拡張現実 (AR) 用ホログラフィック導波光学系のモデル化 : 第 2 部

AR 光学系では、しばしばホログラムを使用して、光を導波光学系に結合します。この記事では、2 部構成の本シリーズ第 1 部でモデル化したシンプルな設計を改良する方法を紹介します。

著者 Sean Lin、Michael Cheng

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記事の添付資料

はじめに

拡張現実 (AR) は、画面上の仮想世界を実世界の情景に結合し、相互作用させる技術です。
この記事では、前号『拡張現実 (AR) 用ホログラフィック導波光学系のモデル化 : 第 1 部』で設計した光学系を強化する方法を解説します。

改良設計

前回、第 1 部の記事で最適化した光学系は、さらに最適化して光学的性能を向上する必要があります。
はじめに、仕様の一部を厳しくしましょう。

  • 入射瞳径 = 4 mm に設定します。
  • FOV を±8°に拡大します。
  • 導波光学系をより薄くして 6 mm にします (下図参照)。

この段階では、パラメータを厳しくしようとすると設計が非現実的になることがわかるでしょう。この問題を解決するために、設計に制約を加えて、光線が物理的に意味のある経路を伝搬するようにします。評価関数に、関連するオペランドを含めることで、次の 3 つの条件を満足するように強制します。

  1. 光線は導波光学系の内部に留まるはずであり、外側を伝搬することはできない。
  2. 光線はホログラム面の後には伝搬できない。
  3. 光線は、導波光学系の側面にぶつからずに、上面から射出しなければならない。

                                             

最適化を容易にするために、まず面 13 の後にダミー面を 1 つ追加します ([材料] (Material) = PMMA に設定します)。この面は、光学系の配置と形状を正しく保つための基準面として使用します。次に、導波光学系の射出面の直後、面 17 にもう 1 つ座標ブレークを追加します。つづいて既存の面から厚みを切り取り、新しい座標ブレークの厚みに貼り付けます。この新しい面は、像面をティルトするために使用します。

光学系の表示をすっきりさせるために、面 14 の [面のプロパティ] (Surface Properties) → [描画] (Draw) を次のように変更します。

一方、目標達成を容易にするために、設計の変数を増やすことで自由度を高めます。はじめに、次のように設定することでホログラムをシフトおよびティルトできるようにします。

  1. [倍率] (Scale Factor) を -1 に設定したピックアップ ソルブにより、面 5 の厚みを面 2 の厚みにリンクします。
  2. 面 2 の厚みを変数に設定します。
  3. ホログラムの [X ティルト] (Tilt X) を変数に設定します。

次に、ホログラム 2 面のパラメータ [構成 Z1/Y2/Z2] (Construct Z1/Y2/Z2) を変数にして、構成ビームを全面的に変更できるようにします。
最後に、面 15 と 17 の [厚み] (Thickness) と [X 軸のティルト] (Tilt About X) を変数にして、導波光学系の射出面をシフトおよびティルトできるようにします。

現実的な光学系を得るためのコンストレインツ

面を追加し、変数を設定したら、次の段階では、光学系が現実的なものになるように評価関数を使用して制御します。スポット サイズに対して、デフォルト基準を使用する評価関数を作成し、面の位置に関して詳細なコンストレインツを設定します。新たに追加されたオペランドは、いずれも最適化機能から物理的に現実的な解を得ることを目的としています。必要な作業は、記事の添付資料のセクションからファイル "ARWaveguide.MF" をダウンロードし、これを Documents\Zemax\MeritFunction フォルダにコピーします。その後、[評価関数の読み込み] (Load Merit Function) ボタンにより、このファイルをメリット ファンクション エディタに読み込みます。以下に、この評価関数を構成するすべてのオペランドについて説明します。

現実的な光学系を得るためのコンストレインツ - ステップ 1

はじめに、ホログラムが導波光学系の側面と重ならないようにします。次の図から、点 A が面 9 の右側にあることがわかります。RAGZ を使用して、面 4 上の点 A の位置を検出し、その z 位置が面 9 の z 位置より小さくなるように制約を加えます。次に、導波光学系の入射面からホログラムまでの距離が正である必要があります。PLEN を使用して、この長さがゼロより大きくなるように直接指定します。

 

現実的な光学系を得るためのコンストレインツ - ステップ 2

第 2 段階として、図に示したように点 A が線 BC の左側になるように制約を加えます。ここで適用する便利な概念が外積です。右手の法則に従い、線 BA を 線 BC の左側に維持するには、判定基準として線 BA と線 BC の行列式を計算し、その値がゼロより小さくなるように目標を設定します。RAGY と RAGZ を使用して点 B と点 A の座標を取得します。線 BC の単位ベクトルは、RAGB と RAGC オペランドによって簡単に取得できます。

   

現実的な光学系を得るためのコンストレインツ - ステップ 3

次の段階は、面 13 と 16 の間、および面 16 と 19 の間の光線の伝搬が現実的なものになるように制約を加えます。それには、関連するすべての PLEN オペランドが正になるようにします。

  

現実的な光学系を得るためのコンストレインツ - ステップ 4

第 4 段階は、ステップ 2 と同じ手法で、点 D が線 EF の左側になるように制約を加えます。今回は、2 つのベクトル EF と ED の行列式を計算して、このコンストレインツを実現します。

  

現実的な光学系を得るためのコンストレインツ - ステップ 5

最後のコンストレインツは、次の図に示すように、点 F (マージナル光線と面 14 の交点) の y 位置が、点 D の y 位置よりも大きくなるように設定します。点 F の位置を取得するために、ダミー面 14 を使用する必要があります。

  

すべてのコンストレインツを設定して、光学系を最適化すると物理的に現実的な設計が得られます。この光学系の性能が非点収差によって制限されていることに気づくはずです。しかし、これはホログラム 2 の面を光学合成ホログラムに置き換えることで解決できます。

最終的な光学系は、記事の添付資料に収録されています。

参考文献

1. Konica Minolta Technology Report Vol.1 (2004)

2. OpticStudio help files

KA-01869

 

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