燐光 DLL を使用した白色光源のモデル化

多くの場合、白色光源を作成するための照明光学系には燐光性材料が使用されています。この記事では、照明光学系で白色光源の生成に多く使用されている燐光性材料のモデル化について説明します。OpticStudioでは、このモデル化に Phosphor.DLL によるバルク散乱モデルを使用します。

著者 : Sanjay Gangadhara

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はじめに

多くの場合、白色光源の作成では燐光性材料が使用されています。一般的には、燐光体に隣接して青色 LED を配置し、その燐光体で LED 光の一部を黄色などの長波長の光に変換して蛍光発光するようにします。入力ビームと変換されたビームとの色の混合によって、人の眼には白色に見える放出光が得られます。

OpticStudioでは、多数の分布プロファイルのいずれか 1 つをとるバルク散乱イベントとして蛍光をモデル化します。燐光光学系では入力ビームも散乱し、「蛍光散乱」とは無関係な異なる分布を示すことがあります。OpticStudioに用意されている燐光 DLL は、このような光学系の記述を目的としています。

モデルの説明

ノンシーケンシャルモードでボリュームを燐光性材料としてモデル化するには、次のように、オブジェクトのプロパティの [体積特性] (Volume Physics) タブで Phosphor.DLL ファイルを選択します。

Non sequential component editor

この DLL では、光によって蛍光と実際のバルク散乱が発生する材料をモデル化します。蛍光分布は「角度散乱」モデルで得られます。つまり、発光した蛍光が、球の中へ均等な確率で散乱します (入力光線を中心とした円錐半角が 180°)。このバルク散乱分布は Mie モデルで得られます。Mie モデルの詳細については、ナレッジベースの記事「ミー散乱モデルで大気散乱をシミュレートする方法」を参照してください。

燐光 DLL には次の 9 つの入力が必要です。

  1. [平均経路] (Mean Path) :この入力は、ダイアログボックスの中で DLL ファイル名を指定するドロップダウンリストの上にあります。この値は、ボリュームで発生する蛍光の平均自由行程 (単位はレンズユニット) に相当します。

2 5.[粒子の屈折率] (Particle Index)、[サイズ (ミクロン)] (Size (microns))、[密度 (cm-3)] (Density (cm-3))、[最小しきい値] (Min. thresh.) :これらの入力は Mie 散乱分布の指定で必要です。各入力の詳細については、ナレッジベースの記事「ミー散乱モデルで大気散乱をシミュレートする方法」を参照してください。Mie 分布は波長ごと (実際には波長を使用して正規化した散乱粒子サイズの固有値ごと) に計算されるので、バルク散乱の平均自由行程は波長によって異なる点に注意してください。

6 7.[青色最小波長 (ミクロン)] (Blue Min (microns))、[青色最大波長 (ミクロン)] (Blue Max (microns)) :「青色」光とする波長範囲を定義する値です。これは蛍光発光とバルク散乱の両方を経た光です。この波長範囲外の光はバルク散乱しますが、蛍光発光はしません。

この DLL が正しく機能するには、光学系のすべての波長を [波長データ] (Wavelength Data) ダイアログボックスで定義する必要があります。つまり、すべての光源で、その色の定義にシステム波長を使用する必要があります。また、[体積物理特性] (Volume Physics) タブの右側にある [波長シフト] (Wavelength Shift) ダイアログボックスで蛍光遷移を 1 つ以上定義する必要があります (詳細については、ナレッジベースの記事「How to model fluorescence via bulk scattering」を参照してください)。

8 9.[蛍光透過] (Fluorescent trans.)、[散乱透過] (Scattering trans.) :それぞれ蛍光または散乱を経たあらゆる光線の減衰率を定義します。これらの値を使用して、蛍光イベントまたはバルク散乱イベントで吸収されるエネルギーを考慮できます (バルク散乱イベントの場合は散乱球への吸収を示す値です)。

この DLL では [角度] (Angle) パラメータを使用しません。同様に、粒子の屈折率または粒子サイズの入力値が 0.0 以下の場合、粒子密度の入力値が 0.0 未満の場合、「青色」光の最小波長または最大波長が 0.0 以下の場合、または「青色」光の最大波長が最小波長よりも小さい場合、この DLL は無視されます。

粒子密度を 0.0 に設定すると、蛍光はボリューム内部で発生できますが、バルク散乱は発生しません。この状況はこの DLL の優れたテストとして利用できますが、ボリュームから Mie 散乱を除外するのであれば、代わりに角度散乱モデルを使用した方が効率的な演算になります。

Mie 散乱の平均自由行程を波長の関数として計算する際に Mie パラメータの入力値が使用されます。この DLL では、この値および蛍光の平均自由行程の入力値に基づき、モンテカルロアルゴリズムを使用して、指定の光線による散乱または蛍光 (それが「青色」光であるかどうか) が発生するのか、あるいは光線が単にボリュームを通過するだけなのかが判断されます。その結果に応じて光線の軌道が変更されます。

