ヘッドアップディスプレイの性能解析で Speos は優れたツールです。OpticStudioで設計した光学系を、STEP ファイルフォーマットで Speos にエクスポートできます。そこで、HOA (HUD 光学解析) ツールを使用して光学系の性能を計算できます。この機能を使用するには、HUD の設計と解析に関する Speos のアドオンおよび Speos の Premium ライセンスまたは Enterprise ライセンスが必要です。
作者 : Sandrine Auriol
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HUD の説明
ここで取り上げる HUD は、記事「ヘッドアップディスプレイの作業で使用するツールの選択」で使用したものです。この HUD 光学系の特性を以下の図に示します。
OpticStudioのシーケンシャルファイルの作成
OpticStudioのシーケンシャル設計を Speos へ容易にインポートできるように以下のアパチャーを追加します。
- 物体位置に置いた矩形アパチャー。この場合の物体は HUD の仮想画像です。この矩形アパチャーで視野のサイズを示します。
- PGU 位置に置いた矩形アパチャー。
ファイル HUD_Step1_MF_after_optim.zar を開きます。
物体のプロパティを開きます。次の矩形アパチャーを追加します。
像のプロパティを開きます。次の矩形アパチャーを追加します。
水平方向サイズ = 28 mm
垂直方向サイズ = 28 mm
添付資料には、このアパチャーを設定したファイル HUD_Step1_MF_after_optim_apertures.zar があります。
元のファイルにあるミラーはサイズが小さすぎるので、ここではフットプリントダイアグラムの確認を経て新たなサイズとしています。
フリーフォームミラー: 元のサイズと新しいサイズ
折り返しミラー: 元のサイズと新しいサイズ
CAD ファイルへのOpticStudioのエクスポート
OpticStudioのモデルを CAD ファイルに変換して Speos へインポートします。
グローバル座標基準面があることを確認してから、この CAD モデルをエクスポートします。この基準面を CAD の原点として使用するからです。
OpticStudioで設計を CAD ファイルへエクスポートします。
Speos ですべての面を使用できるようにするには、ダミー面の厚みを 1 として [ダミー面をエクスポート] (Export Dummy Surfaces) を選択します。比較のために光線もエクスポートできます。
CAD の精度の確認
Speos での作業に移る前に、組み込みの面を使用したOpticStudioモデルの性能を、CAD モデルと比較してOpticStudioから確認できます。添付資料にファイル HUD_Step1_MF_after_optim_CAD.zar があります。このファイルには以下の 2 種類のコンフィグレーションが設定されています。
- コンフィグレーション 1: 組み込みモデル
- コンフィグレーション 2: このモデルの CAD エクスポートに伴うノンシーケンシャルコンポーネント面を設定しています。
コンフィグレーションマトリックススポットダイアグラムなどの解析によって、2 つのコンフィグレーションに基づく結果を比較できます。このファイルでは、眼の瞳をモデル化するために絞りの直径を 4 mm に設定しています。
変換した STEP ファイルには、この HUD が良好に記述されていることがわかります。
Speos への CAD ファイルのインポート
Speos の [File] → [Speos Options] → [File Options] → [General] でインポート設定を確認します。
つづいて CAD ファイルを開きます。
Speos では構造が次のようになります。OpticStudioのレンズデータエディタと比較すると、次のようにオブジェクト名が行の名前になっています。
OpticStudioユーザーから見た Speos の操作
Speos でオブジェクトを操作する方法は、OpticStudioの場合とは異なります。ただし、Speos の操作はカスタマイズできます。OpticStudioでの操作と同じにはなりませんが、この記事で有用な操作設定を以下に示します。
Action |
Description |
OpticStudio |
Speos |
Spin |
Rotate the view, an object or a group of objects |
Hold Left Mouse Button (LMB) |
Hold Right Mouse Button (RMB) |
Pan |
Moving the view up, down, left or right |
Hold Middle Mouse Button (MMB) |
CTRL + Hold Middle Mouse Button (MMB)
|
Zoom |
Zoom in and out of the view |
Scrolling the mouse wheel |
Scrolling the mouse wheel |
操作の設定が「SPEOS Getting Started guide」にあります。初めて使用するユーザーにお勧めします。
Speos での HUD の光学解析 (HOA)
HOA を使用すると、自動車用ヘッドアップディスプレイの仮想画像品質を定量化できます。計算できる数値は以下のとおりです。
- 仮想画像の距離、見下ろし角、ルックオーバー角、視野
- ディストーション、スマイル、トラピーズ、ねじれ、倍率、回転、発散など
- ゴースト
- 視野曲率、スポットサイズ、非点隔差
- プラグインを使用した条件下で、特定の自動車製造元が規定している光学指標定義と適合基準
- ディストーションがない像の補正値を提供する変形データ。変形データもインポートできます。
Speos に CAD ファイルをインポートすると、光源や材料を定義せずに HOA を実行できます。HOA による解析では HOA の各項目を定義する必要があるので、HOA ツールは直感的です。
最初の手順は HOA の各軸の定義です。OpticStudioによる設計では、車の進行方向が Z 軸、車の上方が Y 軸です。
HOA の設定には、アイボックス、目的の像、フロントウィンドウ、ミラー、PGU があります。項目ごとに、OpticStudioから読み取ることができる基準を入力し、関連するオブジェクトを選択します。添付資料に Speos のファイルがあります。
Speos の詳しい設定については、まもなく公開予定のビデオをご覧ください。
変形
HOA から得られる出力として変形があります。両方のソフトウェアどうしで、正常性確認の観点からこの指標を比較します。変形とは、光学系で像に発生したディストーションを PGU 上のグリッドで表す方法です。
光学系の光学収差を補正する後処理の手段として、この「変形したグリッド」を使用します。PGU は「変形した」像を表示して、運転者に最適な最終像を実現します。
Speos での結果
HOA 解析では変形設定が次のようになります。
上記では、変形アルゴリズムが無効に設定されています。この設定は最終的な像を補間するために必要です。HOA を実行して結果を確認します。
実行すると、Speos 出力ファイルの下にファイルが保存されます。このファイルには、PGU の変形量がピクセル単位で記述されています。
OpticStudioでの結果
OpticStudioでは、逆方向モデル (手順 1: 仮想画像からディスプレイへ (逆方向での設計)) で、仮想画像上の視野をサンプリングし、これらの視野の画像が PGU 上でどの位置に相当するかを確認することにより、変形を計算できます。画像シミュレーションでは視覚的な結果が得られ、全視野スポットダイアグラムでは視野ごとのスポットが表示されます。しかし、数値出力を得るには、ユニバーサルプロット 2D の使用が適切です。
このプロットは 2 回実行できます。まず、CENX オペランドを使用して視野のセントロイドまたは平均ポイントの X 座標を求め、次に CENY オペランドを使用して同様のポイントの Y 座標を求めます。
像面 (面 12) のローカル座標系で表した結果がミリメートルの単位で得られます。Speos では結果がピクセル数で得られます。
座標値からピクセル数への変換式は次のとおりです。
Pixel_x = round((CENX + PGU_Xsize/2) ✕ Pixel_x_size,0)
Pixel_y = round((CENY + PGU_Ysize/2) ✕ Pixel_y_size,0)
まとめ
この記事では、OpticStudioから Speos に HUD 設計をエクスポートする手順を取り上げました。Speos の HOA は、設計した HUD に関する万全なレポートを入手するうえで優れたツールです。
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