製造容易性設計 (DFM) は、光学設計プロセスで製造の容易さに配慮することを意味します。OpticsViewer は、製造容易性設計を支援するさまざまな機能を提供します。コスト エスティメータにより、製造元からリアルタイムのコスト見積もりが直接得られることから、より現実的な構想設計が実現します。このツールでは、ISO 10110 図面のデータから生成される XML ファイルを使用するため、シームレスなデータ交換が可能です。
著者 Alina Shmidt
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Introduction
OpticsViewer は、製造容易性設計を支援するさまざまな機能を提供しています。また、コスト エスティメータを使用することで、概念設計の水準向上を図ることができます。このツールにより、レンズ データを製造元に送信し、リアルタイムでコスト見積もりを入手できます。その情報を基に、レンズの形状、寸法、材質、コーティング、品質、数量がコストに及ぼす影響を確認できます。これは、光学設計ソフトウェア業界初の機能です。この記事は、コスト エスティメータ ツールの使用方法に関するチュートリアルです。
製造元への登録
コスト エスティメータを使用する前に、サポート対象の製造元に登録する必要があります。サポート対象の製造元に登録する手順は以下のとおりです。
Optimax
Optimax エスティメータの詳しい使用方法は、冒頭の「記事の添付資料」のセクションでダウンロードできるドキュメントを参照してください。この添付資料は OpticStudio のユーザー向けに作成されていますが、その内容は OpticsViewer にも適用できます。
こちらから Optimax エスティメータのウェブサイトにアクセスして、登録のリンクをクリックします。
目的とする製造元に登録した後、OpticsViewer を起動して、システム エクスプローラのコスト エスティメータのセクションで [提供者を管理] (Manage Providers) をクリックします。目的とするプロバイダをクリックして、ベンダーから入手したユーザー名とパスワードを入力します。ダイアログを閉じると情報が保存され、エスティメータを使用できるようになります。
システム エクスプローラの [提供者データのエクスポート] (Export Provider Data) ボタンを使用すると、暗号化形式でパスワード情報を保存できます。後日、パスワードの再読み込みが必要になった場合は、[提供者データをインポート] (Import Provider Data) ボタンを使用してパスワード情報をインポートできます。
コスト エスティメータの使用方法
コスト エスティメータには、OpticsViewer の 2 か所からアクセスできます。[製造] (Manufacture) ドロップダウンから起動するか、[ISO エレメント図面] (ISO Element Drawing) の専用タブを使用します。
このツールでは、コスト見積もりを提供するために、ISO 10110 図面に記述されたいくつかの情報が必要です。レンズの形状、寸法、材質、コーティング、品質 (公差) の各情報は必ず必要です。公差は、[設定] (Settings) → [全般] (General) タブの [TDE からリセット] (Reset from TDE) ボタンをクリックして公差データ エディタから取得します。コスト見積もりに、ISO 入力のすべての設定が考慮されるとは限りません。コスト見積もりに加味される入力は、使用するプロバイダに応じて異なります。プロバイダ固有の情報については、以下を参照してください。これらの情報がすべて ISO 10110 図面に記述されていれば、エスティメータの設定に進むことができます。
Optimaxのコスト エスティメータがサポートするパラメータ
Optimax をコスト エスティメータとして使用する場合は、以下の各フィールド (下図のハイライト部分) が考慮されます。
最初の図にある直径関連の入力は、それぞれ次のように定義されています。
- [有効径] (Effective Diameter) :面のクリア アパチャーです (面の形成公差と外観上の公差を満足する必要がある領域)。
- [直径] (Diameter) :有効径にチップ ゾーン (面が連続的な形状で延長されている領域) を加算した値です。凹面の場合は開放部とも呼ばれます。
- [直径 (平ら)] (Diameter (flat)) :完成した部品の全径です。凹面の場合は、開放部直径と平らな領域 (サグ フェイス) を加算した値です。凸面の場合、普通は [直径] (Diameter) と [直径 (平ら)] (Diameter (flat)) が同じ値になります。
コスト見積もりの生成
ISO 10110 図面からコスト エスティメータを起動すると、現在構成作業中のレンズがコスト見積もりの対象になります。見積もり生成に使用する製造元と数量を定義します。複数の数量をカンマで区切って記述すると、それらの数量ごとに見積もりを同時に生成できます。
設定を適切に指定して [OK] をクリックすると、選択したプロバイダからエスティメータによって見積もりが得られます。単価としてゼロが返された場合は、送信したレンズ データに誤りがないかメッセージを確認します。
