この記事では、面欠陥の公差解析に TEZI オペランドを使用する方法と、面の凹凸の空間周波数と RMS 振幅が、透過する波面に与える影響について解説します。
著者 : Nam-Hyong Kim
ダウンロード
はじめに
面の凹凸は、決定論的に記述できないため、公差解析が困難です。多くの場合、レンズ メーカーは、製造中に光学系に生じた RMS 面誤差を、単一のサンプルまたは統計的なサンプル バッチの RMS 面誤差の平均を取ることで規定します。「λ/10 または λ/20 の平面度」などの表現が一般的に使われています。この記事で検討するように、凹凸の空間周波数も重要です。
OpticStudio には、この面の凹凸専用に目標値を設定できる公差オペランド TEZI があります。この記事では、シーケンシャル光学系で TEZI オペランドを使用する方法を紹介します。
TEZI による公差解析
RMS 面誤差の公差は、次の前提の下、TEZI 公差オペランドを使用することで簡単に解析できます。
- 元の面タイプが標準、偶数次非球面、トロイダルのいずれかである
- 物理的な面誤差をゼルニケ多項式で十分に表現できる。これは、面の検査に干渉計を使用する場合、妥当な前提条件と言えます。通常、干渉計のソフトウェアは、実際の面のサグと指定した項数のゼルニケ多項式によって生成される面の間の誤差を表示するからです。
面の凹凸の RMS 振幅では、凹凸の形状は定義されません。標準面または偶数次非球面で記述されている公称光学系について公差解析を行う場合、OpticStudio はそれらをゼルニケ標準サグ面に置き換えます。これは、標準面または偶数次非球面と同じ基準面形状となり、ゼルニケ係数が公称面形状からの偏差を表します。ゼルニケ標準サグ面の詳細については、OpticStudio のヘルプ システムを参照してください。公称光学系にトロイダル面を使用する場合、この面タイプが元々サポートしているゼルニケ項を使用します。
今回は、TEZI オペランドの使用方法を簡単な例を用いて説明します。はじめに、添付のレンズ ファイル TEZI.ZMX を開いてください。このファイルには、アフォーカル像空間モードを使用し、
平坦な窓が記述されています。当然、面の形状は標準、偶数次非球面、トロイダル面のいずれかのタイプで記述できれば、どのような形状でも構いませんが、今回は単純化するために平坦な面を使用します。公差データ エディタを次のように設定します。
公差として、面 2 に対する 1 ミクロンの RMS 面誤差を設定します。最小公差値は、最大値の負の値に自動設定されます。これは、ゼルニケ標準サグ面における正の係数と負の係数を両方とも生成するためです。当然、計算結果である RMS は常に正の数値になり、その大きさは最大公差値と等しくなります。
ゼルニケ項の数は、MAX# と MIN# のパラメータで指定します。一般的に、低次の項を使用した場合、凹凸の発生頻度と、面の「こぶ」の数が減ります。一方、高次の項を使用した場合は、凹凸の発生頻度と、面の「こぶ」の数が増えます。最大次数と最小次数は、メーカーが製造した部品を干渉計で観察し、製造プロセスで形成される面に十分に一致させるために必要な最小および最大項を設定することで選択します。この作業の詳細は後述します。この例では、第 2 項から第 9 項を使用します。
ゼルニケ標準多項式の第 1 項はピストンに対応し、OpticStudio は常にこれを無視するため、Min# パラメータに設定できる最小値は 2 になります。Max# パラメータに設定できる最大値は 231 ですが、このような高次の項が必要になることは、まずありません。必要になるのは、最大でも 28 項程度でしょう。
モンテカルロ解析の実行
[公差] (Tolerance) → [公差解析] (Tolerancing) のウィンドウを開き、次の図のように値を設定します。
[OK] (OK) をクリックして公差解析を実行します。
公差レポートに、評価基準である RMS 波面収差に関する統計的な結果が表示されます。
保存されたモンテカルロ ファイル (今回は 1 つしか保存しませんでしたが、すべてを保存することも可能です) を表示するには、TEZI.ZMX レンズ ファイルと同じディレクトリにある MC_T0001.ZMX という名前のファイルを開きます。
レンズ データ エディタで、面 #2 のタイプがどのようにしてゼルニケ標準サグ面に設定されているのかを確認してください。
[解析] (Analysis) → [面] (Surface) → [サグ] (Sag) で面のサグ解析を開いて、面 #2 を選択します。
Max# パラメータを 27 に設定して公差解析を再度実行すると、下図のようなサグが得られるでしょう。面全体で、こぶの数が増えたことがわかります。ゼルニケ項の数によって、山と谷の頻度 (こぶの数) を調整できます。
ここからが重要です。面を λ/5 から λ/10、λ/20、λ/50 へと研磨していくと、RMS 面偏差は減少しますが、通常、凹凸の空間周波数 (頻度) は増加します。たとえば λ/5 まで研磨した面は、凹凸が空間周波数的には極めて「遅く」、一方で超研磨面には多くの場合、極めて高い空間周波数で凹凸が存在します。面の光学性能は、凹凸の RMS 振幅だけでなく、繰り返す山と谷の周波数にも依存します。これらは、光線を曲げる、傾斜した面を形成するからです。その様子を示した添付ファイル "periodic surface.ZMX" を開いてください。面 #2 のタイプとして、Y 方向のみの周期構造を持つ [周期性] (Periodic) を設定してあります。3D レイアウトを見ると、周期構造の振幅を一定に保ったまま周波数を大きくしたときに、異なる光線追跡結果が得られることがわかります。
ユニバーサル プロットには、周期構造の周波数の関数として、Y 方向の RMS 角度スポット サイズの変化が示されています。
これが、凹凸の RMS 振幅だけでなく、空間周波数もモデル化することの重要性を強調する理由です。詳細については、参考文献 1 を参照してください。
参考文献
1. Optical System Design, R. E. Fischer and B. Tadic-Galeb, McGraw-Hill, ISBN0-07-134916-2, Chapter 16
KA-01679
コメント
サインインしてコメントを残してください。