この課程では、照明設計におけるディテクタの概要とそのようなディテクタに関する核心的な情報を取り上げます。これは、照明光学系の基礎に関する学習コースで 2 番目となる課程の一部です。さまざまなディテクタについて説明し、照明光学系でディテクタを検討するための手引きを提供します。ディテクタは照明光学系の終端点であり、ほぼ間違いなく、そこまでの作業の結果が得られる場所です。
Authored By Katsumoto Ikeda
はじめに : ディテクタの機能
TOpticStudio では 6 種類のディテクタを扱っています。どのディテクタも、記事「照明設計の性能目標」の単位の説明にあるように、放射測定単位ワットまたは測光単位のルーメンを表示できます。ディテクタを使用して、これからここで作成する照明光学系を評価できます。光学系に応じて、平坦面の均一性、面に対して人間の視感度が示すような色特性、光源の角度強度などを測定できます。
光源 からのノンシーケンシャル光線を追跡して、何らかの解析結果を生成する必要があります。作成したばかりのディテクタは空です。つまり、初期値として、各ピクセルや各ボクセルのデータはゼロです。それ以降は、解析光線の追跡に基づいてディテクタにエネルギーが集積され、ディテクタがクリアされるまでその集積動作が継続します。さらに、ディテクタで取得したデータを最適化に使用することもできます。この最適化は、単一のピクセルのデータに基づいて実行できるほか、ディテクタ全体のピクセルの平均値データに基づくこともできます。
光源が照明設計の出発点であるように、ディテクタは、定量化可能な結果が照明設計プロセスから得られる結実点です。これらの結果は設計の解析に必要なほか、今後の設計の改善でも必要です。
さまざまなディテクタ
- ディテクタ (色) : 任意の数のピクセルで構成する平坦な矩形ディテクタです。このディテクタでは、三刺激値で定義したインコヒーレントな照明データを記録し、表示できます。照明の色を正確に記録し、表示できます。ナレッジ ベースの例や実際の用途で多用されるディテクタ タイプのひとつです。
- ディテクタ (極) : 角度 (遠視野) 強度データを収集する、球面の一部または全球面の形状を持つディテクタです。このディテクタで収集したデータは、IESNA や EULUMDAT などの光源データ ファイルとしてエクスポートできます。このディテクタの使用方法については、「極ディテクタと IESNA/EULUMDAT 光源データの使用方法」の記事を参照してください。
- ディテクタ (矩形) : 任意の数のピクセルで構成する平坦な矩形ディテクタです。このディテクタでは、インコヒーレントなデータ、コヒーレントなデータ、点像強度分布データ、偏光データなどを記録し、表示できます。取得したデータを解析に使用する目的で広く使用されているディテクタですが、その形状は平坦な矩形に限られます。ナレッジ ベースの例や実際の用途で多用されるディテクタ タイプのひとつです。
- ディテクタ (面) : 半径方向と角度方向に任意の数のピクセルを配置した円形または環状のディテクタです。面形状を、平面、球面、コーニック、または非球面とすることができます。ディテクタ (面) では、インコヒーレント放射照度のデータのみを記録できます。
- ディテクタ (体積) : ローカルの X 軸、Y 軸、Z 軸の各方向に任意の数のピクセルを配置した矩形体積のディテクタです。ディテクタ (体積) では、他のオブジェクトとネストした構成や重ねた構成が可能です。複数のディテクタ (体積) を重ね合わせることもでき、その場合は、光線が通過する個々のボクセルがすべてその光線で照射されます。
記事「How to show detector volume data in 3D」に、ディテクタ (体積) の解析の好例があります。
- オブジェクトをディテクタとする : 任意形状のほとんどのオブジェクトは、インコヒーレント放射照度データを記録するディテクタとして使用できます。
(ヘルプ ファイルの[設定] (Setup) タブ...[エディタ] (Editor) グループ ([設定] (Setup) タブ)...ノンシーケンシャル コンポーネント エディタ...ノンシーケンシャル ディテクタに各ディテクタのすべての機能の一覧があります。)
分解能とノイズに関するコメント
空間分解能とエネルギー分解能はトレードオフの関係にあります。広く聞かれる疑問として、「指定サイズの矩形ディテクタがあるとして、どのくらいの数のピクセルを使用すればいいか」というものがあります。ディテクタが均一に照射されること、およびディテクタに到達するすべての光線の光束数が同じであることを前提として以下が成り立ちます。
