拡張現実 (AR) 用ホログラフィック導波光学系のモデル化 : 第 1 部

AR 光学系では、ディスプレイ エンジンから装着者の目まで光を伝送する導波光学系に光を結合するためにホログラムが広く使われています。この記事では、平面導波構造への入射結合光学系として、OpticStudio でホログラム面を使用する方法について解説します。

著者 Sean Lin 、Michael Cheng

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記事の添付資料

はじめに

拡張現実 (AR) は、画面上の仮想世界を実世界の情景に結合し、相互作用させる技術です。この記事では、ホログラム技術を使用した AR 用光学系をシーケンシャル モードで設定する方法について解説します。

拡張現実光学系とホログラム

ホログラムとは、高解像度の感光性エマルジョンに記録された干渉パターンです。ホログラムに関連する 2 つの明確に区別される段階があります。構成と再生の段階です。それぞれ、ホログラムの作成と、光学部品としての使用に対応します。このトピックの詳細な内容は、ナレッジベース記事『OpticStudio でホログラムをモデル化する方法』を参照してください。
一般的な AR 光学系では、ホログラムを使って光を導波光学系に結合します。導波光学系は、関連する情報をディスプレイから目に伝送するために使用します。導波光学系を使用するメリットは、その大部分が透明であることから、実世界からの光を遮らないことです。この記事では、PMMA に埋め込まれた反射型ホログラムにより AR 設計用の簡単な構造を設定する方法を、順を追って解説します。

 

仕様と設計戦略

まずシンプルな光学系を設計し、その後、改良強化を進めます。初期の仕様は次のとおりです。

  • 射出瞳距離 = 15 mm
  • 瞳径 = 3 mm
  • FOV = 10 度
  • 導波光学系厚み = 10 mm

光線は、ホログラムを使用して導波光学系に結合します。ホログラムは PMMA に埋め込み、射出面は 45 度ティルトさせます。

光学系は、実際の動作の仕組みという観点からは「逆順」にモデル化していきます。実際には (物理的な光学系では)、AR 光学系の光源がマイクロディスプレイ、像面が人間の眼の網膜になります (AR 光学系と人間の眼の射出/入射瞳は同じ位置になります)。しかし、この構成を OpticStudio で正確にモデル化し、効率的に最適化するために、物理的な光学系の射出瞳を入射瞳としてモデル化し、マイクロディスプレイを光学系の「像面」として扱います。したがって、この記事で言及する光線は、いずれも OpticStudio 内のモデルに基づく記述であることに注意してください。

初期設計

初期条件での設定は次のとおりです。

  • 入射瞳径 = 3.0 mm
  • 視野点 = Y 方向に 0 度、5 度、-5 度
  • 波長 = 0.55 µm

はじめに、絞り面の後に 2 つの面を追加して、下図のように設定します。次に、ティルト/ディセンタ エレメント ツールにより、ホログラム面を X 軸を中心に 45 度回転します。

 

 

   

 

つづいて、ホログラムの設定方法を決定します。2 つの構成ビームを定義する必要があります。ホログラムからの光線を所望の方向に回折させるために、構成ビームはコリメートされ、ビーム 2 を仮想焦点に収束させる必要があります。反射モードでホログラムを使用するため、材料は [ミラー] (MIRROR) とします。これによって、光線がホログラム面に到達した後、逆方向へと伝搬することを明示的に指定できます。

この考え方に沿って、構成ビームの光源点の座標 (x, y, z) は、次のように設定します。ビーム 1 は、コリメートされたビーム (0, -無限遠, -無限遠) とします。ビーム 2 の構成点は (0, 0, -100) に設定し、ビームの焦点がホログラムから 100 mm の位置に配置されるようにします。

 

 

ホログラムは波長 = 0.55 µm で構成されるものと仮定します。ただし、構成時にホログラムは PMMA の材料内に埋め込まれています。空気以外の材料に埋め込まれているため、[構成波長] (Construct Wave) パラメータに入力する際は、波長をスケーリングする必要があります。0.55 µm における PMMA の屈折率は 1.49358 です。したがって、構成波長は 0.55/1.49358 = 0.3682 µm になります。

   

 

レイアウトを見やすくするために、ここで小技を使用します。この設計では 2 つの面間のエッジの描画に意味はありません。したがって、[面のプロパティ] (Surface Properties) → [描画] (Draw) に移動して、[この面からのエッジを描画しない] (Do Not Draw Edges From This Surface) オプションをチェックします。面 2 から像面までの、すべての面をこのように設定します。

 

 

導波光学系内の光線の伝搬をモデル化するために、ホログラム面の後にさらに 5 つの面を追加します。そのうち、最初の 4 つは全反射 (TIR) が発生する導波光学系の側面です。最後の面は導波光学系の材料からの射出面です。

 

    

 

作業を進める間、各ミラーの中心を主光線に合わせておくために、[主光線] (Chief ray) ソルブを使用します。主光線ソルブは、座標ブレーク面にしか使用できないため、各面の前に座標ブレークを追加する必要があります。x/y ディセンタ パラメータに主光線ソルブを設定すると、選択した視野位置からの指定した波長 (主波長の場合は 0 を指定) の実主光線が常に中心に到達するように、座標ブレークの次の面のディセンタ パラメータの値が自動的に調整されます。次の図のように座標ブレークを 6 つ挿入し、それぞれの [Y ディセンタ] (Decenter Y) パラメータに主光線ソルブを配置します。

 

  

 

最適化の準備

この段階で、予備的な設計はほぼ完了しました。光学系の最適化を始めましょう。はじめに、最適化ウィザードを使用して像質の基準を RMS スポット サイズに設定します。次に [構成 Z2] (Construct Z2) を変数として、ホログラムの倍率を簡単に変更できるようにします。

 

 

この最初の最適化により、像面の RMS スポット半径を最小化するためのホログラムの最適倍率が得られます。以上で、出発点となる基本設計が得られました。この後、FOV の拡大、入射瞳径の拡大 (アイ ボックスの拡大と等価) など、この光学系をさらに強化し、導波光学系の厚みを小さくします。

 

      

参考文献

1. Konica Minolta Technology Report Vol.1 (2004)

2. OpticStudio help files

KA-01850

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