デジタル プロジェクタ光学系で均一な照明を実現するフライ アイ アレイ

この記事では、デジタル プロジェクタの設計へのフライ アイ空間積分器の具体的な応用に際して、そのフライ アイの設計で発生する問題について説明します。

著者 Michael Pate

Introduction

デジタル プロジェクタの設計では、均一な放射輝度のデジタル光源で静止画または動画を投影したときに、その像がスクリーン上で示す放射照度も均一になるようにする必要があります。このような投影像の放射照度に均一性を実現するには、LCD パネルなど、均一な照度の空間光変調器が必要です。光源からの直接光で空間光変調器の面に均一な照明を得ることはできません。多くの場合、ランプ アセンブリによる光源はガウシアン タイプの放射照度プロファイルを持つからです。したがって、何らかの方法でこの放射照度プロファイルを「非ガウス化」し、非均一なプロファイルを均一なプロファイルに空間上で変換する必要があります。これは一対のフライ アイ アレイ空間光積分器で実現できます。この記事では、この装置の動作原理を検討します。

フライ アイ アレイとは

フライ アイ アレイとは、独立した複数の光学エレメントを組み立てまたは成形によって 1 つの光学エレメントとしたものです。非均一な分布を持つ光を空間上で変換して、照明面に均一な放射照度分布を得るために使用します。フライ アイ アレイを搭載したデジタル プロジェクタでは、ほとんどの場合、ほぼ平行光線とした光を得るために、放物面鏡を備えたランプ アセンブリを使用します。現状では、LCD デジタル プロジェクタの照明部で光エンジンにフライ アイ アレイを使用することが普通で、これにより空間的に均一化または均質化した照明を、空間光変調器の照明面に供給します。

 

FlysEye1

 

フライ アイ アレイの写真を上に示します。この写真は、In Vision (www.in-vision.at) 社のご厚意によって掲載しています。アレイを構成する光学エレメントの形状は、正方形または矩形です。これらの光学エレメントの面の形状には、球面またはアナモルフィック面 (辺に対して垂直な方向と水平な方向で屈折力が異なる面) が使用されます。屈折力はアレイの片面のみに設定することが普通で、もう一方の面は多くの場合、平坦面です。

これらのコンポーネントを Zemax でモデル化するには、レンズレット アレイ 1 オブジェクトによる方法が最も容易と考えられます。レンズレット アレイ 1 オブジェクトは、前側を平坦なフェイス、反対側を曲面とした矩形体積のアレイで構成します。この矩形体積をユーザー定義可能な繰り返し数で配置してアレイとします。矩形体積の曲面は、平面、球面、コーニック、多項式非球面、または球面、コーニック、多項式非球面のトロイダルにすることができます。このような定義が可能なことから、アレイを構成するレンズ エレメントの精密な面形状の定義や最適化の際に優れた柔軟性が得られます。

 

Lenslet_Array_1_object

 

上図は、矩形レンズの 7 x 5 アレイによるレンズレット アレイ 1 オブジェクトです。各矩形レンズは球面レンズを矩形に切り出したものです。この用途に使用できるオブジェクトとして、他にレンズレット アレイ 2 オブジェクトと六角レンズレット アレイがあります。[ツール] (Tools) → [オブジェクトの複製] (Replicate Object) を使用すれば、どのようなオブジェクトでも簡単に複製してアレイ状に配置できます。

レンズ アレイは、ユーザー定義面の機能を使用することで、シーケンシャル光学設計でも使用できます。球面、コーニック非球面、偶数次非球面、シリンダ面のレンズによるアレイのサンプルが用意されています。

 

動作原理

通常は 2 つのフライ アイ アレイを一対として使用し、集光レンズを併用して照明面に均一な放射照度を提供します。多くの場合、第 1 のフライ アイ アレイは対物アレイ、光軸上の第 2 のアレイは視野アレイと呼ばれます。ここでは当面、対物アレイのみに着目します。対物アレイはカメラの対物レンズのように機能し、物体 (ここの例では光源) の像を対物レンズの焦点面に形成します。この様子を以下の図に示します。今回の例では、平行光線とした光源の像を対物アレイの焦点面に形成します。

 

Objective_array

 

上図のように、平行光線とした光を対物アレイに導き、対物アレイの焦点面に集光レンズを配置すると、上図に示すように照明面に均一な照射照度が得られます。完全な点光源を使用することはほとんど不可能なので、放物面反射鏡を備えたランプ アセンブリから平行光線とした光を得ることはきわめて困難です。放物面反射鏡を備えたランプ アセンブリからの光には、ある程度の発散性 (発散角) があります。ランプの発光体は体積を持つ光源であり、点光源ではないからです。次の 2 つのスクリーンショットは、発散性の光源および 2 つの視野角を持つ光源に対物アレイと集光レンズのみを使用した図です。

 

3D_layout

3D_layout_2

 

光軸と平行な光線は、照明面で重なり合って結像し、均一な照明が得られます。一方、上記左の図の緑色で示された発散光線は、光軸と平行な光線とは異なる位置に結像するため、平行光線としたビーム光線と照明面上で重なり合いません。このように軸上の別の位置に結像することで、照明面の照度が不均一になります。光軸と平行な光線のビームはすべて重なり合いますが、発散光線による照明のうち、光軸と平行な光線 (青色の光線) と同じ面を照らすのは、その半分にすぎないからです。

