 は、サンプリングを 2048 に引き上げたことで向上した結果を示しています。コンピュータのハードウェアで決まる計算時間を許容できる範囲で、サンプリングを引き上げることができます。

     

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