ヘッドアップ ディスプレイの作業で使用するツールの選択

この記事では、OpticStudio の各種ツールを使用してヘッドアップ ディスプレイ (HUD) の性能を設計および解析する方法を紹介します。この具体的な性能として、全視野収差 (FFA) NSC サグ マップなどがあります。 

作者 : Sandrine Auriol 

ダウンロード 

記事の添付資料 

着手点 

HUD の説明 

以下に HUD のスケッチを示します。LCD ディスプレイから光が照射されます。この光は、HUD を形成する 2 枚のミラーで反射し、さらにフロント ウィンドウで反射して、最終的に運転者の眼に届きます。運転者には、車両の速度などを示す虚像が道路上に見えます。

 

運転中の運転者はその頭を動かします。アイボックスは、運転者の眼の位置が占める範囲を表現する仮想的な空間です。

HUD SketchSketch

 

仕様

  • 虚像の距離: 2 m
  • 現在の車速の表示 
  • 機械的な制約 : HUD は、主にダッシュボードの下で利用できる空間による制約を受けます。フロント ウィンドウがビーム スプリッタとして機能します。 
  • アイボックス : 運転者の眼の位置は、幅が ±50 mm、高さが ±20 mm のボックスの範囲に収まります。 
  • 眼の瞳径 : 明所では 2 4 mm、暗所では 4 8 mm。このスタディでは 4 mm に設定します。
  • LCD ディスプレイのサイズ : ±12.5 mm、高さ ±5 mm 
  • 倍率 = 6 

設計の選択 

HUD の設計は、ダッシュボード下に収まる十分に小さいサイズを実現できる折りたたみ光学系から開始します。HUD 2 枚のミラーで構成し、その 1 枚は平面、もう 1 枚は自由曲面です。ミラーには、結像光学系に色収差が発生しないという利点があります。この自由曲面ミラーには最適化が必要です。

HUD の設計手順 

  • 虚像からディスプレイへ : シーケンシャル モードで逆方向に設計します。その理由は、運転者が見る虚像からシミュレーションを開始するほうが効率的であるからです。これにより、光学系の前に絞り面を配置できます。この絞り面の位置がアイボックスの位置になります。この絞り面に矩形アパチャーを配置して、眼の位置に対する制約とします。 
  • ディスプレイから虚像 : つづいて、シーケンシャル モードで光学系を反転します。これによって、本来の方向であるディスプレイから虚像に至る「真の」性能を評価できます。
  • 最後に、この光学系をノンシーケンシャル (NSC) モードに変換します。これにより、より現実的なモデルが得られ、迷光解析を考慮できるようになります。HUD を使用して運転者が実際に見る画像が、このモデルで表示されます。 

 

手順 1: 虚像からディスプレイへ (逆方向での設計) 

着手点 

作業の便宜性を考慮して、当初のエレメントをすべて配置したテンプレートが作成されています。そのファイル名は「HUD_Step1_StartingPoint.zar」で、この記事の冒頭でダウンロードできます。このファイルには、フロント ウィンドウ全体の自由曲面モデルが収められています。フロント ウィンドウは拡張多項式面として記述されています。このファイルの構造を確認します。 

 

システム エクスプローラ 

・アパチャー:アイボックスは、この光学系の絞り面です。

       アイボックスは、運転者の眼の位置が占める範囲を表現するので、

        幅が ±50 mm、高さが ±20 mm の矩形アパチャーを絞り面に配置します。 

 

したがって、入射瞳径 (EPD) は、2 x (sqrt (20^2+50^2)) = 108 mm と計算できます。 

HUD ApertureSystem ExplorerSurface Property

 

  • 視野 : 視野の [タイプ] (Type) [物体高] (Object Height) に設定し、[正規化] (Normalization) として [矩形] (Rectangular) を定義します。実際の光学系では、LCD 上の画像が 6 倍に拡大されて虚像が形成されます。現在の設計は、虚像から LCD ディスプレイに向かう逆方向の設計なので、虚像のサイズを物体高として計算し、そのサイズを使用して視野データ エディタで視野サイズを定義できます。LCD ディスプレイのサイズは、幅が ±12.5 mm、高さが ±5 mm です。物体のサイズは、この値の 6 倍なので次のようになります。 

