このレッスンでは、照明光学系の基礎、特に照明光学系の性能目標について説明します。このレッスンは、照明光学系のラーニング パスの一環です。「優れた照明設計を実現するための要素は何か」などの疑問への回答を提供します。このレッスンでは、照明設計の目標となるパラメータを明確に定義できるように、照明光学系のさまざまな目標について説明します。
著者 Katsumoto Ikeda
Introduction
このレッスンは照明光学系の性能目標について説明するとともに、その例を紹介します。
「優れた照明設計を実現するための要素は何か」という疑問に対して、照明設計で一般的な単位や目標を通じて回答が得られます。
優れた照明設計を実現するための要素とは
照明設計の核となる唯一の性能目標は次の通りです :
「光源からディテクタへの最適な光伝達」
しかし、物事はそれほど単純ではありません。光を伝達する方法は多数あり、サイズやパフォーマンスなど、優先順位に応じて「最適な」転送を変更するような制約がいくつかあります。ディテクタは、考えられる範囲であらゆる形状にすることができます。この記事では、色、コスト、製造の容易さなどの一般的な光学工学特性が適用されますが、さまざまな光学系における標準的な照明要件を定義します。この記事のレッスンを通じて、照明システムの重要なパラメーターを定義し、照明デザインが適切であることを確認できるようになります。
照明光学系の測定単位
性能の核について掘り下げる前に、照明光学系のパラメータを定義しましょう。測定単位には 2 つのグループがあり、そのそれぞれに属する測定項目があります。
照明光学における測定単位には、放射量と 測光量の 2 種類があります。放射量は、可視光スペクトルを含む電磁放射の測定値であり、測光量は光に対して人の目が示す反応の測定値です。これら 2 つの単位は、照明光学系を検討する際に明確に区別しておくことが不可欠です。たとえば、905nm の波長を発するレーザー ダイオードからの光は人の目では見ることができないので、測光量の測定値は必ずゼロになります。一方、近紫外の青色光と近赤外の赤色光との間で光源のエネルギーを適度に配分することは、人間の視覚上、自然なバランスを実現するうえで重要です。人間の目は、550nm 付近で最も感度が高くなり、550nm を中心とした両側のスペクトルにより多くの光を必要とするからです。
用語の面で最初は混乱するかもしれませんが、まとめると、放射量として、放射束Φ、放射照度 E、放射強度 I、放射輝度 L があります。一方、測光量として、光束Φ、照度 E、光度 I、輝度 L があります。波長のスペクトルの次元で放射量の値が異なる場合、放射量は、スペクトル放射束、スペクトル放射照度、スペクトル放射強度、スペクトル放射輝度に分類できます。この場合、放射束を全放射束と呼ぶことで、各スペクトルでの値と全スペクトル域での値を区別することをお勧めします。
* 用語としてのΦ、E、I、L の指定には汎用性がないので、それぞれの放射量に P、H、J、N の各記号を使用し、それぞれの測光量に F、E、I、B の各記号を使用することがあります。
放射量 |
測光量 |
||||
---|---|---|---|---|---|
用語 |
記号 |
名前 |
単位 |
名前 |
単位 |
放射束 |
Φ |
パワー |
ワット (W) | ルーメン (lm) | |
単位面積あたりの放射束 |
E |
放射照度 |
W/m² |
lm/m² または ルクス (lx) |
|
単位立体角あたりの放射束 |
I |
放射強度 |
W/sr |
lm/sr または カンデラ (cd) |
|
単位立体角あたり、単位投影面積あたりの放射束 |
L |
放射輝度 |
W/m²⋅sr |
lm/m²⋅sr、cd/m² または ニト (nt) |
設定する必要はありません。いくつかある光学用語の中でも、特に強度が意味する値は人によって定義が異なるので、光学が専門ではない人々に対しては、光学要件を正確に表現することが重要です。「面上での強度を 100W/m² にする」という表現があった場合、それが照度を指しているのか、W/sr を指しているのかを明確にする必要があります。
以下は、上記の測光単位の概略図です。単位を視覚的に表すことで、各種測定単位をより直観的に理解できると思います。
