ダブル パス光学系でティルトとディセンタの公差解析を実行する方法

この記事では、ダブル パス光学系で公差解析を実行する方法を解説します。以下の順を追って、シングレット レンズの公差解析を説明します。

まず、エレメントのティルトとディセンタの公差解析を目的としたダブル パス光学系を構成します。

つづいて、ダブル パスにあるレンズのティルトとディセンタを正確にモデル化するために必要なユーザー定義オペランド (TU**) を公差解析エディタに入力します。

最後に、ダブル パス光学系が、現実を反映してモデル化されていることを確認します。

著者 Dan Hill

Downloads

添付ファイル

Introduction

始めに

シーケンシャル モードでは、特定の順序で面から面へ連続して光線を追跡するので、ダブル パス光学系では、経路ごとに 1 回、合計で 2 回のモデル化が必要になります。このようなモデルは、特に公差解析の場合、適切に設定していることを慎重に確認する必要があります。

ダブル パス光学系の場合、公差の原因となる各現象は必ずしも互いに独立していません。つまり、どちらの経路でもエレメントの物理的特性が厳密に同じ場合にのみ、正確な光線追跡結果が得られます。

つまり、どちらの経路でもエレメントの物理的特性が厳密に同じ場合にのみ、正確な光線追跡結果が得られます。そのような設定のモデル化と公差解析には、座標ブレーク、ピックアップ、ユーザー定義の公差を慎重に設定する必要があります。このチュートリアルは、単一レンズによるリレーを例に挙げて、このプロセスの基本的な側面をすべて扱うことができるように考慮されています。

ダブル パス光学系

はじめに、この記事に添付された、次の OpticStudio レンズ ファイルを開きます。

“Double_Pass_Tolerance_Starting_Point.ZMX”

 

IMA 面 (像面) の前に面を挿入し、その [材料] (Material) をミラーに変更します。このファイルは、Edmund Optics 社の市販シングレット レンズ (32981) で構成されています。このレンズは有限共役で使用され、像面はレンズの後面頂点から 50 mm の位置に配置されています。

次に面 1 と面 2 をハイライトしてレンズをコピーして、MA 面の直前に貼り付けます。

レンズのリターン パスについての、曲率半径とガラスのピックアップ ソルブを設定します。さらに、厚みに位置ソルブを適用し、レンズのリターン パスが第 1 経路に重なり、IMA 面が確実に OBJ 面 (物体面) 上の点と同じ位置に配置されるようにします。

 

曲率半径のピックアップ

\Curvative_solve_on_surface_4    Curvative_solve_on_surface_5

 

面 4 は 面 5 より前にありますが、戻り経路の伝搬ではレンズの後面になります。したがって、面 4 の曲率ピックアップ ソルブは面 2 を参照する必要があります。面 5 は、戻り経路でレンズの前面になります。したがって、その曲率ピックアップ ソルブは面 1 の曲率を参照する必要があります。各面がどのような面であるかをコメント列に記述しておくと便利です。

 

厚みの位置ソルブ

面 3、4、5 に対する厚みの位置ソルブを、次のように設定します。

Thickness_solve_on_surface_3    Thickness_solve_on_surface_4

Thickness_solve_on_surface_5

 

ガラスのピックアップ

レンズのガラス タイプは両方の経路で同じであることが求められるので、ガラス タイプのピックアップが必要です。

Glass_solve_on_surface_4

 

ソルブを追加したレンズ データ エディタ (LDE) は、次のようになります。

Lens_Data_Editor

 

光学系を適切に設定していれば、2 つのレンズが正確に重なるので、3D レイアウトはレンズが 1 つのみであるように表示されます。

Layout

 

公差解析に向けた設計の設定

公差解析では、レンズのティルトやディセンタの効果を検討します。通常は TEDX、TEDY、TETX、TETY などの組み込みのエレメント公差を使用して、エレメントの変動を自動生成できます。しかし、これらの公差による効果をダブル パス光学系で解析する場合、LDE にいくつかの変更が必要です。第 2 経路に定義したレンズは、第 1 経路で定義したレンズと物理的に同じコンポーネントですが、OpticStudio ではそれを認識できないからです。このため、ティルトとディセンタを記述する座標ブレークを LDE に手動で入力する必要があります。そのうえで、ユーザー定義公差オペランドの TUDX、TUDY、TUTX、TUTY、TUTZ により、この座標ブレークのパラメータに対する公差解析を実行します。これらのオペランドは、この記事の後半で検討し、適用します。