視野の幅 = ±75 mm (6 x 12.5 mm)、視野の高さ = 30 mm (6 x 5 mm) 

Field Data Editor

 

  • 波長 : LCD ディスプレイは、550 nm の単一波長で発光しています。 

 

フロント ウィンドウ 

フロント ウィンドウ全体をモデル化できるほか、HUD で使用するフロント ウィンドウ領域のみをモデル化することもできます。 

その「アクティブな」領域を探し出すには、フットプリント ダイアグラム ツール ([解析] (Analyze) → [光線とスポット] (Rays and Spots) → [フットプリント ダイアグラム] (Footprint Diagram) の順に選択して表示します) を使用します。このツールには、次のようにフロント ウィンドウの面に重ね合わせたビームのフットプリントが表示されます。 

Footprint Diagram

 

フロント ウィンドウのモデル 

フリーフォーム面などの任意のシーケンシャル面またはノンシーケンシャル CAD パートでフロント ウィンドウを記述できます。NSC CAD パートとして記述したフロント ウィンドウをシーケンシャル光学系に挿入すると、光学系は混合モードになります。虚像からディスプレイへ、光学系を逆方向にモデル化するのであれば、このモードは良好に機能します。しかし、本来の方向でモデル化する場合は、このモードが問題になります。ノンシーケンシャル コンポーネント面の後に絞り面が位置するからです。このモードによって、レイ エイミングの難度が高くなり、光線追跡上の別の問題も発生することが考えられます。 

 

対策として、この CAD 部品のサグを測定し、シーケンシャル グリッド サグ面を使用してそのサグをモデル化します。こうすることで、光学系がシーケンシャル モードのみの状態に維持されます。OpticStudio では、グリッド サグ面を非球面タイプの面に変換できます。この変換機能は、[最適化] (Optimize) [非球面タイプを変換] (Convert Asphere Types) で利用できます。 

Convert Asphere

 

グリッド サグ面へのフロント ウィンドウの変換 

ZOS-API の拡張機能である NSC サグ解析では、CAD パートのサグを測定します。詳細については、ナレッジベースの記事「NSC Sag Map User Analysis」を参照してください。

NSC Sag Map

 

この解析では、プローブ光源光線を使用して、その光線が NSC オブジェクトに到達した位置を記録します。ファイル「HUD_windshield_sag.zar」を、この記事の冒頭でダウンロードできます。このファイルには、フロント ウィンドウの CAD パートと光源が収められています。 

NSC Sag Map File

 

フロント ウィンドウの X 方向と Y 方向のサイズは、NSC サグ マップの設定です。このサイズは、カメラ ビューを X-Y に設定したシェーデッド モデル上でアクティブ カーソル位置を使用して近似できます。 

Measure the size of the Windshield

 

NSC サグ ツールについて、次の設定を入力できます。 

NSC Sag Map Settings

 

この設定では以下の指定ができます。 

  • [X 軸中心と Y 軸中心のティルトを削除する] (Remove XY Tilt) のチェックをします。NSC サグでは、NSC オブジェクトのティルトがゼロに設定されません。 
  • [保存したファイルを保持] (Keep Saved Files) をチェックして、現在のフォルダに NSC サグ マップを保存する。 

 

NSC Sag Map False ColorNSC Sag Map Text

 

NSC サグ マップは擬似カラーで表示されます。[設定] (Setting) [表示方法] (Show As) オプションを [テキスト] (Text) に設定すると、テキストによる一覧として表示することもできます。このテキスト出力を保存して適切なデータ フォーマットの .DAT に変換し、グリッド サグ面で使用できます。ただし、この例では、ここで説明した CAD とグリッド サグ面による方法は使用しません。簡素化するために、代わりに拡張多項式面を使用してフロント ウィンドウをモデル化します。 

 