参照: PencilofRays.com
主要な性能パラメータ : 均一性
均一性は、面上での分布に発生する偏差の程度を表します。均一性の尺度は RMS と P-V であることが普通ですが、一定の範囲での勾配または分布の変化で表現することもあります。
角度均一性 : 立体角全体にわたる均一性
通常、角度均一性は強度として測定し、単位立体角あたりの光束量で表します。角度均一性を必要とする用途の例を以下に挙げます :
- タイムオブフライト (飛行時間)用の光源
- 太陽集光器
面均一性 : 単位面積あたりの均一性
通常、面均一性は照度として測定し、単位面積あたりの光束量で表します。
面均一性を必要とする用途の例を以下に挙げます :
- プロジェクタ
- バックライト ディスプレイ照明
- 1 次元のライン ジェネレータ
主要な性能パラメータ : スループットと効率
光学系を透過する光量に影響を与える可能性がある要因として以下があります :
- スループットまたは エタンデュ
- 光学材料による吸収
- 反射面の反射率
- 光学面間でのフレネル反射
設計で制御できる光損失はスループットです。照明光学系に取り込む光の形状および量に応じて、その光学系の効率が変化します。フレネル反射は、光線の入射角に応じて変化するので、光の形状による影響が若干ありますが、設計パラメータとして重要な要素ではありません。このスループットは効率と呼ぶことができます。入力光を出力光と比較することで、光学系の効率を測定します。一般的に、スループットが高いほど有利ですが、光学系の総合的な不利益にならない範囲とする必要があります。スループットが低いソリューションを選択するという例外はめったにありませんが、結局は、以下の各特性が互いに妥当な関係にあることが重要です :
- · 性能 : 均一性や色など、スループット以外の性能パラメータ
- · サイズ : 最初に扱うべき制約となることがあるほか、コストを決める要因ともなります。
- · 複雑さ : 製造上の難度が高くなるほど、品質の制御も難しくなり、量産に要するコストが上昇する可能性があります
- · コスト
主要な性能パラメータ : 色
知覚される光の色は、その色度で定量化します。色度は 国際照明委員会 (CIE : International Commission on Illumination または Commission internationale de l'éclairage) によって定義され、カラー マッチング機能で CIE 1931 色度座標が提供されています。
色度座標はグラフで表現され、考えられる光のすべての色がこのグラフに含まれます。純粋な単色光は、グラフの曲線パラメータ付近に表記されています。ほとんどの照明光学系では、中央の白色域を使用します。ここにはさまざまな色相の白が含まれます。上図の曲線 Tc(K) はプランキアン軌跡または黒体軌跡で、温度変化に伴って黒体源から発する色をプロットした曲線です。実際の例としては、加熱した金属の色の変化があります。金属を加熱していくと、温度の上昇とともに深紅から橙、黄白、白に変化し、最終的に超高温になると、青白色になります。白色光には、多くの場合に色のターゲットとなる相関色温度 (CCT) が決まっています。たとえば、白熱灯などの黒体源は、黒体放射源にきわめて近い色温度を持っています。LED などのその他の光源は、色温度によって同様に分類されます。
明所視照明光学系を設計する場合は、ターゲット色としての「白」は任意に決定できます。照明設計には、色温度に基づくターゲット色を設定する場合と、CIE 座標 Cx および Cy に基づくターゲット色を設定する場合があります。実際、ターゲット面には、CCT = 4500K や CIE(x,y) = (0.360,0.363) などの色の要件が設定されていることがあります。OpticStudio では、この値を指定して色をエクスポートできます。放射用途では色の変化として知覚されなくても、光学系に影響を与える可能性がある波長の変化には考慮が必要です。
KA-01820
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