燐光 LED のモデル

この記事には、アーカイブ (ZAR) ファイルが添付されています。そのファイルには、燐光性 LED の簡潔な作成済みモデルが保存されています。

その入力青色光源は、Osram の光源ファイルを使用してモデル化されています。この光源の波長は、次のように波長番号 = 1 で定義されています。

non sequential component editor 2nd image

この波長は 0.46 µm に相当します。

wavelength data

この光源は、標準レンズオブジェクトを使用してモデル化した電球の内部に配置されています。この簡潔な例の場合、電球には材料も散乱特性も割り当てられていません。当然のことながら、実際の設計では、実験的な環境が正確に反映されるように材料と散乱特性を追加する必要があります。

蛍光と散乱が発生する燐光性コーティングが、電球本体外側の薄層としてモデル化されています。実際のこの薄層は、OpticStudioのネスティングルールを利用し、別の標準レンズオブジェクトを使用してモデル化されています。このネスティングルールによれば、空間で複数のボリュームが重複している場合、ノンシーケンシャルコンポーネントエディタで最も下に記述されているボリュームのプロパティが優先して適用されます。したがって、この電球はエディタの中で散乱ボリュームよりも後に記述されています。散乱ボリュームのプロパティは、次のように [体積物理特性] (Volume Physics) タブに表示されます。

non sequential component editor 4th picture

蛍光の平均自由行程は 0.2 mm に設定されていますが、Mie 散乱の場合、波長に依存する平均自由行程が粒子の屈折率 (1.85)、サイズ (1 µm)、密度 (2 x 108粒子数/cm3) によって決まります。波長が 0.45 0.47 µm の範囲にあれば、どの光でも散乱と蛍光の両方が発生することが考えられます。ここでは、蛍光でも散乱でもエネルギーが失われないと仮定します (透過の値を 1 に設定)[波長シフト] (Wavelength Shift) の入力は、「青色」光で蛍光が発生する場合、青色光の波長が波長番号 1 から波長番号 2 に変化する確率が 100% であることを示しています。この光学系の場合、波長番号 2 0.57 µm の波長に相当します (前述の図を参照)

この最後の記述は不要なように思われます。結果的に、定義上は光の波長が蛍光を通じて変化します。しかし、OpticStudioの蛍光自体はバルク散乱イベントとしてモデル化されることを再認識してください。したがって、OpticStudioでは、蛍光は発生しなくても、Mie 分布などの特定の分布に従って光がバルク散乱するボリュームをモデル化できます。この同じボリュームで、蛍光を経たあらゆる光が、同じ Mie 分布などの分布で再放出されることが考えられます。このような場合は、光の波長が変化する一定の確率を明示的に指定する必要があります。燐光モデルでは、蛍光とバルク散乱の「散乱」分布はそれぞれ固有であり、明示的に定義します。したがって、光の波長が変化する確率は必ず 1 です。

[波長シフト] (Wavelength Shift) 入力のデフォルトの動作では、定義した確率に従って散乱の際に波長が変化することに留意する必要があります。このダイアログでは蛍光散乱と Mie 散乱が区別されていません。両者を区別できるように、この DLL data[10] エントリに返される値によるフラグが用意されています。data[10] の値が負数であれば、OpticStudioでは散乱の際の波長シフトが無視されます (偏光のすべてのデータが返されるようにするにはdata[10] -2 に設定し、それ以外の場合は-1 に設定します)data[10] エントリの値が正数であれば、定義した確率に従って波長シフトが発生します (偏光のすべてのデータが返されるようにするにはdata[10] 2 に設定し、それ以外の場合は 1 に設定します)。この DLL から返されるdata[10] の値の符号に応じて、「青色」光線には蛍光散乱 (data[10] > 0) Mie 散乱(data[10] < 0) の両方が発生します。

0.57 µm に相当する波長番号が 2 の光でも、散乱ボリュームの中で Mie 散乱が発生することがあります。この DLL での計算によって、入力ビームの波長 (0.46 µm) の場合と同様に、この波長番号 2 における Mie 散乱の正しい平均自由行程が得られます。

この光源は電球の内部にあり、その電球自体も他のボリュームの内部にあります。したがって、光源と電球の両方で [内部配置] (Inside Of) フラグを設定する必要があります。得られる放出光はディテクタ () オブジェクトで測定します。その結果は、次のように中央に集中した白色の放出光です。

resultant emission

このような結果は、メリットファンクションエディタで NSDE オペランドを使用して定量化できます。ディテクタ上での平均色度値が x = 0.33y = 0.35 であることが結果からわかります。これらの値の詳しい意味合いと NSDE オペランドの詳しい使用方法については、ナレッジベースの記事「How to measure and optimize color data」を参照してください。

References

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KA-01708

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