この記事では、折り返しミラー ツールを使用して折り返し光学系を設定する方法と、走査角度をモデル化するためにマルチコンフィグレーションを使用する方法について説明します。 走査ポイントの位置をオフセットすることで、ガルバノメータやポリゴン スキャン ミラーの両方をモデル化するために座標ブレークをどのように使用するればよいかについて説明します。 また、マルチコンフィグレーションで動作する評価関数を設定することで、スルースキャン性能を最適化する方法も紹介します。
著者 Mark Nicholson, Updated by Nicholas Herringer
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序論
この記事では、ミラーが基準位置から±5°スキャンするような走査ミラーを設定する方法をデモンストレートします。
特に以下の内容を取り上げています。
- 走査ミラーを作成するために必要な座標ブレークを設定する方法
- マルチコンフィグレーション エディタを使用して複数の走査角をサンプリングする方法
- ミラーをその頂点を中心としてティルトする、ガルバノメータ スタイルの走査ミラーを設定する方法
- オフセット点を中心としてミラーをティルトするポリゴン走査ミラーを設定する方法
なお、この記事には、ここで使用するサンプル ファイルを収めた ZIP ファイルが添付されています。
走査ミラーの設定
サンプルファイル starting point.zmx を用いて、走査ミラーの説明を始めます。 このファイルは単純な集光レンズをモデル化したもので、ダミー面(オレンジ色で描かれています)が走査ミラーの位置を表しています。 レンズは厚さ 5 mm の N-BK7 レンズで、F ナンバーのソルブが後ろ側の面の曲率半径に適用されており、F ナンバーが 5 に制約されています。 前面の半径と背面の焦点距離は、最高のRMSスポット性能を得るために最適化されています。
この光学系に走査ミラーを設定するために、面 2 を変換して、面 1 を基準に 90 度回転した方向に光線を反射させるとします。以下に示すように、レンズ データ エディタ のツールバーにある [折り返しミラーの挿入] (Add Fold Mirror) をクリックし、[折り返し面] (Fold Surface) に 2MIRROR LOCATION を、[ティルトタイプ] (Tilte type) に X Tilt を、[反射角] (Reflect Angle) に -90 を入力します。
この操作の後、OpticStudio がダミー面 (現在の面 3) を囲む2つの座標ブレーク面を追加し、面 3 の材質を MIRROR に変えていることがわかります。第1の座標ブレーク (面 2)によって、ミラーに先立って X 軸ティルト -45° を適用し、第2の座標ブレーク(面 4)は、さらにX 軸ティルト -45° 適用して、-90° の反射を完成させます。座標ブレーク面そのものには屈折力も光線を曲げることもできません。直前の面に対してディセンタとティルトの項を適用した新しい座標系を定義するだけです。ですがこれにより、面の光学特性から座標のジオメトリを分離できるのできわめて効果的です。加えて、ミラーの後のすべての面の厚さの成分の符号を逆転させていることに気を付けてください。これは光が逆方向に伝播していることを表しています。
ミラーを走0査ミラーにするために、ミラーにティルトを適用する必要があります。ここで、-45° の基準位置を中心としてミラーに ±5 度のティルトを実行するものとします。この追加の傾きを、既存の座標ブレーク面の X 軸ティルト パラメータに直接適用したくなりますが、そうすると単に-100°の折り返しが適用されることになります。レンズと像面の位置もずれることになるからです。 この変更を行ってしまった場合は、先に進む前に、面 2 の X 軸ティルトを-45°に戻してください。
ミラーを走査ミラーにするには、LED ツールバーにある [ティルト/ディセンタ エレメント] (Tilt/Decenter Elements) ツールを使用してティルトを指定する必要があります。以下の様に [ティルト/ディセンタ エレメント] (Tilt/Decenter Elements) を選択して [開始面] (first surface) と [終了面] (last surface) のどちらもに面 3を設定して [ティルト X] (Tilt X) に-5° を設定します。
このツールによって 2 つの座標ブレーク面が追加され、ミラーのティルトが 45° の基準位置を中心として -5° になっています。面 3 の [X 軸のティルト] (Tilt About X) の値を設定することによって、走査角を任意の値に設定できます。これら 2 つのツールによって自動的に挿入されるピックアップ ソルブにより、面 1 から面 7 の間で発生するティルトの合計が必ず -90° になり、レンズと像面の位置がミラーが走査されても固定されるようになります。
走査ミラーを正しく設定するには、このように 2 組の座標ブレーク面を使用します。1 番目の組 (外側の組) は、[折り返しミラーの挿入] (Add Fold Mirror) ツールを使用して基準位置の形状を実装することによって最も簡単に追加できます。2 番目の組 (内側の組) は、[ティルト/ディセンタ エレメント] (Tilt/Decenter Elements) ツールを使用して、目的の点を中心とした変動を定義することで実装できます。
マルチコンフィグレーション エディタの使用
