物理光学伝搬 (POP) の使用方法第 3 部 : ビームの位相の検証

この記事は、サンプル光学系を題材として、物理光学伝搬 (POP) の正しい使用方法について説明するシリーズ記事の第 3 部です。第 1 部では、サンプル光学系の内容とビーム ファイル ビューアについて検討しました。第 2 部では、ビームの強度および強度に関連して発生する問題点について検討しました。第 3 部では、ビームの位相および位相に関連して発生する問題点について検討します。
 

著者 Erin Elliott

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Introduction

この記事は、POP シリーズの第 3 部です。このシリーズでは、POP を使用して簡潔な光学系の設定と評価を適切に進める方法について説明します。

物理光学伝搬 (POP) の使用方法第 1 部 : 設定およびビーム ファイル ビューア」では、OpticStudio の物理光学伝搬 (POP) を使用して、自由空間での電界の伝搬を解析しました。また、ビーム ファイル ビューアの使用方法も紹介しました。

物理光学伝搬 (POP) の使用方法第 2 部 : ビーム強度の検証」では、ビームの強度および強度に関連して発生する問題について検討しました。

この記事では、ビームの位相および位相に関連して発生する問題について検討しました。

サンプル光学系

第 1 部で述べたように、サンプル光学系のさまざまな面でビームを検証するには、ビーム ファイル ビューアを使用します。
 

図 1 : サンプル光学系のレイアウト プロットとレンズ データ エディタ
 

POP を実行したときにビーム ファイルを保存しているので、ビーム ファイル ビューアで適切なファイルを選択すれば、任意の面におけるビームを検証できます。

 

位相データの検証

振幅サンプリングは良好に機能したので、次は位相のサンプリングについて検討します。一般的に、ビームの位相プロファイルは強度プロファイルよりも急速に変化するので、そのサンプリングは強度サンプリングよりも難度が高くなります。

レンズによって入射ビームに 2 次の位相差が発生することが普通です。OpticStudio でプロットできる位相の範囲は -π~ +πに限られています。レンズによる位相差がπよりも大きくなると、位相プロットには「位相の折り返し」が発生します。たとえば、3π/2 の位相はπ/2 として表示されます。位相折り返しはプロット上の規則に過ぎず、レンズによってビームに発生する位相差が実際に不連続になるわけではありません。

ビーム ファイル ビューアでレンズの前面である面 4 を確認します。強度プロファイルに問題はないと考えられます。
 

図 2 : 1 番目のレンズ前面 (面 4) の強度プロファイル
 

つづいて、ビーム ファイル ビューアで、強度データではなく位相データを表示します。

図 3 : 位相データを表示するためのビーム ファイル ビューアの設定
 

得られた疑似カラー プロットに問題はないようです (図 3)。データに見られるリングは位相折り返しによるものです。位相のすべての部分で良好なサンプリングが得られているように見えます。

断面プロットで位相のサンプリングの良否を再確認できます([ビーム ファイル ビューアの設定] (Beam File Viewer settings) の [表示方法] (Show As) で [断面 X] (Cross X) または [断面 Y] (Cross Y) を選択します)。図 4 に断面図を示します。位相折り返しを除外して考えれば、レンズによって発生した位相差は滑らかに変化しており、サンプリングは適切です(ここでは、レンズが r4 項を持つ非球面であることから、位相の形状は r4 で変化します。球面レンズであれば、位相は r2 で変化します)。

光学系を構成するすべての面で、どのような場合でも位相が適切にサンプリングされていることを確認する必要があります。
 

図 4 : 1 番目のレンズ前面 (面 4) における位相。データのリングは、位相を折り返すプロット方法によって発生
 

図 5 : 1 番目のレンズ前面 (面 4) における位相の断面図で、レンズによって発生した位相差が適切にサンプリングされていることを確認

 

高速な光学系

高速な光学系の位相も検討しておきます。下図は、NA が 0.2、焦点距離がおよそ 40 mm の光学系です。レンズの F ナンバーは約 2.4 です。この光学系でも、両方のレンズの曲面には球面収差を補正するための非球面項が設定されています。
 

図 6 : 解析に使用する高速な光学系
 

NA の 0.2 は、約 1.56 ミクロンのウェスト半径に相当します。図 6 に示す設定で POP を実行します。第 1 部で説明した方法により、レンズの前後でサンプリングを調整済みです。
 

図 7: 高速な光学系の POP 設定
 

1 番目のレンズの前面では、正確なビーム強度が得られ、サンプリングも十分です。一方、位相をプロットすると図 7 ~ 9 に示すパターンが得られます。位相の最初の数本のリングは、適切にサンプリングされています。しかし、アパチャーの端に向かうにつれて位相変化の傾斜が急峻になり、リングが十分にサンプリングされなくなります。この状況によってエイリアシングが発生します。位相が急激に変化しているにもかかわらず、関数によるサンプリングが遅いため、レンズによる真の位相差が反映されていない、異常な幾何学的パターンが発生しています。
 

図 8 : 1 番目のレンズ前面の位相プロファイルにサンプリングが不足していることにより、エイリアシングに起因する異常なパターンが発生
 

図 9 : レンズの位相関数の端部に近づくにつれて発生するエイリアシング

図 10 : レンズ前面の位相断面図でもサンプリング不足の領域が明白

必要なサンプリングの予測

このレンズの位相プロファイルを適切にサンプリングするには、グリッド サイズをどの程度大きくする必要があるかを検討します。OpticStudio のメリット ファンクション エディタを使用してサンプリングを計算できます(ZPL マクロでも可能)。評価関数による計算を図 11 に示します。

ここでは以下の方針を採用します。

  1. ビーム端に近い位置で 2 本の光線の光路差を測定します。これらの光線は、瞳の中で互いにごくわずかな距離だけ離れているものとします(ここは、最も急激に位相が変化する可能性が高い場所です)。
  2. これら 2 本の光線間の位相変化をサンプリングするために必要なピクセル数を計算します。
  3. アパチャー全体の直径を乗じて、アパチャー全体で必要な合計ピクセル数を計算します。

この計算では、1 波長分の光路差のサンプリングに 4 ピクセルが必要であると仮定しています。瞳全体で計算すると、38,000 x 38,000 ピクセルのグリッドが必要になります。実際に必要なピクセル数よりも少なくなりますが、1 波長分の光路差のサンプリングに使用するピクセルを 2 ピクセルとすると、グリッド サイズは 16,000 x 16,000 ピクセルになります。このサイズの配列を保存するには、4.3 GB の RAM が必要です。

詳細は、OpticStudio のヘルプ ファイルで「メモリ要件」を参照してください。

コンピュータのハードウェアによっては、この規模の計算ができないこともあります。また、計算できたとしても、許容できないほどの長時間を要する可能性もあります。 

もっとも、高速な光学系の多くには光線ベースのファイバー結合アルゴリズムが適しており、POP は必要ありませんファイバー結合光学系の大部分は、レンズ端での回折による影響は無視できます。その場合は、光線ベースの結合計算を使用するようにします。

 

図 11 : 高速なレンズによる位相変化を適切にサンプリングするために必要な設定をメリット ファンクション エディタで計算
 

KA-01603

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