MTF (変調伝達関数) は、正弦波入力 (物体) の空間周波数の関数として出力像のコントラストを数値化したものです。この記事では、像面をティルトした光学系では、FFT MTF とホイヘンス MTF で異なる結果が得られる理由を解説します。
著者 Mark Nicholson
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序論
MTF (変調伝達関数) は、正弦波入力 (物体) の空間周波数の関数として出力像のコントラストを数値化したものです。MTFは点像強度分布 (PSF) をフーリエ変換することで計算します。その計算には、高速フーリエ変換 (FFT) PSF またはホイヘンス PSF を使用できます。
FFT 法とホイヘンス法の計算に使用する計算平面の相違が、ティルトした像面を持つ光学系の結果に顕著な差として現れます。ホイヘンス法の計算では、像面のティルトが自動的に考慮されます。OpticStudio では一次元のベクトル シフトを適用することで FFT MTF の結果を補正できます。それ以外の場合ではホイヘンス法を推奨します。この記事では双方の例を紹介します。
座標系と単一軸のティルト
ホイヘンス MTF の計算は、ホイヘンス PSF から導かれます。この計算は、像面と直交する平面上で実行します。計算平面が像空間の座標系にあるので、像面のティルトなどのローカル座標のシフトは自動的に補償されます。したがって、この計算は、主光線が像面と直交していることを必要とせず、ティルトした像面が存在する光学系でも使用できます。
FFT MTF の計算は FFT PSF から導かれます。この計算は、瞳空間の座標系で実行されるので、計算面は主光線と直交することになります。したがって、像面を回転しても、計算で得られる MTF の方向には何の影響もありませんが、像面のティルトは影響します。
OpticStudio では、像面が X 方向または Y 方向のどちらかのみにティルトしているのであれば、その方向にベクトルのシフトを適用することで FFT 計算を補正できます。下図は、焦点位置に像面を配置した近軸光学系の FFT 法およびホイヘンス法の計算結果を比較したものです。この例では、像面が X 軸を中心として 60°ティルトしています。FFT の計算では Zemax OpticStudio によって補正係数が適用されるので、ホイヘンス法でも FFT 法でもプロットと断面には正しい結果が得られています。
これは、像面を焦点位置に置いた単純な理想レンズの例です。像面は X 軸を中心として 60°ティルトしています。このアーカイブ ファイルは、この記事の「結論」で入手できます。
下図に示すとおり、FFT 面 MTF とホイヘンス面 MTF の結果およびそれぞれの断面では同等の結果が得られています。
複雑にティルトした像面
複数の次元にティルトした像面のような複雑なティルトを伴う光学系の場合、FFT MTF 断面プロットは単一成分ベクトルのシフトで正しく補償できますが、FFT MTF 面プロットは補償できません。像面が複雑に回転すると、FFT 面補正に必要なベクトル シフトは面の各部で異なるものになり、位置を変数とする複雑な関数になります。下図は、近軸焦点位置に像面を配置した近軸光学系の FFT MTF とホイヘンス MTF の計算例です。この像面は、X 軸を中心として 60°ティルトしてから、Y 軸を中心として 45°ティルトしています。
この条件下でも両者のMTF 断面は一致していますが、FFT 面 MTF が適切にスケーリングされなくなっていることが明白です。
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