ここまでに、基準位置を持ち、そこを中心にミラーを回転できる形状を作成してきました。面 3 の X 軸ティルトにデータを入力するか、[最適化] (Optimize) → [手動調整] (Manual Adjustment) → [スライダ] (Slider) を使用するだけで、任意の走査角を生成できます。一方で、最適化と公差解析を目的とするのであれば、複数のコンフィグレーションを定義して、この連続的な走査動作をサンプリングすると効果的です。この手法を使用すると、走査角をモデル化する手段として、走査角を固定した光学系をいくつか定義できます。
ここでは、45 度の基準位置を中心とした ±5° の走査角をモデル化します。[セットアップ] (Setup) → [MC エディタ] (MC Editor) をクリックし、マルチコンフィグレーション エディタのツールバーにある [コンフィグレーションを挿入] (Insert Configuration) を 2 回クリックします。これにより、3 つのコンフィグレーションが作成されます。このエディタでオペランドのプロパティのタブを開き、オペランド 1 に PRAM を設定します。このオペランドはシステム内の面のパラメータの値をコントロールします。このオペランド 1 Surface: 3 - Element Tilt と Parameter: 3 を選択します。
次に、マルチコンフィグレーション エディタで、コンフィグレーション 1-3 のオペランド 1 の値をそれぞれ -5°、0°、5° に変更し、コンフィグレーションごとに異なるスキャン角度をモデル化します。こうすることで、面 3のパラメータ 3 (X 軸ティルト) のみがあるコンフィグレーションから次のコンフィグレーションの間に変更され、レンズ データ エディタの他のすべてのパラメータは変更されません。
3 つのコンフィグレーションを 3D レイアウトですべて重ね合わせて見るためには、3D レイアウトの設定で [コンフィグレーション] (Configuration) を [全て] (All) と選択します。ミラー前面の頂点を中心としてミラーが走査される様子がわかります。この動作は、ガルバノメータ ミラーと同様です。
キーボードで Ctrl+A を押して、コンフィグレーションを手動で変更することもできます。コンフィグレーションを変更すると、ミラー、レンズ、および像面のクリア半径がすべて変更されます。これは現在のところ面の中で光線に照射された部分にあわせて、クリア半径が自動的にリサイズされるように設定されているためです。この機能はまた、レンズ設計時に常にレンズの物理的で現実的な値を与える必要性がないという点で、とても有用です。今回の場合はミラーの走査に合わせてクリア半径が変更されるのを望んでいるわけではありません。そこで面のクリア半径を固定します。そのためには、レンズ データ エディタのツールバーにある [アパチャー] (Apertures) → [半径を最大アパチャーに変換] (Congert Semi-Diameters to Maximum Apertures) を使います。この機能は、光学系内のすべての面において、各面ですべてのコンフィグレーションの中で最大のクリア半径を設定するためのソルブになります。
このレンズは最初、軸上性能のみで最適化されていました。現時点では、実質的に ±5 ° の範囲にある視野点で使用されるので、その状態に合わせて再度最適化する必要があります。最適化ウィザードを開き ([最適化] (Optimize) → [自動最適化] (Automatic Optimization) → [最適化ウィザード] (Optimization Wizard))、以下のように設定します。
レンズを再度最適化すると、走査光学系のスポット サイズが最小になるように新しいレンズが迅速に作成されます。このファイルは、添付ファイルの中に galvanometer.zmx として保存されています。
オフセットした点を中心とした走査
前述の例では、ミラーがその頂点を中心としてティルトすることが明らかでした。ガルバノメータのようなミラーをモデル化する場合には、これで問題ありません。一方で、たとえばミラーがポリゴン スキャナの構成部品である場合、ティルトの中心は頂点の後方に一定の距離を置いた位置になります。これをモデル化する方法を検討します。
ポリゴン スキャナの中心に、ミラーの回転中心点を配置する必要があります。ミラーの頂点からポリゴンの中心までの距離を 50 mm とします。回転中心点を定義するために、光学系の中のいくつかの面の厚さを変更する必要があります。まずは面 2 の厚さを 50 として、スキャンする点を 50 mm ずらします。つぎに、ミラー面を回転中心点のより 50 mm 出すために面 3 の厚みを -50 とします。次に、面 4 と 5 にそれぞれ厚さ 50 と -50 を適用して、この処理を元に戻します。 また、面 3 ~ 5 にピックアップ ソルブを適用して、それぞれが前の面の厚さを -1 倍でピックアップし、面 2 の厚さを変更した場合にすべての厚さが更新されるようにすることもできます。
最後に回転中心点を 3D レイアウトに表示させるようにします。レンズ データ エディタにて面 4 のプロパティを開いて、描画タブより、[ミラー基板] (Mirror Substrate) を [平面] (Flat) とし、 [厚み] (Thickness) を 50 とします。これらの設定はミラーがどのように描画されるかを制御するもので、光線追跡には一切影響を与えません
オフセット点を中心としたティルトになることが明確にわかります。このファイルは、添付ファイルの中に Polygon.zmx として保存されています。
KA-01573
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