反射性と散乱性が混在する面をモデル化する方法

この記事は、部分的に反射性であることから、入射エネルギーの一部を特定の分布で拡散的に散乱する面をモデル化する方法について解説します。また、部分吸収と部分鏡面反射を組み合わせた散乱の例を示します。

著者 Dan Hill

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この記事の添付ファイル

Introduction

OpticStudioは、コーティングデータを使用して、システムを可能な限り現実的なものにする機能をユーザーに提供します。ノンシーケンシャル モードでは散乱機能とコーティング機能の両方を使用することで、部分的に反射性 (つまり、部分的に透過性) の面をモデル化できます。これらの面では、入射エネルギーの一部が特定の分布で拡散的に散乱します。 

添付ファイルから始めて、部分反射面を作成する適切なコーティング/散乱特性を利用するために、理想的なコーティングを作成して使用します。

システム設定

反射率が 60% で部分的に反射性のフェイスを持つ矩形体積があり、そのフェイスでは反射光の 80% がランバーシアン分布で散乱し、
残り 20% は正反射するものとします。このフェイスをシミュレートします。3 つのノンシーケンシャル オブジェクトを使用すると、目的とするこの散乱効果を得るためにランバーシアン散乱と理想コーティングを適用する方法を容易に示すことができます。

ファイルを新規作成する作業を繰り返さなくてもすむように、添付のノンシーケンシャル OpticStudio ファイルをダウンロードします。

ファイル : "Partial Reflection and Scattering.ZMX"

現状のファイルでは、1 つの光源 (光線) からの光線が、矩形体積の前側フェイスに入射しますが、このフェイスは材質タイプがミラーです。光源からの光線は、すべて反射して入射方向に戻り、ディテクタ面に入射します。現状では、この矩形体積のどの面にもコーティングや散乱プロファイルが定義されていません。

偏光を考慮しないモンテカルロ光線追跡を実行すると、1 本の光線がディテクタの中央にあるピクセルを全パワー 1W で照射します。
 

Detector_Viewer_1

 

理想コーティングの作成

OpticStudio でコーティングを定義および適用する方法は、それだけで 1 つのテーマとなるので、ヘルプの「OpticStudio でのコーティングの定義」で詳しく説明しています。OpticStudio では、多層誘電体コーティングや金属コーティングなど、あらゆる種類の薄膜コーティングをモデル化できます。この記事では、OpticStudio の簡潔な理想コーティングの作成と適用のみを取り上げます。

OpticStudio のすべてのコーティング同様、材質、テーパー、コーティングを定義するデータ セクションで構成するコーティング ファイルで理想コーティングを作成します。次の簡潔な構文で理想コーティングを 1 つ定義します。

IDEAL <name> <Transmitted Intensity> <Reflected Intensity>

IDEAL コーティングは、透過強度と反射係数のみで定義し、光線の波長や入射角には依存しません。エネルギーの保存則から、吸収係数は式 A = 1.0 - R - T で自動的に計算されます。たとえば、波長に依存しない、40%が透過して60%が反射するには次のように理想コーティングを定義します。

IDEAL 60Reflect 0.4 0.6

このコーティングは、波長や入射角などに関係なく、光線エネルギーの 40% を透過し、60% を反射します。OpticStudio によるあらゆる設計で使用できるコーティングは、[システム エクスプローラ] (System Explorer) → [ファイル] (Files) で表示される [コーティング ファイル] (Coating File) に定義されています。

Coating_file

 

デフォルトのコーティング ファイルである COATING.DAT ファイルは、OpticStudio の各種コーティングの基準となるデータのセクションが記述された簡潔な ASCII テキスト ファイルです。このファイルを編集して、ユーザー定義コーティングを追加できます。このファイルに追加または変更を適用した場合は、必ず別の名前でファイルを保存することをお勧めします。別名で保存しておかないと、OpticStudio の更新をインストールしたときに、デフォルトのコーティング ファイルである COATING.DAT が上書きされる場合があります。

[ライブラリ] (Libraries) → [コーティング ツール] (Coating Tools) → [コーティング ファイルを編集] (Edit Coating File) を選択して COATING.DAT ファイルを開きます。現状のファイルには、簡単な理想コーティングがいくつか定義されていますが、このデモでモデル化する反射と透過の比率に一致する定義はありません。
 

Edit_Coating

 

今回の例では、ミラー面で 60% の反射が発生するように設定する必要がありますしたがって、透過率は 40% です。
 

Add_new

 

これらの比率を示す理想コーティングを挿入する必要があります。MYCOATING.DAT.などの適切な名前で保存します。拡張子には .DAT を指定し、COATING.DAT ファイルと同じディレクトリに保存する必要があります。

理想コーティングの適用

新たに作成した理想コーティングが OpticStudio で認識されるようにするには、[システム エクスプローラ] (System Explorer) → [ファイル] (Files) の [コーティング ファイル] (Coating File) フィールドで新しいカタログを選択する必要があります。
 

Apply

 

矩形体積の前側フェイスにコーティングを適用するには、オブジェクト 2 の [オブジェクト プロパティ] (Object Properties) ダイアログを開き、[コーティング/散乱] (Coat/Scatter) タブを選択します。このタブの先頭の設定項目はコーティング/散乱グループです。オブジェクトのタイプに応じて、コーティング/散乱グループに表示される内容は異なります。矩形体積オブジェクトの場合、サイドのフェイス、前のフェイス、後のフェイスの 3 つのグループがあります。
 