すべてのエレメントの配置 

すべてのエレメントの位置を表すレイアウトを以下に示します。 

Surfaces Placement

 

次に挙げる便利な各種ツールを使用して各面を配置します。 

  • 座標ブレーク リターン : [面のプロパティ] (Surface Properties) → [ティルト/ディセンタ] (Tilt/Decenter) で座標リターンを使用して、座標ブレーク面を定義できます。この座標ブレーク面の後のローカル座標が、座標ブレーク前のシーケンシャル面のローカル座標と同一になるように (座標ブレーク前のローカル座標系に「戻る」ように)、OpticStudio によって、この座標ブレーク面の各パラメータが計算されます。 

Coordinate Return

 

  • 主光線ソルブ : このソルブでは、座標ブレーク面の中心が主光線と一致し、座標ブレーク面が主光線と直交するように、座標ブレーク面のティルトとディセンタが計算されます。 

Chief Ray Solve

 

初期の性能 

光学系に収差を持ち込むエレメントはフロント ウィンドウです。その収差がどの程度であるかを検討します。 

この光学系は、無限遠 (運転者の眼) から入射した光がフロント ウィンドウで反射する光学系に簡素化できます。この反射後のスポット ダイアグラムから、「実際の」フロント ウィンドウに対する光線角度と、理想的で平坦なフロント ウィンドウ (ミラー) に対する光線角度を知ることができます。 

このファイルを変更するには、次のような方法があります。 

  • 6 11 を無視する。 
  • 視野タイプを角度に変換する。 
  • オブジェクトの厚みを無限大に設定する。 
  • フロント ウィンドウの後に標準面を追加する。この場合は、平坦なフロント ウィンドウをモデル化します。材料を MIRROR に設定する。面 4 のプロパティのアパチャーで、面 3 のアパチャーをピックアップします。 
  • 2 つのコンフィグレーションを作成する。その 1 つでは「実際の」フロント ウィンドウを使用し、もう 1 つでは理想的で平坦なフロント ウィンドウ ( 3 と面 4) を使用します。 
  • [システム エクスプローラ] (System Explorer) → [アパチャー] (Aperture) [アフォーカル像空間] (Afocal Image Space) をチェックする。度数の単位で各値を設定します。 

これらの変更は「HUD_Step1_windshield_aberration.zarファイルで確認できます。 

Comparison

 

フロント ウィンドウのミラーによって発生する収差を解析するには、[解析] (Analyze) → [収差] (Aberrations) → [全視野収差] (Full-Field Aberration) をクリックします。ここでは、ザイデルの収差ツールを使用できません。ザイデルの収差は、回転対称光学系の 3 次収差のみを記述しているからです。 

全視野収差解析では、波面収差のゼルニケ分解を計算し、視野全体のゼルニケ係数を表示します。 

全視野は、次の図で赤い四角で囲まれた設定で定義します。 

FFA Settings

 

このような視野点を次の図に示します。 

Field Grid

 

[解析] (Analyze) [波面収差] (Wavefront) [ゼルニケ標準係数] (Zernike Standard Coefficients) を選択した場合と同様に、視野点ごとに波面収差が一連のゼルニケ標準多項式にフィッティングされます。次の設定で、このフィッティングを定義します。収差項を使用して、表示する項を次のように選択できます。 

FFA Settings

 

収差では、次のようにゼルニケ標準第 5 (Z5) とゼルニケ標準第 6 (Z6) から一次非点収差が計算されます。 

Zernike Terms

 

一次非点収差は次のように定義します。 

  • 大きさ = sqrt (Z5^2 + Z6^2) 
  • 角度 = (1/2)*atan2(y = -Z5 , x = -Z6) 

ここで、atan2 は、(y/x) の逆正接を計算する C ライブラリ関数です。 

[表示] (Display) [アイコン] (Icon) に設定すると、ラインの長さで収差の大きさ、ラインの方向で収差の角度が示されます。 

FFA Astimatism

 

