レンズレット アレイで POP を使用する方法

この記事では、レンズレットアレイを通る伝搬を扱うように物理光学伝搬の計算を構成する方法について説明します。扱いにくい光学系で POP を使用する際に有用となる設定情報もいくつか紹介します。

著者 : Mark Nicholson

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はじめに

OpticStudioの光線追跡機能では光学系の正確なモデル化が困難な状況があります。その一例として、複数の像が形成されるレンズレットアレイを使用した光学系があります。像が複数あるということは射出瞳がないということであり、このことからホイヘンス PSF FFT の実行が困難になります。このような場合は、物理光学伝搬 (POP) が有効です。POP では、複素振幅で構成する単一の配列 (アレイ) として波面を扱います。これは、レンズレットアレイを扱ううえで自然な解析手法です。

この記事では、レンズの 7x7 アレイのサンプルを POP で解析します。

光学系の定義

添付のファイルでは、レンズの 7 x 7 アレイによって像面上にスポットのグリッドが形成されます。

Layout_Spot_diagram

このような光学系では、幾何学関数はすべて良好に機能しますが、FFT とホイヘンス PSF の実行は困難を伴います。その理由は、光学系の射出瞳に存在する単一の基準球に対して波面収差を測定することにあります。しかし、物体上の点ごとに空間的に離れた 49 個の像が形成される光学系の場合、射出瞳とは何なのかということが問題になります。単一の像位置に向かって波面が収束しないので、適用できる単一の基準球が存在しないことは明らかです。このような光学系では、OPD プロット、波面収差、PSF (さらにいえば、点広がり関数の概念) は意味を成しません。

物理光学では、複素振幅で構成する単一の配列として波面を扱うので、レンズレットアレイとビームが相互作業する状況を自然な形態で扱うことができます。物理光学では設定に一定の考慮が必要ですが、その点を除けば、物理光学による解析はわかりやすいといえます。

POP の設定

光線を使用した波面計算の場合と同様に、サンプリングの要件を軽減できるように POP でも基準を使用します。OpticStudioでは、基準を使用すればビームの絶対位相を計算する必要はなく、「基準位相と比較した位相差」を計算すればすみます。POP では、この基準がパイロットビームを使用して面ごとに計算されます。パイロットビームとは、実際に発生するビームと一致する最適ガウスビームです。

スキューガウスビームの計算を使用して面から面へパイロットビームが伝搬します。ウエスト、位相の曲率半径、位置などのビームパラメータが面ごとに新たに計算されます。つづいて、パイロットビームのプロパティを使用して、実際の分布がレイリー範囲の内部であるか外部であるか、どの伝搬アルゴリズムが適切であるかが判断されます。

しかし、ビームが複数のビームレットに分割される場合、パイロットビームによる手法は、基準球の場合とまったく同様の問題に突き当たります。あるビームレットの位相基準は、その隣のビームレットに適した基準ではありません。したがって、この場合はパイロットビーム基準の使用をあきらめ、平坦な波面による基準を使用します (既存の位相曲率半径がビームに存在すれば、そのビームを使用することもできます)。

そのためには、レンズアレイ面の [面のプロパティ] (Surface Properties) を開き、[物理光学] (Physical Optics) タブへ移動します。そこで [出力パイロットの曲率半径] (Output Pilot Radius) [平面] (Plane) に設定します (付属のサンプルファイルは、すでにそのように設定されています)。

Lens_data

これで、入力ビームの位相の測定基準が最適ガウスビームではなく、平面になります。当然のことながら、ビームのサンプリングが十分に多くなるように設定する必要があります。レンズレットアレイ面で屈折したビームの位相を次のように調べることで、サンプリングが十分であるかどうかをテストできます。

Physical_optics_propagation

つづいて、像面までのビームの伝搬により、次のように正しい相対強度と回折構造を持つスポットのアレイが得られます。

Physical_optics_propagation_2

次のように対数スケールを適用すると、回折構造がわかりやすくなります。

Physical_optics_propagation_3

アレイのサイズ

このようなファイルで使用できる便利な手段がもう 1 つあります。ビームアレイのサイズの設定では [自動] (Auto) ボタンを使用しないことです。

これも、1 本の入力ビームから複数の出力ビームが得られるという問題の性質に起因しています。OpticStudioでは、パイロットビームを使用して、光学系でビームによって発生すると考えられる伝搬の初回解析を実行する場合、このデータを使用してビームアレイのサイズが計算されます。この計算では、入射ビームによって小さいスポットが形成されると判断し、両方のフーリエ領域 (入力領域と像領域) で最適なサンプリングが得られるように入力ビームのサイズを設定しようとします。

しかし、この記事の冒頭にあるスポットダイアグラムを見ると、実際にはビームの元のサイズが保持されています。ビームは複数のビームレットに分割されますが、アレイ全体のサイズは変化しません。したがって、次のようにアレイの X 方向の幅と Y 方向の幅を入力ビーム幅の倍数に設定して、アレイのエッジで顕著なエネルギーが切り捨てられないようにします。

Beam_definition

これで、この計算の設定は完了です。

KA-01402

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