上記右の図では、2 つの視野角の光線が、集光レンズ部分でそれぞれ異なる物体高の位置に結像しています。このため、集光レンズによる照明面での結像も、異なる物体高の位置になります。すべての視野からの像が照明面で重なり合わないと、照明面の照度は不均一になります。

これら 2 つの例のどちらでも、第 2 のフライ アイ アレイを視野アレイとして追加することで照明の均一性を改善できます。この視野アレイを対物アレイの像面位置に配置します。視野アレイの機能は、光源のさまざまな視野からの光線が、照明面上で重なり合って結像できるようにすることです。同じ面で均一性が得られるようにするには、光軸と平行な光線と発散光線で照らされる照明面の全幅がいずれも同じであることが必要です。上記の 2 つの例で、視野アレイの追加によって得られる効果を下図に示します。発散光線と視野光線のいずれに対しても、フライ アイ レンズによる視野アレイは視野レンズのように機能し、集光レンズの効果が伴って、照明が照明面で重なり合う状態が維持されます。

 

3D_layout_with_a_field_array

3D_layout_2_with_a_field_array

 

フライ アイ アレイでの設計上のトレードオフ

設計上のトレードオフとして、アレイの垂直方向と水平方向に設けるチャネル数があります。チャネルが多いほど照明面の照度は均一になります。その一方で、レンズレット間のエッジは無限に鋭いわけではないため、ビームの光がこれらのエッジで散乱します。
レンズレットが多いほど、この散乱が顕著になります。

チャネル数を偶数とするか奇数とするかも選択する必要があります。チャネル数を奇数にすると、中央のチャネルが必ずアレイの中心となり、その両側のチャネルは中央のチャネルを中心に光学的に折り返された状態になります。この効果によって空間的な均質性が得られます。レンズレットを偶数個にすると、中央での光の強度が低下する可能性があります。

一般的に、デジタル プロジェクタの照明面で均一な放射照度を得るにはおよそ 7 チャネル以上、11 チャネル以下が必要です。これらは、あくまでも一般的な数値です。実際には光源から照明面までの照明光学系をモデル化し、フライ アイ アレイに必要なチャネル数を正確に判断する必要があります。

レンズレットの焦点距離によって 2 つのアレイの間隔が決まります。各チャネルのアパチャーと対物アレイの焦点距離によって、視野アレイを透過できる視野が決まります。チャネルのアパチャーと焦点距離、および 2 つのアレイの間隔によって、照明面の水平方向と垂直方向の大きさが決まります。視野アレイを検討するうえで、各チャネルの対物アレイのアパチャーが一定の倍率で照明面に結像するように個々のレンズレットが機能していると考える方法があります。

照明面に達する前の光源光線に偏光が必要となる LCD や LCoS のデジタル プロジェクタの光エンジンでは、偏光変換アセンブリ (PCS) を使用することが普通です。多くの場合、PCS アレイは視野アレイの平坦面側に接着されて汎用の取り付け構造を提供し、PCS の菱型アレイを堅牢に保持できます。

 

デジタル プロジェクタに使用する実際のフライ アイ照明光学系の簡単な例を以下に示します。このサンプルファイルは[ {Zemax}\Samples\Non-Sequential\Miscellaneous\Digital_projector_flys_eye_homogenizer.zmx]にて参照できます。

 

Real_fly's_eye_illumination_system_for_digital_projector_use

 

光源は、放物面鏡の焦点に中心が置かれた楕円体積です。放物面鏡からの反射光はきわめて不均一です。

 

The_resulting_output_from_the_parabolic_mirror

 

ランプをより詳しくモデル化できれば、簡単なランプ モデルであっても、均一性の問題の程度が明らかになります。次に、2 つのレンズレット アレイ オブジェクトと集光レンズを通して光線を追跡し、デジタル プロジェクタの空間光変調器の位置に配置したディテクタ オブジェクトで解析します。以下に、2 つのアレイを構成するレンズレットの数が異なるいくつかの例で得られた解析結果を示します (いずれの条件でも 2 つのアレイのレンズレット数は同じです)。

 

条件 1 : 6x4 レンズレット アレイ

Case_1_a_6x4_array_of_lenslets

 

条件 2 : 7x5 レンズレット アレイ

Case_2_a_7x5_array_of_lenslets

 

条件 3 : 11x9 レンズレット アレイ

Case_3_an_11x9_array_of_lenslets

 

この結果から、11x9 の条件で最も高い均一性が得られることが明らかです。OpticStudioを使用すれば、レンズレット数、各レンズレットの曲率半径や非球面係数などを容易に変更できます。NSDD 最適化オペランドで pixel = -4 としたデータ項目を使用することで、均一性を対象とした最適化も可能です。

詳細は、OpticStudio のマニュアルまたはヘルプファイルを参照してください。光度 (角度の関数としてのパワー) を表示するようにディテクタ ビューアを設定することで、以下に示すように、さまざまな角度の光に対するアレイの効果も明らかになります。

 

The_effect_of_the_array_of_the_angular_spectrum_of_the_light

 

KA-01669

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