OpticStudio を使用して熱効果をモデル化する方法

この記事では、OpticStudioで使用できる熱モデル化機能について説明します。OpticStudioでは、温度変化に伴うコンポーネントの膨張と収縮のほか、屈折率の温度変化もモデル化できます。この記事では、平坦なウィンドウで構成する簡単な光学系、Cooke トリプレット設計、貼り合わせダブレットの 3 種類の光学系で熱効果をモデル化します。マルチコンフィグレーションエディタとピックアップソルブを使用して、さまざまな温度の下で機能する光学系の各種パラメータを計算する方法を示します。また、熱解析の設定ツールの使用方法と光学系を断熱化する方法も取り上げます。

Authored By Nam-Hyong Kim

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はじめに

光学設計では、温度変化が光学性能に及ぼす影響の考慮が必要になることがあります。OpticStudioの熱モデル化機能では、温度変化に伴うコンポーネントの膨張と収縮のほか、屈折率の温度変化もモデル化できます。マルチコンフィグレーションエディタを使用して、さまざまな温度環境で機能する光学系を構築できます。熱効果を考慮するオペランドをマルチコンフィグレーションエディタに手動で入力するか、この作業向けに組み込まれている熱解析の設定ツールを使用できます。ここでは、3 種類の光学系を使用して、熱効果をモデル化する方法を示します。

平坦なウィンドウの例における熱効果のモデル化

まず、添付のサンプルファイル thermal_flat_glass.zmx を開きます。この例では、ビームが完全な平行光線で、光学部品は平坦です。したがって、温度変化の影響を受けるのはコンポーネントのサイズのみで、ビームの品質は変化しません。通常の温度では、ウィンドウの厚みとクリア半径は 100 mm2 枚のウィンドウ間の距離は 200 mm です。20 °C から 500 °C の温度変化でウィンドウのサイズが変化する様子を確認するものとします。当然のことながら、この最大温度は非現実的ですが、このような設定によってレイアウトの変化を目視確認できます。

thermal_flat_glass

2 枚のガラスウィンドウの間に存在する空気の熱膨張率 (TCE) 23 ppm とします。これは、アルミニウムの熱膨張率に近い値です。OpticStudioでは、空気の体積を、肉厚が無限に薄い円筒形シェル状のスペーサと見なします。基準温度におけるこのスペーサの半径は、レンズデータエディタで空気の面に指定されている半径です。このスペーサは Z 軸に沿って縦方向に膨張するほか、XY 平面上で半径方向にも膨張します。この例では、2 枚のウィンドウが平坦なので、スペーサが半径方向に膨張しても、ウィンドウ中心間の距離には何の影響もありません。

lens data editor

一般的に、スペーサが半径方向に膨張しても、2 面間の中央部厚みが変化することはありません。スペーサとレンズとの接触部の半径方向高さも変化するからです。ガラスの TCE は材料カタログで規定されています。

materials catalog

熱のモデル化を実行するには、温度で変化するパラメータをマルチコンフィグレーションエディタ (MCE) で指定し、熱ピックアップソルブを使用してこれらのパラメータをスケーリングする必要があります。MCE を開くと、2 つのコンフィグレーションが定義されていることがわかります。両方のコンフィグレーションを使用して、それぞれ異なる温度で光学系をモデル化します。

MCE

温度で変化するパラメータをすべて MCE に記述する必要があります。行 1 TEMP オペランドによる指定にあるように、1 番目のコンフィグレーションは 20°C2 番目のコンフィグレーションは 500°C におけるものです。2 番目のコンフィグレーションでは、これらすべてのパラメータに熱ピックアップソルブを配置し、1 番目のコンフィグレーションから値がピックアップされるようにします。このようにすることで、OpticStudioに組み込まれている熱スケーリング計算を使用して、これらのパラメータが調整されるようになります。

Multi-config oper

簡単な光学系における熱のモデル化

2 番目のコンフィグレーションでは、そこに割り当てた温度に従い、パラメータがOpticStudioによって自動的に計算されることがわかります。

MCE2

両方のコンフィグレーションが表示されるように 3D レイアウトを更新します。以下のレイアウトの上側は、温度が高いほうのコンフィグレーションです。

3D layout

2 番目のウィンドウの位置が熱膨張の影響を受けていることが明らかです。マルチコンフィグレーションエディタでは、ウィンドウの厚みと半径の値が変化していることもわかります。