下部のフレームには、選択した収差の平均値が表示されます。この例では、視野全体の一次非点収差の平均値です。 

この光学系の結果は次のようになります。 

  • デフォーカス : 174.4 波長 
  • 一次非点収差 : 平均値 : 80.2 波長 

ここでわかるように、この当初の光学系は、フロント ウィンドウで発生する非点収差によって性能が制限されています。フロント ウィンドウによって焦点がわずかに移動しています。ただし、LCD ディスプレイ上でビームがフォーカスする設計であることから、デフォーカス値は問題ではありません。HUD の設計は非点収差の補正から始まります。 

評価関数の構築 

元のファイル「HUD_Step1_StartingPoint.zar」に戻り、フロント ウィンドウによって発生する非点収差が補正されるように自由曲面ミラーを最適化します。まず、[最適化] (Optimize) のクイック調整ツールを使用して、自由曲面ミラーを球面ミラーにします。これは適切な出発点になります。 

Quick Adjust

 

デフォルトの評価関数の構築 :  
最小のスポット (RMS スポット) が得られるように最適化するデフォルトの評価関数を構築できます。この光学系にはアパチャーがあるので、矩形アレイを使用して瞳をサンプリングします。 

Merit Function Wizard

 

ここでは全視野収差を使用して視野サンプリングを確認できます。全視野で収差を簡単に変更するには、より多くの視野点が必要になることがあります。 

つづいて、評価関数の先頭でオペランドを使用して、次のような他の仕様を手動で追加できます。 

  • 倍率 : 仕様として、倍率に関するものがあります。REA* (実光線座標) オペランドを追加して、LCD ディスプレイ上で視野位置が占める X 座標と Y 座標を確認できます。DIVI オペランドを使用して倍率 (主光線の像面上での高さと物体面上での高さとの比) を計算できます。これらの DIVI オペランドには重み係数として 10 が設定されます。 

Field points to check magnificationDefault Merit Function

 

  • ディストーション : 最後の仕様としてディストーションに関するものがあります。ディストーションは 2% 未満であることが必要です。 

座標ブレークがある非対称光学系では、ディストーションのような近軸計算が必ずしも良好には機能しません。ディストーションのオペランドを使用する場合は、得られた結果に意味があることを必ず確認します。視野の 4 つのコーナー (視野 2 5) CENX CENY を使用し、セントロイドの位置に基づいてディストーションを手動で確認し、また計算できます。 

Merit Function Distortion

 

これで評価関数を使用できるようになります。最適化の前に、自由曲面ミラーの標準面をフリーフォーム面に変更できます。ここでは、11 項から成るゼルニケ標準サグ面に変更します。 

最適化ではゼルニケ多項式面がきわめて有用ですが、光学系を製造するには、これらの面を拡張多項式面のような標準多項式面に変換することが必要になる場面があります。 

ゼルニケ面の正規化半径は、エレメントの半径よりも大きい固定値に設定されています。最適化の際に、この正規化半径を固定値にしていないと、反復計算のたびに正規化半径が更新されるので、評価関数にジッタが発生します。 

Zernike Standard Surface

 

最適化前のファイルを「HUD_Step1_MF_before_optim.zarとします。 

変数 

Z1 はピストン項であり、使用しません。 

Z2 Z3 はティルト項です。LCD ディスプレイなどのエレメントの各位置は固定されているので、ティルト項は使用しません。 

この光学系には、変数として後方焦点の厚みと自由曲面ミラーの 2 つがあります。 

[最適化] (Optimize) → [最適化] (Optimize!) による最初のローカル最適化の後、次のように全視野収差を確認できます。 

Optimization

FFA Settings

 

視野全体での平均値は次のようになります。 

デフォーカス :  7.8 波長 

一次非点収差 : 25.0 波長 

一次コマ収差 : 7.4 波長

 

