この記事では、エレメントの反転ツールを使用してシーケンシャル光学系全体を反転する方法を説明します。この記事では、エレメントの反転ツールを使用する前にシステムを準備する方法を説明します。また、反転したシステムが正常に動作するように、物体と像の厚み、視野定義を調整する方法についても説明します。
著者 Andrew Locke
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序論
場合によっては、解析データに基づいて光学系を反転する方が簡単で便利な場合があります。OpticStudio は、エレメントの反転ツールを使用してこれを可能にします。このツールは光学システムの単一エレメントまたは一連のエレメントを反転することを目的としていますが、シーケンシャル システム全体を反転するために再利用することもできます。
この記事では、エレメントの反転ツールを使って光学系全体を反転する方法を説明します。この機能は光学系全体を反転配置することを目的としたものではありませんが、いくつかの簡単な手順を追加することで、そのような目的にも十分使用できます。
光学系反転のための準備
OpticStudio で光学系全体を反転する方法を実際に試すために、記事添付ファイルのリンクから付属のシーケンシャル ファイルをダウンロードします。
初期レイアウトは以下の通りです。
このファイルは、無限共役に置いた一般的なクック トリプレット写真用対物光学系です。
光学系を反転する作業の第 1 段階は、反転した光学系で使用するシステム アパチャーの定義を検討することです。可能ならば、システム アパチャーの定義を [絞り面半径による定義] (Float By Stop Size) に変更します。この定義が望ましい理由は、元の光学系と反転光学系の両方で同じシステム アパチャー定義を使用できることにあります。システム アパチャーの定義を変更できない場合は、システム アパチャーの定義を像空間から物空間に変換する方法を検討する必要があります。これは、入射瞳径と射出瞳径を入れ替えることです。この例では、[絞り面半径による定義] (Float By Stop Size) を問題なく使用できます。この設定は、システム エクスプローラの [アパチャー] (Aperture) で変更できます。
次に、近軸レイ エイミングを有効にすることをお勧めします。元の光学系に瞳収差がなくでも、反転光学系でも同じ状況になるとは限りません。レイ エイミングはシステム エクスプローラの [レイ エイミング] (Ray Aiming) で有効にすることができます。
今回の例では次のように設定します。
OpticStudio でレイ エイミングを使用する方法に関する詳細は、記事「レイ エイミングの使用方法」を参照してください。
光学系各部のサイズが反転後に変化しないように、各面の半径を固定します。これは、レンズ データ エディタのツールバーにある [半径を円形アパチャーに変換] (Convert Semi-Diameters to Circular Apertures) ボタンをクリックすることで、容易に実現できます。
先へ進む前に、反転した光学系で視野点をどのように定義するかについても考慮する必要があります。それには、元の光学系で各視野点を出発した主光線が像面上で占める入射位置またはそこで成す入射角が必要です。反転した光学系が物空間でフォーカルである場合、この入射位置または入射角のいずれかのデータを使用して、視野点を角度または物体高で指定できます。一方、反転した光学系が物空間でアフォーカルになる場合は、主光線の入射角のデータを使用して、角度で視野を指定する必要があります。入射位置および入射角のデータは光線追跡の計算から判断できます ([解析] (Analyze) → [光線とスポット] (Rays & Spots) → [単一光線追跡] (Single Ray Trace))。
位置のデータは、スポット ダイアグラム解析でも判断できます (主光線基準を使用)。
今回の例では、反転光学系が物空間でフォーカルになり、各視野点からの主光線が像面上で占める位置を使用できます。[解析] (Analyze) → [光線とスポット] (Rays & Spots) → [標準スポット ダイアグラム] (Standard Spot Diagram) をクリックしてスポット ダイアグラム ウィンドウを開きます。次に、各視野点が像面 (IMA) 上で占める座標を記録しておきます。
この場合、像の座標は 0 mm、12.419 mm、18.137 mm です。これらの値を、反転光学系で物体高による視野点定義に使用します。
光学系の反転
次に、光学系にあるすべての光学面を反転します。レンズ データ エディタのツールバーにある [エレメントの反転] (Reverse Elements) ツールを使用すれば簡単に実行できます。
面の範囲を反転することを指定する場合は、物体面と像面を除くすべての面を選択します。
次に実行する手順は、元の光学系の性質によって異なります。
Object space | Image space | How to convert thicknesses |
Focal | Focal | Swap the Thickness of the Object surface with the Thickness of the surface prior to the Image surface. |
Afocal | Focal | Copy the Thickness of the surface prior to the Image surface to Object surface. |
Focal | Afocal | Copy the Thickness of the Object surface to the surface prior to the Image surface; Set the Object Thickness to "Infinity." |
Afocal | Afocal | No changes are necessary. |
物空間 |
像空間 |
厚みの変換方法 |
フォーカル | フォーカル | 物体面の厚みと、像面の前の面の厚みを入れ替えます。 |
アフォーカル | フォーカル | 像面の前の面の厚みを、物体面にコピーします。 |
フォーカル | アフォーカル | 物体面の厚みを、像面の前の面にコピーし、物体面の厚みを [無限] (Infinity) に設定します。 |
アフォーカル | アフォーカル | 変更は不要です。 |
この例では、元の光学系が物空間でアフォーカル、像空間でフォーカルです。したがって、像面の前の面の厚みを物体面にコピーします。
変更後のレンズ データ エディタは次のようになります。
次に、システム エクスプローラの [アパチャー] (Aperture) タブにある [アフォーカル像空間] (Afocal Image Space) のチェック ボックスの変更が必要になる場合があります。元の光学系が像空間でアフォーカルだった場合、このボックスのチェックを外す必要があります。一方、元の光学系が、この例の場合のように像空間でフォーカルだった場合、[アフォーカル像空間] (Afocal Image Space) ボックスをチェックする必要があります。
同様に、システム エクスプローラの [アパチャー] (Aperture) タブにある [テレセントリック物空間] (Telecentric Object Space) のチェック ボックスの変更が必要になる場合があります。元の光学系が像空間でテレセントリックだった場合、このボックスをチェックする必要があります。一方、元の光学系が、この例の場合のように像空間でテレセントリックでなかった場合、このボックスのチェックが外れている必要があります。
最後に、前述のように視野の定義を変換する必要があります。元の光学系は物空間でアフォーカル、像空間でフォーカルだったため、元の光学系の主光線の像座標を、反転光学系の視野点に物体高として設定します。Convert To: ツールを使用することができますが、結果として得られた高さのネガを反転させて、希望の視野値を得る必要があります。
新しい 3D Layout ウィンドウを開くと、光学系が正常に反転していることがわかります。
新しいレイアウトのウィンドウを開くと、光学系が適切に反転されていることを確認できます。
KA-01408
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