一般的な照明光学系設計サイクルの概要

この課程では、照明光学系の一般的な設計サイクルの概要について説明します。作業時間の短縮と重大な過誤の防止を目的として、照明設計のさまざまな手順を学びます。

著者 Katsumoto Ikeda

はじめに : 光学設計で設計サイクルの理解が重要な 理由

設計サイクルは、光学設計のさまざまな手順を解説した手引きです。設計サイクルのさまざまな手順を特定することにより、各手順の目標を把握できます。これによって、どの時点でどのタスクを実行する必要があるかを正しく知り、設計の進捗に伴って必要となる今後のタスクを予想できます。適所で従うべき確実な手引きを使用すると、予想もしない突発事象が設計プロセスで発生することがありません。さらに、問題の原因となり得ることが予想できる今後の手順に対し、先手の予防アクションをとることさえできます。

一般的な照明設計サイクルと、照明光学系に適用するさまざまな手順について説明します。

 

レンズ設計の手引きとなる設計サイクル

光学系の場合、さらに具体的には照明光学系の場合、設計から製造まで数多くの手順があります。照明設計のプロセスで必要な各種手順を、以下の一般的なロードマップに示します。これらの手順は、設計段階と製造段階の 2 つのグループに大別できます。

 KA-01829
(参考文献 : R. Koshel 著『Illumination Engineering』、IEEE Press)

上記の設計サイクルを見ると、設計段階には手順の反復がありますが、それは設計サイクルの中で完結していることがわかります。製造段階には、設計段階の手順に戻る反復パスがあります。この手順の遡上があるということは、重要な公差パラメータを考慮しなかったことが原因で不適切な基本設計になっていると、製造の段階で問題が発生することがあり得るということです。設計サイクルの早期段階で、ここで取り上げる手順に従うことにより、反復があったとしても、その頻繁な反復を回避できることが容易にわかります。設計の初期段階近くに戻る重大な繰り返しがあると、プロジェクトの致命的な遅延につながる時間の浪費となり得ます。

以下では、上記の設計サイクルの各手順を取り上げ、詳しく説明します。

 

設計段階

  • 構想 (Concept) : この手順では、光学系の構想を決定します。これは、実現可能ないくつかの光学系、仕様要件 (光学系の目標)、および光学系を説明する記述を決定することです。システム全体の大規模な目標によって光学系部分が決まる場合は、この手順に光学設計部門が関与しないこともあり得ます。たとえば、懐中電灯の光学系は、必要に応じて大きくすることができます。一方、自動車のヘッドライトの光学要件は法規制の対象となっています。
  • 基準検討 (Baseline) : 基準検討の段階では、光学系の効率、光の分布、色特性、光学系のコスト、光学系の体積またはサイズを決定します。また、エテンデュー解析を実施して、仕様上の目標を達成するにはどのような種類の照明が必要になるかを評価します。この時点で公差の先取り的な解析を実施して、光学系のごく一般的な感度を確認しておくことをお勧めします。このような公差の先取り解析を実施することにより、後工程の公差解析段階で発生することがある製造上の問題を低減できます。その結果、製品の実効的な発売までの時間を短縮できます。直観に反するようには思えますが、この段階で公差に時間を投入することで、後工程に要する時間が短くなります。
  • 机上検討 (Literature) : 光学設計部門では、プロジェクトの最終的な目標を考慮して、考えられ得る机上検討を進めます。たとえば、重要な光学系をこの段階で判断します。例えば、反射光学系と屈折光学系のどちらが適切かを選択します。類似の光学系での経験を持つ熟練した光学設計者がいれば、多くの場合、この段階は省略されます。
  • 初期検討 (Initial Study) : この段階では、仕様上の要件を達成する最も効果的な光学系を決定できます。光学系をまだ決定していない場合は、多数の光学系による複数の光学構成をテストすることが一般的な手法です。この手順での設計は、光源とレンズのみのごく初期の光学設計とすることもできます。この手順が完了すると、設計の光学的構成が決まり、選択したパスがより確定的になります。
  • 設計 (Design) : これは、設計プロセスの実質ともいえる段階であり、最も重要な光学パラメータをここで最適化します。また、どの公差パラメータを使用するかもこの段階で決定します。この段階の最後では、公差を未解析の光学系ではあるものの、光学設計の目標を達成している必要があります。
  • 最適化 (Optimization) : 最適化の手順では、踏み込んだ最適化を導入して光学系の変動を考慮し、光学設計のパフォーマンス向上を図ります。この手順は、前の手順に対する改善作業なので、最適化に使用するパラメータは前の手順と同じです。この手順の最後では、公差を未解析の光学系で設計仕様を上回るパフォーマンスが得られています。プロトタイプと製造の段階では、光学パフォーマンスが低下する変更 (向上する変更ではありません) を光学系パラメータに導入するので、公差を未解析の段階では、設計仕様を上回るパフォーマンスが得られている必要があります。

製造段階

  • 公差解析 (Tolerance) : 公差解析の手順は、設計段階と製造段階にまたがっています。これは、この手順が製造段階に光学的公差を持ち込む最初の手順であると同時に、レンズ設計の最後の手順でもあるからです。設計の観点から重要な公差パラメータは、設計段階で決まっています。2 つの重要な解析として、感度公差解析モンテカルロ公差解析があります。感度解析では、各公差パラメータの光学特性に変動を与え、仕様にあるパフォーマンスについて光学系を解析します。モンテカルロ解析では、すべてのパラメータにランダムな変動を与えて統計的な結果を解析します。この結果に実際の製造誤差が反映されるようにするため、モンテカルロ解析パラメータの設定が必須です。残念なことながら、この手順は無視されることが少なくありません。その要因は、時間的な制約や経験の欠如のほか、MTF のような見間違いようのない数値で表現できる結像光学系に比べ、照明光学系の性質が抽象的であることにもあります。しかし、製造した照明光学系が所要の光学仕様を満足しない原因の最たるものが、この手順の無視であることは珍しくありません。
  • 製造 (Fabrication) : 照明光学系の光学部品と非光学部品は、3D CAD または 2D CAD のレイアウトで図面が作成され、光学系を構成しています。各部品を製造して、光学系を組み立てます。
  • テスト (Testing) : テストには、それぞれ 2 つのテストのサブセットで構成する 2 つのテスト タイプがあります。2 つのテスト タイプの 1 つは機械測定で、もう 1 つは機能測定です。テストのサブセットの 1 つは部品のテストで、もう 1 つは光学系全体のテストです。したがって、照明光学系では合計で 4 つのテスト手順が必要です。 

テストの確認表

サブセット

部品

光学系

タイプ

機械測定

テストが必要?

テストが必要?

機能測定

テストが必要?

テストが必要?

 

部品の機械測定の例として、非球面レンズの形状測定があり、部品の機能測定の例として、光学系を構成する 1 枚のレンズの焦点距離の測定があります。光学系の機械測定の例として、総合的な各レンズのアライメント測定があり、光学系の機能測定の例として、完成した光学系の光学パフォーマンスの測定があります。多くの場合、最も重要な測定は、光学系全体の光学的機能測定です。この測定が要件の目標を満足していれば、修正が必要な要素はありません。しかし、完成した光学系が所期のパフォーマンスを発揮できず、その原因を突き止めるために、個々の部品の測定が必要になることも少なくありません。誤りを検出するうえで、徹底した公差解析がきわめて効果的なことには注目する必要があります。

References

R. Koshel 著『Illumination Engineering』、IEEE Press

KA-01829

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