Z4 はデフォーカス/像面湾曲項であり、変数として設定されています。 

Z5 Z6 は一次非点収差項であり、変数として設定されています。 

最適化の後、視野全体の平均値は次のようになります。 

デフォーカス :  15.0 波長 

一次非点収差 : 9.1 波長 

一次コマ収差 : 6.9 波長

Z7 Z8 は一次コマ収差項であり、変数として設定されています。 

Z9 Z10 は楕円コマ収差項であり、変数として設定されています。 

Z11 は、他の収差とのバランスをとった一次球面収差の項であり、変数として設定されています。 

次の設定で 1 分間の Hammer グローバル最適化を実行します。 

Hammer Global Optimization

 

最適化後のファイルを「HUD_Step1_MF_after_optim.zar」とします。

 

 

最適化の結果 

最適化の結果を確認できます。光学系をまだ反転していないので、この性能は「実際の」性能ではなく「光線の方向が逆方向の」性能です。 

  • スポット サイズ (ぼやけ): スポットの RMS 200 µm 未満です。これだけでは十分な情報が得られません。光学系を反転したときに角度によるサイズを確認する必要があります。 
  • 非点収差とコマ収差 :全視野収差をもう一度確認すると、最適化によって一次非点収差が減少したかどうかがわかります。一次非点収差のほかに、HUD の像質に影響することが考えられるゼルニケ項としてコマ収差と球面収差があります。以下の結果で使用した視野は総視野です。総視野は、HUD のアイボックスの範囲で運転者が頭を上下左右に動かしたときに見える最大範囲を角度で表した値です。両眼で見た場合の視差も考慮されています。

視野全体の平均値は次のようになります。 

   デフォーカス : -3.6 波長 

   一次非点収差 : 10.7 波長 

   一次コマ収差 : 2.2 波長

非点収差は、80 波長から 11 波長に減少しています。次のプロットでは相対スケール (表示設定) を使用していて、絶対値から平均値を減算しています。このプロットからは、視野全体にわたる収差の変化がよくわかります。 

FFA DefocusFFA AstigmatismFFA Coma

 

  • ディストーション : 2% をわずかに上回る値 

HUD Distortion

 

手順 2: ディスプレイから虚像 (本来の方向) 

光学系の反転 

光学系の反転は簡単ではありません。レンズ データ エディタのエレメントの反転ツールにはいくつかの制限事項がありますが、HUD の光学系は、座標ブレークと非標準面を使用していることから、明らかにこの制限事項に抵触します。 

HUD Reverse

 

問題となるのは Z 軸の「反転」です。この HUD のような非対称光学系では、エレメントの反転ツールが適切に機能しません。 

Reverse Coordinates

 

別の対処方法を以下に示します。 

  • レンズ データ エディタで次のように [ダブル パス作成] (Make Double Pass) ツールを選択します。 

Make Double PassMake Double Pass Window

 

これで、光学系に面 12 として反射面が追加されます。これはLCDに相当します。処理の対象となるのは光学系の逆方向部分のみです。 

 

  • 24 を新しい絞り面にします。まず、面 24 の半径を固定値として、アパチャーを絞り面半径による定義に変更し、絞り面を面 24 に設定します。 

Change Stop

 

  • この光学系には整理が必要です。具体的には、虚像からディスプレイ方向への設計で定義した面 1 11 をすべて削除します。面 13 のピックアップ ソルブは削除できます。面 13 の厚みは 2,000 mm の固定値であるからです。物体の厚み ( 0) 0 mm に設定します。 
  • 絞り面 13 をグローバル座標基準面として設定できます。これによって、この光学系は次のようになります。 

Global Coordinate Reference SurfaceHUD Set up

 

  • ここで、視野データ エディタで各視野を LCD の視野として定義し直す必要があります。 

LCD Fields

 

ファイル「HUD_Step2_reversed.zarを、この記事の冒頭でダウンロードできます。 

 

 

性能 

 

  • スポット サイズ (ぼやけ): 日中の眼の瞳径に等しいサイズの絞りを使用して、アフォーカル像空間で像の鮮鋭度を確認できます。日中の眼の瞳径は 4 mm です。 

Spot Diagram

スポットの RMS 値は 2' 未満になります。一方、人間の眼の分解能は約 1' です。 

 