- ディテクタ上の信号は、ピクセルあたり光線数の値になります。
- 統計的なノイズは、ピクセルあたり光線数の平方根になります。
ピクセル数が 10 x 10 で合計 100 ピクセルのディテクタの場合、分解能とノイズは次のようになります。
検出光線本数 10,000 (ピクセルあたり光線本数 100) |
検出光線本数 1,000,000 (ピクセルあたり光線本数 1,000) |
|
---|---|---|
Signal | 100 | 1000 |
Noise | SQRT(100) = 10 | SQRT(1000) = 31.6 |
Noise % | 10% |
3.16% |
10 x 10 のディテクタの場合、10,000 本の光線追跡では不足で、追跡する光線の本数として 1,000,000 本が妥当であることがわかります。研究開発の場で得られるノイズ対信号比の最良値は 2% 程度です。一般的に、この数値よりもはるかに優れたシミュレーション結果を引き出そうとする試みは時間の浪費となります。
分解能を 100 x 100 まで高くした場合の結果を以下で確認してみます。
検出光線本数 100,000 (ピクセルあたり 光線本数 10) |
検出光線本数 1,000,000 (ピクセルあたり 光線本数 100) |
検出光線本数 10,000,000 (ピクセルあたり 光線本数 1,000) |
|
---|---|---|---|
Signal | 10 | 100 | 1000 |
Noise | SQRT(10) = 3.16 | SQRT(100) = 10 | SQRT(1000) = 31.6 |
Noise % | 31.6% | 10% | 3.16% |
この結果から、ピクセル数が 100 x 100 のディテクタで、10 x 10 のディテクタと同水準のノイズを実現するには、追跡光線数を 100 倍にする必要があることがわかります。この簡単な計算を使用して、シミュレーションで特定のノイズ対信号比を実現するために必要な光線数を推算できます。設計の反復では、検討する光線の本数が妥当な範囲で少なくなるように、シミュレーションに過不足のない時間をかけることをお勧めします。中間段階では、ディテクタのスムージングや光線数の平均化といった他の手法も使用できます。スムージングを使用すると効果的にピクセル数を削減できるので、光線追跡に長時間を費やすことが望ましくない場合は、高分解能のディテクタを使用するのではなく、スムージングを使用してピクセル数を削減した方が有利です。
ディテクタに関する有用な記事
最新のナレッジベース アーカイブにディテクタの有用な例が掲載されています。
極ディテクタと IESNA/EULUMDAT 光源データの使用方法
この記事では、主に IESNA/EULUMDAT フォーマットの光源ファイルを作成する方法を説明していますが、その導入部では、極ディテクタを使用して光源ファイルを生成する方法を紹介しています。この記事は、極ディテクタを使用して光源を作成する場合に優れたリソースとなります。
光源の作成に使用する極ディテクタは、光線追跡から固定光線データ セットを作成するための手段です。モデル化した光源のような複雑な光源では、そのモデルの光線追跡だけでも長時間を要します。独立した光源を作成することで、極ディテクタによる検出結果を光源ファイルとして使用できるので、モデル化した光源の後に置かれた光学部品に、より多くのリソースを使用できます。
How to show detector volume data in 3D
この記事では、ディテクタ (体積) のデータを 3D で表現する CAD モデルの作成方法を取り上げています。この記事では、ZPL マクロを使用してディテクタのデータを作成していますが、ディテクタ (体積) の詳しい使用方法にも触れています。OpticStudio のディテクタ (体積) オブジェクトは、体積内部の光を検出するうえで手頃なツールです。このディテクタでは、体積を持つピクセル (ボクセル) を使用して光を検出します。なお、現在のところ、OpticStudio のインターフェイスでは、これらのボクセルを 2D 平面としてのみ表示できます。この記事では、ディテクタ (体積) を構成するボクセルの複雑な CAD モデルを OpticStudio で作成する方法について説明し、これらの CAD モデルを自動的に作成する ZPL マクロの例を紹介しています。
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