迷光解析の紹介 - パート 3

この記事では、メカ部品で発生する迷光の解析方法を説明します。OpticStudio は CAD 部品を単一オブジェクトとしてシミュレーションモデルに取り込み、光学特性を適用できます。光路解析ツールを用いることで、迷光の原因となるメカ部品を容易に特定できます。これにより、光学エンジニアはシミュレーション プロセス中に、メカ部品の設計変更をメカエンジニアに依頼できるようになります。この記事は、OpticStudio を用いた迷光解析を紹介する 3 つの連続する記事の 3 番目です。

著者 Takashi Ishikawa

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Introduction

この記事は、メカ部品で発生する迷光の解析手法を紹介します。光線は、光学部品を保持する鏡筒やハウジングで散乱反射し、ディテクタに到達する可能性があります。周辺の光源で照明されたオブジェクト面は、迷光の光源と見なせます。特に、ディテクタから光学系を覗いた時に見える面で生じた散乱光は、散乱回数が 1 回のみのため、特に注意を払う必要があります。詳細については、HANDBOOL OF OPTICS [1] を参照してください。

CAD ファイルを含む OpticStudio モデル

OpticStudio は CAD 部品を STEP/IGES/SAT/STL ファイル、もしくはダイナミックリンクを用いて Autodesk Inventor/Creo Parametric/SolidWorks のネイティブファイルをシミュレーションモデルに組み込むことができます。ダイナミックリンクの詳細については、"Using the OpticStudio Dynamic CAD link" を参照してください。そのため、メカエンジニアが設計したメカ部品を OpticStudio に取り込み、光学エンジニアが OpticStudio の機能を用いて、メカ部品で生じた拡散光による迷光解析が可能です。以下の例では、この作業で有用な機能を紹介します。

下図は、CADソフトウェアで設計されたメカ部品を含むオプトメカ系の例です。このサンプルファイルは、上のダウンロード セクションからダウンロードすることが可能です。レンズの間にはスペーサ、レンズ面にはプレッシャーリング、さらに光学系全体を保持するハウジングが取り付けられています。一般的に、メカ設計者は、メカ部品によって信号光が遮蔽されないように形状を設計するため、信号光とメカ部品の干渉による迷光はほぼ発生しません。

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メカ部品への光学特性の適用

この系に含まれるメカ部品は、CAD パーツと絞り開口である環オブジェクトです。メカ部品からの散乱光を解析するうえで、メカ部品の反射散乱特性を以下のように仮定しました。

  • 反射率: 5 %
    • 正反射率: 0.5 %
    • 散乱反射率: 4.5 %
  • 散乱特性: ランバーシアン (完全散乱)

CAD オブジェクトの面を単一の面として設定する場合は、オブジェクト プロパティ...CAD...面モード 単一面の使用 に設定します。ノンシーケンシャル コンポーネント エディタ (NSCE) の複数行を選択した状態で設定すると、それらのオブジェクトに同じ設定を同時に適用することができます。


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オブジェクト プロパティ...コーティング/散乱 は、下図のように設定します。


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コーティング I.95 は、面に入射した光線のエネルギーのうち 95 % が透過して 5 % が反射する、ビルトインの理想コーティングです (注記: NSCE でメカ部品の材質を MIRROR に設定することで、光が透過しなくなります。そのため、95 % の光が吸収され、5 % の光が反射します)。 散乱割合 0.9 は、反射した光線の 90 % が散乱モデルの定義に従って散乱されることを意味します。したがって、この面に入射した光線のうち 5 % が反射し、0.05 x 0.9 = 0.045 (4.5 %) の光線がランバーシアン分布の散乱光に変換されます。

 

メカ部品による迷光

迷光の光源として、光源 (楕円) をオプトメカ系の入射開口に設置します。光源の位置と直径は、物理的な入射開口と同じにします。添付のサンプルファイルの場合、Z 位置が 4.0 E-3 で、X/Y 半幅が 7.0 E-3 となります。角度分布について、ランバーシアン光源は一つの候補となります。なぜなら、迷光の光源には、視野外から系に入射できる全方向に光線を出射する特性が必要なためです。角度分布をランバーシアンとするには、光源 (楕円) のコサイン係数を 1 に設定します。


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下図に、系のレイアウトを示します。なお、光源 1, 3, 4, 5 の表示光線数はゼロにしています。迷光を検出するディテクタのオブジェクト番号は 15 なので、フィルタ文字列で H15 を適用しています。光学系を通過した光線、もしくはメカ部品で散乱してからディテクタに到達した光線が表示されます。


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光線追跡を実行して ZRD ファイルを取得します。今回の場合、解析光線数を 1E+6 としました。上記で設置した光源 (楕円) からの光線のみを検証するため、オブジェクト番号 1, 3, 4, 5 の解析光線数をゼロとすることを確認してください。光線の保存にチェックを入れて、ディテクタに到達した光線のみを抽出するためにフィルタ文字列 H15 を設定します。クリアして光線追跡をクリックします。


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光線追跡が完了したら、終了をクリックして光線追跡コントロール ウィンドウを閉じます。次に、解析...光線追跡解析...光路解析 からツールを開きます。

 

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光路番号1は、メカ部品で散乱することなく光学系のみを透過してディテクタに到達する光路です。光路番号2, 3 は、赤枠で示すメカ部品 (オブジェクト番号 20, 21) で散乱した光の光路です。また、光路番号 4 は、光学系を透過した光線の一部がハウジング (オブジェクト番号 19) で反射してディテクタに到達しています。光路番号 2 ~ 6 では、散乱回数が 1 回です。一方で、光路番号 7, 8 はディテクタに到達するまでに 2 回の散乱 (オブジェクト番号 20, 21) が発生しています。その結果、1 回の散乱でディテクタに到達する光路と比較して、複数回の散乱を伴う光路のエネルギーは小さくなっています。そのため、これらの光路は、像質に大きな影響を及ぼさない可能性が高いです。


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下図は、このシリーズの パート 2 で説明するフィルタ文字列を用いて、光路番号 2 の光線のみを表示した結果です。


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光路解析ツールを使用することで、最も重大な迷光の経路を特定することができます。編集が必要となる部品 (今回のケースではオブジェクト番号 20 および 21) が分かっているため、これらのメカ部品から発生する散乱光の影響を低減するために、形状や光学的な面特性を変更できます。OpticStudio の Premium エディションであれば、光路解析ツールによって迷光の原因を特定するだけでなく、OpticStudio と CAD ソフトウェアのダイナミックリンクを通じて、CAD パーツ: Autodesk Inventor/Creo Parametric/SolidWorks オブジェクトの形状を直接編集可能です。光学エンジニアが OpticStudio の機能を使用することで、メカ部品が迷光に与える影響や、迷光が像質に与える影響を確認できます。

References

HANDBOOK OF OPTICS Volume I, Chapter 38 – Control of Stray Light by Robert P. Breault. (HANDBOOK OF OPTICS Volume I, 2nd edition, Optical Society of America, McGraw-Hill Professional, 1994)

KA-01842

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