  • 画像シミュレーション: この HUD は車両の速度を画像表示します。画像シミュレーション ツールを使用すると、HUD 光学系で得られる像質の概念を得ることができます。 

Image Simulation Step 1

Image Simulation Step 2

Image Simulation Step 3

 

  • 傾斜度と収束度 (眼の視差) : 運転者の両眼は光学系を通じて周囲を見ています。両眼で像の同じ点を見ていても、両眼の視線の方向にはわずかな角度差があることが普通です。その角度差のうち、垂直方向 (上下方向) を傾斜度といい、水平方向 (左右方向) を収束度といいます。この結果は、ファイ「HUD_Step1_MF_after_optim_2_eyes.zar」を使用して確認できます。瞳径は 4 mm で、左右の瞳間の距離は 50 mm に設定されています。これらの値に対する一般的な限度は 1.0 ミリラジアンのオーダーなので、この光学系はこの限度の範囲に収まっています。 

 

手順 3: ノンシーケンシャル モード 

 

NSC グループへの直接変換 

これで、この光学系をノンシーケンシャルにエクスポートして詳しく解析できるようになりました。ファイル「HUD_Step2_reversed.zar」からこの手順を開始します。 

OpticStudio には、「NSC グループに変換」ツールが組み込まれています。このツールを使用して、シーケンシャル面をノンシーケンシャル コンポーネントに変換できるほか、シーケンシャル光学系全体をノンシーケンシャル光学系に変換することもできます。このツールでミラーを変換する場合、その基板の厚みが 0 よりも大きければ、その厚みを持つ複合レンズ オブジェクトに変換されます。このファイルでは、ミラー 4、6、8、11 の厚みを 5 mm に設定します。これでこのファイルを変換できます。 

Mirror Substrate

NSC Conversion

 

変換したファイルでは若干の調整が必要です。そのための手順を以下に示します。この記事の冒頭で、最終的なノンシーケンシャル ファイル「HUD_Step3_NONSEQ_after_tidying_up.zar」をダウンロードできます。 

  • 次のように、すべてのオブジェクトをグローバル座標で定義します。 

Modify Reference Object

 

  • 光源として、行 4 の光源 (楕円) のみを保持します。この光源の中心は視野 1 の中心にあります。他の光源 ( 1 3、行 5 12) はすべて削除します。保持している光源を、幅が ±12.5 mm、高さが ±5 mm の光源 (矩形) に変更します。レイアウト光線の本数を 10 に設定します。 

Source Rectangle

 

  • 次のように光線の方向を反転します。 

Reverse Rays

 

  • 光学系を反転するために、面 3 同様にシーケンシャルでは有用であった面 2 を削除します。空オブジェクトをすべて削除します。 
  • ミラー ( 10 14) を削除します。ノンシーケンシャル モードで必要なミラーは 1 枚のみです。 
  • フロント ウィンドウの材料を N-BK7 に変更します ( 14)。 
  • アイボックス ( 15) をディテクタ () に変更し、X 軸を中心としたティルト ([X 軸のティルト] (Tilt about X)) として -8°を追加します。ディテクタ () の下部に車の速度が表示されますアイボックスのサイズは、X 方向の半値が 50 mm、Y 方向の半値が 20 mm です。X 方向のピクセル数を 400、Y 方向のピクセル数を 200 に設定します。また、ディテクタ () X 方向半値角を 20°、Y 方向半値角を 10°に設定し、Y 軸を中心としたティルトと Z 軸を中心としたティルトとしてそれぞれ 180°を追加します。これによって画像が正しい方向に表示されます。 

Detector Color

 

  • ディテクタ 25 を光源 (矩形) に変更し、そのコメントを「虚像」に変更します。X 軸を中心としたティルトとして -8°を追加し、Y 方向位置を虚像から 275 の位置とします。これによって、この光源の中心がディテクタの中心に位置します。 

この光源のレイアウト光線を 20 本、[X 半幅] (X Half Width) 1,000[Y 半幅] (Y Half Width) 500[光源距離] (Source Distance) 2,000 として光線を反転します。 

Source Rectangle

 