Choose_face

 

このようなグループが設定されていることで、オブジェクトのフェイスごとに別々のコーティングや散乱プロファイルを適用できます。
今回の例では、[フェイス] (Face) で [1, 前のフェイス] (1, Front Face) を選択します。

デフォルトでは、どの面にもコーティングは設定されません。新たに作成した理想コーティングを矩形体積の前側フェイスに適用するには、[コーティング/散乱] (Coat/Scatter) にある [コーティング] (Coating) プルダウン メニューから目的のコーティングを選択します。
 

Select coat

 

目的のコーティングを選択し、[OK] (OK) をクリックして変更を確定して [オブジェクト プロパティ] (Object Properties) ダイアログを終了します。コーティングが適用され、適切に機能していることを検証するには、[偏光を使用] (Use Polarization) をチェックしてモンテカルロ光線追跡を実行します。
 

Ray_trace_control

 

ディテクタに到達する光線の全パワーが想定どおりに減少し、正確に光線の当初パワーの 60% になっています。
 

Detector_Viewer_2

 

選択した面への散乱の適用

コーティングの場合とまったく同様に、特定のオブジェクトのコーティング/散乱グループごとに散乱プロファイルを設定できます。
現在の例で、矩形体積の [オブジェクト プロパティ] (Object Properties) ダイアログを再度開きます。[コーティング/散乱] (Coat/Scatter) タブの [フェイス] (Face) で [1, 前のフェイス] (1, Front Face) を選択していることを確認します。

OpticStudio にはさまざまな組み込み散乱プロファイルが用意されていますが、その 1 つにランバーシアンがあります。デフォルトでは [散乱なし] (No Scattering) が選択されます。散乱を [ランバーシアン] (Lambertian) に変更すると、2 つの必須データ入力フィールドとして [散乱割合] (Scatter Fraction) と [光線数] (Number Of Rays) が有効になります。散乱割合は、0.0 (光線が散乱しない) ~ 1.0 (すべての光線が散乱する) の範囲で指定します。OpticStudio でこれらの値がどのように扱われるかは、光線分割が有効になっているかどうかによって異なります。この有効と無効は個々の解析機能ごとに指定できます。詳細は、OpticStudio のヘルプの「散乱」を参照してください。

今回の例では、散乱をランバーシアンに設定し、[散乱割合] (Scatter Fraction) に「0.8」、[光線数] (Number of Rays) に「5」を入力します。光線分割を有効にすると、この設定によって散乱エネルギーは 5 本の散乱光線に均等に配分されます。一方、正反射光線は、反射と散乱の合計エネルギーから、1.0 - 散乱割合の比率でエネルギーを受け取ります。

Scatter

 

[オブジェクト プロパティ] (Object Properties) のメニューを閉じます。

矩形体積の前側フェイスに対する変更の効果を確認するために、[NSC 3D レイアウト] (NSC 3D Layout) の設定で、[矢印の描画] (Fletch Rays)、[光線の分割] (Split Rays)、[光線の散乱] (Scatter Rays)、[偏光を使用] (Use Polarization) をそれぞれチェックします。当初の光源光線がランバーシアン確率に従って 5 本の光線に散乱し、合計 6 本の光線がディテクタに到達することがわかります。
 

Layout

 

さらに、モンテカルロ光線追跡を再度実行すると、5 本の散乱光線がすべてディテクタに到達した場合に、それらの光線の全パワーとして 0.6 ワット、つまり当初のパワーの 60% が得られます。
 

Ray_trace_control_2

 

Detector_Viewer_3

 

また、250 万本の光線を追跡し、ディテクタの分解能を高くすると、垂直の入射光で最大の放射強度が得られること、その強度が、全エネルギーのうち、正反射するエネルギーに相当することがわかります。

DetView

 

このように、部分的な反射散乱面を OpticStudio で容易に作成できます。この例で使用したツールや概念は、さらに複雑な光学系にも適用可能であり、コーティングや散乱プロファイルを適用するための基準や基本的手法は同じです。

他のオブジェクトに対する同じコーティング/散乱設定の適用

矩形体積の後側フェイスとサイド側フェイスにも、同じコーティングと散乱のプロファイルを適用して、詳しく解析するものとします。
[コーティング/散乱] (Coat/Scatter) タブのプロファイル保存機能を使用すれば、これらの設定を保存しておき、別のコーティング/散乱グループに容易に適用できます (他のオブジェクトのグループにも適用可能です)。

目的の設定を適用したうえで、[オブジェクト プロパティ] (Object Properties) ダイアログの [コーティング/散乱] (Coat/Scatter) タブの右上隅近くにある [保存] (Save) ボタンをクリックします。
 

NSC_editor

 

[新しいプロファイルを保存] (Save New Profile) ダイアログで、保存するコーティングおよび散乱設定に対応する任意のプロファイル名を入力します。
 

Partial_save

 

この保存済みプロファイルを、矩形体積の他のコーティング グループと散乱グループに対して設定します。
 

Profile

 

 

KA-01353

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