それでは、このような手法が必要になる理由を考えてみます。OpticStudio では、各経路のレンズが「物理的に」同じレンズを定義していることを認識できないので、組み込みのエレメントのディセンタ/ティルト オペランドを使用して各エレメントが個別に扱われます。したがって、感度解析を目的として第 1 経路のレンズに変動を適用しても、その変動が戻り経路に逆方向の変動として反映されることはありません。したがって、リターン パスで追跡する光線は、変動によるティルトがないレンズで屈折します。

モンテ カルロ シミュレーションでは、両方のレンズ エレメントに適用するティルト量が異なることがあるほか、その符号が反転することもあります。このため、各モンテ カルロ シミュレーションで得られる基準値は、そのエレメントの真の物理的変動を表していません。

解析に着手する前に、記述する各レンズの前後に座標ブレークを配置する必要があります。レンズの前側頂点がティルトの回転軸と見なされます。したがって、すべてのティルトは、この位置に復元する必要があります。

公差解析を目的としてダブル パス光学系を設定するには、座標ブレークを挿入して調整しておく必要があります。これらの座標ブレークは、手動で設定するか、ティルト/ディセンタ ツールを使用して設定します。エレメントをティルト/ディセンタする方法、および座標ブレークの詳しい説明については、ナレッジベースの記事 「シーケンシャル光学部品にティルトとディセンタを適用する方法」 を参照してください。

 

面 1 と面 2 をハイライトして、レンズ データ エディタのツールバーで [ティルト/ディセンタ エレメント] (Tilt/Decenter Elements) ツールを選択します。ここでは、このツールを使用して座標ブレークを設定するだけなので、ティルトの値はゼロのままです。

Tilt_Decenter_Element_Tool

 

この時点で、レンズ データ エディタは次のようになります。

Lens_Data_Editor_2

 

Lens_Data_Editor_3

 

レイアウトは前と変わらず、次のようになります。

Layout_2

 

リターン パスの設定

第 1 経路の座標ブレークの定義は完了しました。つづいてリターン パスのレンズのティルトとディセンタをモデル化する座標ブレークを導入します。

概念は同じですが、リターン パスでもティルトを正確な値に維持するために、ピックアップ ソルブをいくつか追加する必要があります。リターン パスは、次の手順を実行することでモデル化できます。

  • ミラーの後ろにダミー面を追加します。新しいダミー面 (面 7) の厚みに位置ソルブを追加し、それに続く面 (最終的に座標ブレークにする面) を最初の座標ブレークの位置に配置します ([どの面から :] (From Surf:) を 1、[長さ] (Length) を 0 にそれぞれ変更します)。

Thickness_solve_on_surface_7

 

  • 面 7 (新しいダミー面) の [面のプロパティ] (Surface Properties) ダイアログで、[描画] (Draw) タブの [この面を描画しない] (Do Not Draw This Surface) をチェックします。

Do_Not_Draw_This_Surface

 

  • 面 8 と面 9 をハイライトし、[ティルト/ディセンタ] (Tilt/Decenter) ツールを次のように設定します。

Highlight_surfaces_8_and_9

 

  • 最初の座標ブレーク (面 8) のパラメータに、面 1 のパラメータを参照するピックアップ ソルブを設定します。

Parameters_surface_8_1    Parameters_surface_8_2

Parameters_surface_8_3    Parameters_surface_8_4

 

  • 新しい座標ブレーク面 8 に位置ソルブを追加し、それに続く面がレンズの物理的な後面に位置するようにします。

Thickness_solve_on_surface_8

 

  • 面 12 (ダミー面) を削除し、IMA 面が OBJ 面の位置に配置されるように面 11 の位置ソルブを変更します。

Thickness_solve_on_surface_11

 

この時点で、レンズ データ エディタは次のようになります。単純なダブル パス光学系であっても、これだけ多くのピックアップ ソルブと位置ソルブを必要とする点に注目してください。

Lens_Data_Editor_4

 

いくつかの面を追加したものの、レイアウトは当初とまったく同じに見えます。

Layout_3

 