コスト エスティメータを [製造] (Manufacture) ドロップダウンから起動した場合も同様に機能しますが、いくつかのオプションが追加されます。このツールでは、ISO 10110 図面から生成された XML ファイル、または直接 ZMX ファイルからレンズ データが読み込まれます。また、このツールにレンズ データを手動で入力することで、新しい部品をその場で作成することもできます。複数のレンズを同時に読み込むことができます。ツール上部のリストから特定の部品を選択すると、ダイアログの中央にその部品の面と材質に関するデータが表示されます。コスト見積もりは、[見積もりの更新] (Refresh estimates) をクリックするとダイアログの下部に表示されます。
ベンダーの制限事項と情報
コスト見積もりのプロバイダには、レンズの仕様データ、コスト エスティメータの設定、または公差に使用可能な値に制限があります。現在サポート対象となっているプロバイダに関する制限のいくつかとその他の関連情報を以下に示します。
Optimax
詳細な情報は、Optimax コスト エスティメータのドキュメントを参照してください。これは、記事の添付資料として提供されています。エスティメータが返す見積もりにレンズの特性が及ぼす影響を把握するうえで効果的なドキュメントです。この添付資料は OpticStudio のユーザー向けに作成されていますが、その内容は OpticsViewer にも適用できます。
このエスティメータは、Optimax が 1 週間以内に提供できるプロトタイプ光学系を前提としています。したがって、その適用範囲は一連の境界条件で制限されます。たとえば、レンズのデータ一覧に記述するガラスは、OpticsViewer のデフォルトである OPTIMAX ガラス カタログに登録されたものに限られます。その他にも、公差の入力として使用できる値には最小値が存在します (精度の制限)。コスト見積もりに関する境界条件の詳細は、Optimax コスト エスティメータに関するドキュメントを参照してください。Optimax の実際の製造能力は、これらの制限よりもはるかに広い点に注意が必要です。
Optimax をプロバイダとして使用する場合、上記の制限のいずれかに違反するデータを提示するとエラー メッセージが返されます。それらのエラー コードを以下に示します。
001 |
提出された XML ファイルに透過率エラーがあります。再提出するか、Zemax のお客様サービスまでお問い合わせください。 |
002 |
部品の側面がありません。 |
003 |
左面の面タイプが無効です。現在のところ、標準面と偶数次非球面のみがサポートされています。 |
004 |
右面の面タイプが無効です。現在のところ、標準面と偶数次非球面のみがサポートされています。 |
100 |
ログインに失敗しました。Optimax エスティメータに登録するには、estimator.optimaxsi.com にアクセスして [登録] (Register) をクリックします。 |
101 |
ユーザーの Estimator アカウントの有効期限が切れています。更新するには、estimator@optimaxsi.com までお問い合わせください。 |
110 |
見積もりの数量は、1 ~ 10 の範囲内に収める必要があります。 |
111 |
半径は、10 mm ~ 1500 mm の範囲内に収める必要があります。 |
112 |
平らな縁取りの直径位置でのエッジ厚は 1 mm 以上とする必要があります。 |
113 |
左面 : R/1 より明るい R/ ナンバーはサポートされていません。 |
114 |
右面 : R/1 より明るい R/ ナンバーはサポートされていません。 |
115 |
左面は平凸平凹であり、Optimax によるコスト見積もりでは 3/A が 1 フリンジより大きいことが必要です。 |
116 |
右面は平凸平凹であり、Optimax によるコスト見積もりでは 3/A が 1 フリンジより大きいことが必要です。 |
117 |
左面 : Optimax によるコスト見積もりでは面形成誤差 3/B が必要です。 |
118 |
右面 : Optimax によるコスト見積もりでは面形成誤差 3/B が必要です。 |
119 |
左面 : Optimax によるコスト見積もりでは面形成誤差 3/C がサポートされていません。 |
120 |
右面 : Optimax によるコスト見積もりでは面形成誤差 3/C がサポートされていません。 |
121 |
左面 : Optimax によるコスト見積もりでは面形成誤差の RMS 値が考慮されません。 |
122 |
右面 : Optimax によるコスト見積もりでは面形成誤差の RMS 値が考慮されません。 |
123 |
左面は平凸平凹であり、Optimax によるコスト見積もりではパワーを設定する必要があります。 |
124 |
右面は平凸平凹であり、Optimax によるコスト見積もりではパワーを設定する必要があります。 |
125 |
左面 : Optimax によるコスト見積もりでは曲率半径またはパワーあるいはその両方が必要です。 |
126 |
右面 : Optimax によるコスト見積もりでは曲率半径またはパワーあるいはその両方が必要です。 |