    • 他のディテクタ (16 24) をすべて削除します。 

    この時点では、LCD ウィンドウからのレイアウト光線がフロント ウィンドウに到達しないように思われます。フロント ウィンドウはブール ネイティブ オブジェクトであり、矩形ボリュームと 2 つの拡張多項式面による複合レンズとの相互作用によって形成されています。 

    状況を把握するために、[オブジェクト プロパティ] (Object Properties) タブの [オブジェクトの非表示] (Do Not Draw Object) オブションのチェックをはずして、この矩形ボリュームを描画します。 

Do Not Draw

 

3D レイアウトを見ると、矩形ボリュームの内部に光源が置かれていることがわかります。矩形ボリュームは、このブール ネイティブ オブジェクトの親オブジェクトの 1 つです。この場合は、光源の [内部配置] (Inside Of) フラグをチェックして、光源がブール ネイティブ オブジェクトを指すようにします。[内部配置] (Inside Of) フラグが適切に動作するように、ノンシーケンシャル コンポーネント エディタでは、この光源をブール ネイティブ オブジェクトの後ろの行で定義する必要があります。 

Issue with the Ray Tracing

 

  • 1 の光源 (矩形) を切り取り、フロント ウィンドウの下の行に貼り付けます。[内部配置] (Inside Of) フラグを変更します。これで、光線がフロント ウィンドウで分割されます。 

Inside Of flag

 

  • 車の速度を表示している LCD ディスプレイの光源画像をスライド オブジェクトとして追加し、LCD 光源の前に配置します。スライドの [X 全幅] (X Full Width) 26 mm[アスペクト比] (Aspect Ratio) 1.0 に設定します。 

Slide

 

  • 仮想画像虚像の位置にある行 17 の光源 (矩形) では太陽光の照射を再現します。運転者が画像の背景に見る景色を表現するスライド オブジェクトを追加します ([オブジェクト プロパティ] (Object Properties) [光源] (Source) [光線追跡] (Raytrace) [光線の反転] (Reverse Rays) を選択して、ディテクタに向かって光線が放射されるようにします)。スライドの [X 全幅] (X Full Width) 2,000 mm[アスペクト比] (Aspect Ratio) 1.0 に設定します。 

Slide 2

 

  • 17 の光源 (矩形) [スペクトル] (Spectrum) を、太陽のスペクトルに一致するように設定します。 

Color Temperature

 

  • 光源 14 (LCD ディスプレイ) のパワーを 1 W、解析光線の本数を 1E6 に設定します。 
  • 光源 17 (太陽に照らされた風景) のパワーを 10W、解析光線の本数を 1E7 に設定します。 

 

調整後の最終的な光学系は、次の NSC シェーデッド モデルのようになります。 

Shaded Model

 

結果 

運転者が見るシミュレーション画像をディテクタ ビューアで確認できます。まず、[解析] (Analyze) [光線追跡] (Ray Trace) をクリックして光線追跡を実行し、[光線追跡コントロール] (Ray Trace Control) を次のように設定します。つづいて、[解析] (Analyze) [ディテクタ ビューア] (Detector Viewer) をクリックしてディテクタ ビューアを開きます。[設定] (Settings) メニューで、[表示方法] (Show As) [トゥルー カラー] (True Color)[データを表示] (Show Data) [角度空間] (Angle Space) にそれぞれ設定します。角度空間は、シーケンシャルのアフォーカル像空間と等価なノンシーケンシャル空間です。この光学系では眼をモデル化していないので角度空間を使用します。 

Ray Trace

 

これで、設計された HUD 光学系で運転者が見る景観がトゥルー カラーでディテクタ ビューアに表示されます。 

True Color

 

その他の解析 

ノンシーケンシャル モードでは、上記以外の解析も実行できます。そのような解析として、迷光解析、運転者の頭の動きに起因する画像の明るさ変動の解析などがあります。 

 

KA-01801

この記事は役に立ちましたか?
15人中14人がこの記事が役に立ったと言っています

コメント

0件のコメント

記事コメントは受け付けていません。