この構成に誤りがないことを、どのようにすれば確認できるでしょうか。簡単な方法として、定性的な方法があります。最初の座標ブレークのパラメータの変更によってレンズにティルトやディセンタが発生したときに、レイアウトがどのように変化するかを確認します。

まず、OBJ 面をグローバル座標基準として設定していることを確認します。

Global_Coordinate_Reference

 

次に、最初の座標ブレーク面のパラメータをいくつか調整します。ここに、どのような組み合わせで値を入力しても、3D レイアウトに表示される物理的なレンズは 1 枚のみであることが必要です。そうならない場合は、リターン パスと当初のビーム パスとの対応が不適切なので、設定を再確認する必要があります。

Layout_4

 

レイアウト表示のほか、[データ一覧] (Prescription Data) の [レポート] (Report) でも、レンズの前側と後側のフェイスが両方の経路で同じグローバル位置にあることを厳密に確認できます。

Prescription_data

 

TU** オペランドの使用

TEDX や TEDY などよりも一般化した、ユーザー定義のティルトとディセンタには、5 つの公差オペランド TUDX、TUDY、TUTX、TUTY、TUTZ を使用します。組み込み公差オペランドとの主な違いは、指定のディセンタとティルトを公差解析で適用する際に、必要な座標ブレーク面が自動的に挿入されない点です。これらのユーザー定義公差は、座標ブレーク面でのみ機能します。ここまで進めてきた作業と同じように、設計段階でレンズ データ エディタに座標ブレークを入力する必要があります。

他の公差オペランドと同様に、公差解析データ エディタ (TDE) の [タイプ] (Type) 列に適切な名前を入力することで TU** オペランドも挿入できます。ここでは、ユーザー定義公差の機能を確認するために、TDE で各 TU** オペランドを入力しておきます。座標ブレークの設定が適切であることは確認済みなので、ここで必要な操作は、最初の座標ブレークのパラメータに変動を適用することだけです。光学系の他の部分は、ピックアップ ソルブや位置ソルブによって自動的に調整されます。各オペランドの「Surf」パラメータを 1 (最初の座標ブレーク面) に変更します。さらに、各オペランドの最小公差と最大公差を、それぞれ -0.2 と 0.2 に変更します。

Tolerance_Data_Editor

 

このデモをできるだけ簡潔にして、ユーザー定義公差解析オペランドの動作に注目できるように、他のオペランドやコンペンセータは一切定義しません。RMS スポット サイズの公差解析が実行され、複数のモンテ カルロ ファイルが保存されます。公差解析の対象としたレンズが想定どおりに配置されたことを、これらのファイルで確認できます。

次の設定で公差解析を実行します ([公差] (Tolerance) → [公差解析] (Tolerancing))。

Tolerancing_Set_up

 

Tolerancing_Criterion

 

Tolerancing_Monte_Carlo

 

Tolerancing_Display

 

[OK] をクリックします。

その結果、次の警告が表示されます。

 

Warning_message

 

このエラー メッセージは、レンズ データ エディタにソルブが検出されたことを警告するものです。一部の曲率ソルブや光線の高さソルブなど、多くのソルブは通常、公差解析には適していません。たとえば、特定の面の曲率にF ナンバー ソルブを設定すると、このソルブが公差解析でコンペンセータとして機能し、各変動に対して特定の F ナンバーの制約が満たされるように曲率半径が変化する結果になります。

しかし、ピックアップ ソルブや位置ソルブは公差解析で効果的な場合があり、光学系によっては不可欠となることもあります。設計段階では、配置したソルブに対する注意を怠らず、特定のソルブが解析に与える影響を判断する必要があります。

ここでは、このエラー メッセージを無視してかまいません。ここで設定したソルブは、ダブル パス光学系の正確な公差解析に不可欠であるからです。

保存されたモンテカルロ ファイルのいくつかを確認して、OpticStudio によってレンズのティルトやディセンタに選択された値を評価します。とのような値の組み合わせが選択されても、往復の経路でレンズが異なっていないことが必要です。

Layout_5

 

Lens_Data_Editor_5

KA-01433

この記事は役に立ちましたか?
0人中0人がこの記事が役に立ったと言っています

コメント

0件のコメント

サインインしてコメントを残してください。