127 |
左面 : Optimax によるコスト見積もりではコーニック定数の公差が考慮されません。 |
128 |
右面 : Optimax によるコスト見積もりではコーニック定数の公差が考慮されません。 |
200 |
指定した材質が、Optimax によって推奨されているガラスではありません。営業担当者までお問い合わせください。 |
201 |
左面 : 指定されたコーティングは、Optimax のコーティングではありません。カタログから Optimax のコーティングを選択してください。 |
202 |
右面 : 指定されたコーティングは、Optimax のコーティングではありません。カタログから Optimax のコーティングを選択してください。 |
203 |
レンズの厚みは、ガラス メーカーが提供する標準的なガラス片の厚みを超えています。 |
204 |
レンズの幅は、ガラス メーカーが提供するガラス片の幅を超えています。 |
300 |
材質の厚みは、2 mm ~ 100 mm の範囲内に収める必要があります。 |
301 |
材質の厚みの公差は合計で 0.05 mm 以上とする必要があります。 |
302 |
左面 : ISO グレード番号 (5/A) は 0.063 以上とする必要があります。 |
303 |
右面 : ISO グレード番号 (5/A) は 0.063 以上とする必要があります。 |
304 |
左面 : ISO 面の不完全性 (5/L_A") は 0.001 以上とする必要があります。 |
305 |
右面 : ISO 面の不完全性 (5/L_A") は 0.001 以上とする必要があります。 |
306 |
左面 : 平らな縁取りの直径の 90% より大きい有効径とすることはできません。 |
307 |
右面 : 平らな縁取りの直径の 90% より大きい有効径とすることはできません。 |
308 |
左面 : 直径 (開放部直径) の 90% より大きい有効径とすることはできません。 |
309 |
右面 : 直径 (開放部直径) の 90% より大きい有効径とすることはできません。 |
310 |
左面 : 直径 (開放部直径) を、平らな縁取りの直径より大きくすることはできません。 |
311 |
右面 : 直径 (開放部直径) を、平らな縁取りの直径より大きくすることはできません。 |
312 |
左面 : 直径 (開放部直径) を、有効径より小さくすることはできません。 |
313 |
右面 : 直径 (開放部直径) を、有効径より大きくすることはできません。 |
314 |
公差を設定した平らな縁取りの直径は、最小値から 100 mm までの範囲とする必要があります。 |
315 |
材料の厚みと平らな縁取りの直径とのアスペクト比は、平らな縁取りの直径に対して 1/5 以上、10 倍以下の範囲とする必要があります。 |
316 |
平らな縁取りの直径の公差は合計で 0.015 mm 以上とする必要があります。 |
317 |
右面 : 直径の公差がサグの公差に変換されていますが、測定するには小さすぎます (限度は +/-0.015 mm)。 |
318 |
左面 : パワーの公差は 1 フリンジ以上とする必要があります。 |
319 |
右面 : パワーの公差は 1 フリンジ以上とする必要があります。 |
320 |
右面 : パワーの公差は 1 フリンジ以上とする必要があります。 |
321 |
左面 : 面形成の公差 B は 0.2 フリンジ以上とする必要があります。 |
322 |
右面 : 面形成の公差 B は 0.2 フリンジ以上とする必要があります。 |
323 |
計算されたエッジ厚の差異に対する公差がコスト エスティメータには小さすぎます。0.005 mm 以上とする必要があります。レンズの属性を修正するか、sales@optimaxsi.com まで詳細についてお問い合わせください。 |
324 |
RMS 粗さは 10 オングストローム以上とする必要があります。 |
325 |
{側面} 非球面 : 標準の製造工具で製造するには、最小ローカル曲率半径が小さすぎます。詳細な検討を経て、特殊工具により、小さいローカル曲率半径で製造できる可能性があります。詳細については、Optimax の営業担当者までお問い合わせください。 |
326 |
{側面} 非球面 : 標準の製造工具で製造するには、傾斜が大きすぎます。詳細な検討を経て、特殊工具により、小さい法線角度で製造できる可能性があります。詳細については、Optimax の営業担当者までお問い合わせください。 |
327 |
{側面} 非球面 : 側面計で測定するには、面のサグが大きすぎます。詳細については、Optimax の営業担当者までお問い合わせください。OpticsViewer のコスト エスティメータは、製造元に送信されたレンズ データに基づいて、リアルタイムのコスト見積もりを提供します。コスト エスティメータを、コストと設計感度を低減する他のツールと組み合わせることにより、設計判断が製造に及ぼす影響を検討するための総合的なツールセットを使用できるようになっています。 |
KA-01883
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