この3つの記事のシリーズは、OpticStudioシーケンシャルモードのインターフェイスに関する紹介など、新しいユーザーへの入門を目的としています。 記事ではシングレット レンズを例に、光学系システムの構築(パート1)、光学パフォーマンスの分析(パート2)、必要な設計仕様と制約に対する最適化(パート3)を含むレンズ設計の基本プロセスを紹介します。
著者 Dan Hill
Introduction
これは一連の3つの記事のパート3です。 最適化の基本概念を紹介し、パラメーターを変数として設定する方法を示し、評価関数ウィザードを使用して設計の品質を評価する方法を示し、最適化自体を実行する方法を説明します。 この記事は、最終的なシステムパフォーマンスの評価で終わります。
Part 1では、システム エクスプローラーとレンズ データ エディタを使用してシステムを設定する方法について説明します。Part 2では、光学性能の評価に使用できるいくつかの分析について説明します。
変数の設定とデフォルトの評価関数の作成
シングレットの性能向上に限度があることは確かですが、Zemax OpticStudio を使用して現状よりも優れた解を探し出すことは可能です。そのためには、現在の設計にどの程度の自由度があるかを先に見極めておくことが重要です。つまり、自由に調整できるパラメータがいくつかあるかという点です。この演習のシングレットにあるパラメータのうち、面 2 の曲率半径は、自由に変更できるパラメータと見なすことができません。特定の設計制約を満足するようにソルブで制御されているからです。一方、レンズ中央の厚み (面 1 の厚み)、レンズ前面の曲率半径 (面 1 の曲率)、およびレンズ後面から像面までの距離 (面 2 の厚み) は、シングレットの RMS スポット サイズが最小になるように変更できます。
最適化の際に OpticStudio でパラメータを自由度として扱うことができるようにするには、LDE でそのパラメータに相当するセルに変数ソルブ タイプを配置する必要があります。このソルブ タイプを設定するには、目的のセルの右にあるセルをクリックするか、該当のセルを強調表示してキーボードの Ctrl + Z キーを押します。表示されたソルブのダイアログで、[ソルブ タイプ] (Solve Type) として [変数] (Variable) を選択します。パラメータの横に文字「V」が表示され、変数ソルブが設定されていることが示されます。最適化で自由に変更する 3 つのパラメータすべてに変数ソルブを設定します。
これらの変数を設定すると、デフォルトの評価関数を作成できます。評価関数を作成するには、LDE とはまったく別のエディタであるメリット ファンクション エディタ (MFE) を使用します。OpticStudio のメイン メニューから [最適化] (Optimize) → [自動最適化] (Automatic Optimization) → [メリット ファンクション エディタ] (Merit Function Editor) を選択して MFE を開きます。
評価関数とは、指定した目標設定を光学系でどの程度実現できるかを示す数値です。MFE では、光学系のさまざまな制約または目標を個別に表すオペランドのリストが使用されます。評価関数が完成していれば、その評価関数の値を可能な限り最小にするための演算が、OpticStudio の最適化アルゴリズムによって実行されます。
手作業で評価関数を作成することもできますが、OpticStudio による作成機能を利用する方がはるかに容易です。MFE のメニュー バーから [ウィザードとオペランド] (Wizards and Operands) → [最適化ウィザード] (Optimization Wizard) を選択することでデフォルトの評価関数を作成できます。
このオプションを選択するとデフォルトの評価関数のダイアログが表示され、デフォルトの評価関数を定義するためのさまざまなオプションを選択できます。このダイアログにある各種オプションについては、Zemax OpticStudio のユーザーズ ガイドに詳しい説明があります (「[最適化] (Optimize) タブ」→「[自動最適化] (Automatic Optimization) グループ」→「[メリット ファンクション エディタ] (Merit Function Editor)」)。
この演習では、セントロイドを基準とした RMS スポット半径についてシングレットを最適化しますが、これらはすべて、Zemax OpticStudio のデフォルトの評価関数機能に用意されているオプションです。デフォルトの評価関数のダイアログにある [最適化の関数と基準点] (Optimization Function and Reference) で、[RMS] (RMS)、[スポット半径] (Spot Radius)、および [セントロイド] (Centroid) を選択します。
シングレットが過剰に厚くなったり薄くなったりしないように、このエレメントの厚みに境界制約を設定することが重要です。デフォルトの評価関数には、ガラスの厚みと空気の厚みの両方に境界制約を設定するオプションがあります。[ガラス] (Glass) オプションをチェックすると、最小厚み、最大厚み、およびエッジ厚みの各エントリに手動で値を入力できます。
この光学系の要件にあるように、シングレット中央の厚みは 12 mm 未満で、2 mm を超えていること、エッジの厚みは 2 mm を超えていることが必要です。デフォルトの評価関数のダイアログで、最小厚み、最大厚み、およびエッジ厚みに該当するエントリに適切な値を入力します。
この演習では、[最適化の関数と基準点] (Optimization Function and Reference) および [厚みの境界値] (Thickness Boundary Values) のみを変更し、他のパラメータはすべてデフォルトのままとします。
[OK] (OK) をクリックしてダイアログを閉じます。
最適化の実行
デフォルトの評価関数のダイアログで [OK] (OK) を選択した後、指定したオペランドが MFE に自動的に挿入されていることがわかります。これらの各オペランドには、特定の目標値、重み、評価関数の値に影響する値があります。これらの値は、MFE の左上に表示されています。
最適化では、この評価関数の値を小さくするための演算が OpticStudio で実行されます。この値が小さいほど、メリット ファンクション エディタに記述した目標値に近い設計となります。
最適化を実行するには、[最適化] (Optimization) → [最適化] (Optimize!) をメイン メニューから選択します。これらのどのアクションを実行しても、[最適化] (Optimization) ダイアログ ボックスが開きます。[最適化] (Optimization) ダイアログでは、さまざまな繰り返し回数を選択できます。[自動] (Automatic) を選択すると、現在の評価関数に対する解である局所的な最小値に達するまで最適化ルーチンが実行されます。
ここでは、当初の評価関数値と現在の評価関数値が報告されます。[自動] (Automatic) ボタンをクリックすると、評価関数の値が次のように変化することがわかります。
[終了] (Exit) をクリックして [最適化] (Optimization) ダイアログを閉じます。
最終的に得られた光学系の評価
最適化のルーチンが完了すると、最終的な設計の性能を評価し、当初の設計で指定した制約がすべて満たされているかどうかを確認できます。これまでに開いた各解析ウィンドウのメニュー バーにある [更新] (Update) を選択することで、それぞれの解析ウィンドウの表示を更新できます。
最終的に、当初の光学系の要件で指定した制約の下で、Zemax OpticStudio によってシングレット レンズが最適化されています。当初の性能解析と比較すると、RMS スポット半径と GEO スポット半径は、およそ 1/10 までに小さくなっています。また、Zemax OpticStudio で選択されたレンズの厚みが目的の範囲にあり、そのエッジ厚みが確かに 2 mm を超えている点も重要です。これで、光学系に対する当初の要件が満足されています。
このシングレットの性能は回折限界には達していませんが、最終的な設計を実現するプロセスは、より複雑で目的にかなった光学系に適用できます。
KA-01823
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