ここで、2 番目のコンフィグレーションで面 3 と面 4 の温度のみが 1,000 °C になったとします。これらの面が、最初の TEMP オペランドによる各オペランドの温度とは異なる温度になるので、別の TEMP オペランドを挿入する必要があります。面 1 と面 2 の全オペランドの後に 2 番目の TEMP オペランドを挿入し、その値をコンフィグレーション 1 では 20、コンフィグレーション 2 では 1000 に設定します。

MCE3

2 番目のコンフィグレーションでは、面 3 の厚みが面 2 よりも厚くなることがわかります。

Cooke トリプレットにおける熱のモデル化

別の例として、Cooke トリプレットのサンプルファイルを使用して熱効果をモデル化します。このファイルは {Zemax}\Samples\Sequential にある Objectives Cooke 40 degreefield.zmxです。このサンプルファイルでは、面 6 の半径パラメータにマージナル光線の角度ソルブが設定されています。このソルブによって、マージナル光線が成す角度が指定の値になるように面 6 の曲率が自動的に変化します。熱解析を実行するには、このソルブを削除する必要があります。

どのような熱モデル化でも、その前に [システムエクスプローラ] (System Explorer) [環境] (Environment) セクションで [環境に合わせて屈折率データを調整] (Adjust Index Data To Environment) オプションをチェックしていることを確認します。このオプションをチェックしないと、熱方程式に使用する係数がガラスカタログに用意されていても、使用しているガラスの屈折率が温度によって変化しません。

System Explorer Environment

ここでは、必要なすべてのオペランドを手動で MCE に挿入する代わりに、必要なすべてのパラメータを MCE に挿入するためにOpticStudioに組み込まれているツールを使用します。MCE を開き、そのツールバーで [熱解析の設定] (Make Thermal) アイコンを選択します。

Make thermal

公称温度におけるコンフィグレーション 1 のほかに、-20 °C +60 °C におけるコンフィグレーションを追加し、合計で 3 種類のコンフィグレーションとします。[熱解析の設定] (Make Thermal Configuration) ウィンドウで次の各値を入力します。

Make thermal configuration

[OK] (OK) をクリックして、MCE が次のようになることを確認します。

MCE4

キーボードで<Ctrl + A>を押して各コンフィグレーションを切り替えると、温度変化の影響によって解析ウィンドウの結果が変化することがわかります。

設計の断熱化

OpticStudioの熱モデル化機能では、設計を断熱化することもできます。ここで使用する貼り合わせダブレットの設計で、20 °C 100 °C 2 種類の温度で発生する RMS 波面収差の差異を最小限にします。

まず、添付のサンプルファイルathermalization.zmxを開きます。1 番目のコンフィグレーションは、基準温度である 20 °C における光学系で、2 番目のコンフィグレーションは 100 °C における光学系です。これら 2 種類のコンフィグレーションは熱解析の設定ツールを使用して定義されています。各コンフィグレーションの横収差図を見ると、この光学系が示す性能が 2 種類の温度でまったく異なることがわかります。

OPD fan 1 fan 2

ハンマー最適化でガラス代替を使用して、この設計を断熱化します。熱膨張と熱収縮によってレンズの貼り合わせ部分に発生する機械的応力の量を制限するために、2 枚のガラスの TCE の差異を 1 ppm 未満に維持する設計を目指します。有効焦点距離は、元の設計値である 100 mm に維持します。

メリットファンクションエディタを詳しく調査します。行 2 EFFL オペランドで有効焦点距離を 100 mm に維持し、行 3 7 を使用してガラスの TCE の差異を制約します。ここでは、TCE そのものを制約するのではなく、TCE の差異を 1 ppm 未満に制約します。DMSF オペランド以下の評価関数は、RMS 波面収差のデフォルトの評価関数ツールを使用して作成しています。

Merit function editor

2 つのガラスには MCE でガラス代替ソルブを適用しています。これは、ガラスのソルブボックスの文字 S で示されています。このソルブによって、ハンマー最適化でガラスタイプを変更できます。システムで指定された材料カタログからガラスが選択されます。ハンマー最適化を使用して最適化開始時の設計と同形態の解を求めること、ガラス代替ではグローバル最適化またはハンマー最適化が必要なことに留意します。

Catalogs to use

最適化を実行するには [最適化] (Optimize) [ハンマー最適化] (Hammer Current) の順にクリックします。数分後に最適化を停止してもかまいません。この時点で、2 種類のコンフィグレーション (2 種類の温度) OPD がほとんど変化しないように最適化した設計が得られます。また、材料カタログを開くことで、2 つのガラスの TCE の差異が 1 ppm 未満に収まっていることも確認できます。

OPD

 

KA-01674

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