OpticStudio と Creo とのダイナミック CAD リンクの使用

OpticStudio Premium では、ネイティブの Autodesk Inventor のパートファイル (IPT) PTC Creo Parametric のパートファイル (PRT) をノンシーケンシャル光学系で直接開くことができます。このように開いたパートファイルでは動的な変更や最適化が可能です。この記事では、Creo パートの使用例を紹介します。

著者 : Mojtaba Falahati

はじめに

OpticStudio Premium では、Autodesk Inventor PTC Creo Parametric のパートファイルをノンシーケンシャルモードで動的に開くことができます。これにより、プリミティブな形状や一般的な形状では容易にモデル化できないオブジェクトを対象として、モデル化とパラメトリックな制御が実現します。ネイティブの CAD パートは、それに関連付けられたオブジェクトタイプを使用して、ノンシーケンシャルコンポーネントエディタへ容易に取り込むことができます。

オブジェクトに明示的に定義されているあらゆる寸法をノンシーケンシャルコンポーネントエディタに表示でき、そこで制御できます。これにより、機械設計部門で使用しているファイルを光学設計部門でも使用して作業できるので、ファイルフォーマットを変換する必要がありません。この記事では、PTC Creo Parametric  のファイルを例として、動的な CAD 機能の使用方法を説明します。

CAD ソフトウェアのインストール

OpticStudioの動的な CAD 機能を使用するための第一歩は、適切な CAD ソフトウェアパッケージのインストールです。

  • 「CAD パート :Autodesk Inventor」オブジェクトを使用するには、Autodesk Inventor® 2018 以降をインストール*する必要があります。このオブジェクトは、Autodesk Inventor のパートファイル (*.ipt) と動的にリンクします。
  • 「CAD パート : Creo Parametric」オブジェクトを使用するには、PTC Creo Parametric® 7.0(または、その旧リリースである Creo Parametric 6、5、または4 )をインストール*する必要があります。このオブジェクトは、Creo Parametric のパートファイル (*.prt) と動的にリンクします。

* OpticStudioのテクニカルサポートでは、Autodesk Creo のインストールを支援できない点に注意してください。

「CAD パート : Creo Parametric」オブジェクトを使用する場合は、OpticStudioにパートを読み込む前に、該当の CAD アプリケーションを開いておく必要があります。OpticStudioを実行している間は、そのアプリケーションも開いた状態にしておきます。これは、OpticStudioファイル作成元プログラムとの通信を常に稼働状態で維持するためです。一方、「CAD パート : Autodesk Inventor」オブジェクトを使用する場合は、OpticStudio Inventor のパートを読み込む前に Autodesk Inventor を起動しておく必要はありません。この場合は、OpticStudioによって Inventor がサイレントモードで自動的に開きます。つまり、Inventor アプリケーションは PC 画面のどこにも表示されませんが、そのプロセスが動作していることはタスクマネージャで確認できます。OpticStudioを実行している間は、このプロセスを実行状態にしておく必要があります。OpticStudio Autodesk Inventor との通信を常に稼働状態で維持するためです。どの場合でも、OpticStudioでパートを変更できるようにするには、OpticStudioと作成元プログラム間の常時通信が必要です。

Creo Parametric の例

以下の例で使用する Creo Parametric のパートファイルは、無料 CAD 配布のウェブサイトであるGrabCADから入手したものです。次に示すランプをOpticStudioでパラメトリックにモデル化するとします。

この PRT ファイルは、この記事の添付資料として用意されているほか、GrabCADのウェブサイトCFL Lamp (Bulb) | 3D CAD Model Library | GrabCAD からダウンロードすることもできます。

このパートを Creo Parametric で調べることから始めます。FeatureManagerのモデルツリーには、CFL 電球の作成で使用したフィーチャーと寸法が表示されています。

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モデルツリーでスケッチまたは形状を右クリックして [寸法を編集] (Edit Dimensions) をクリックし、関連する寸法をウィンドウで確認します。次のスクリーンショットでは、Sketch1 の作成で使用された寸法がわかります。

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参考までに、この電球の寸法は次のとおりです。

  • d0 =500 mm
  • d1 = 85 mm
  • d19 = 25 mm
  • d20 = 23 mm

この PRT ファイルをOpticStudioで開くと、ノンシーケンシャルコンポーネントエディタで電球の寸法にアクセスして編集できます。OpticStudioでは、これらの寸法にデフォルトでラベル dx が自動的に付加されます。x は寸法ごとに割り当てられる整数です。

フィーチャーと寸法の名前は Creo Parametric で変更できます。適切な名前にすることにより、OpticStudioでの変更作業がわかりやすくなります。これらの名前を変更するには、グラフィック領域で目的の寸法値をクリックします。[寸法] (Dimension) タブが開き、そこで寸法の名前と値を編集できます。

 

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ここで、PRT ファイルを保存して閉じますが、Creo は開いたままとして、バックグラウンドで実行されている状態にします。

OpticStudioのダイナミック CAD リンク

この Creo Parametric パートをOpticStudioで開くために、Zemaxの適切なユーザーデータフォルダに PRT ファイルを保存する必要があります。次のように、{Zemax}\Objects Autodesk Inventor のファイル用と PTC Creo Parametric のファイル用として 2 つのユーザーデータフォルダがあります。

 

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OpticStudioでは、[設定] (Setup) [プロジェクト環境設定] (Project Preferences) [フォルダ] (Folders)の設定で、これらのフォルダの場所をカスタマイズできます。

 

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Creo Parametric Files フォルダに保存した *.prtファイルは、OpticStudioのノンシーケンシャルコンポーネント (NSC) エディタから開くことができます。そのためには、新たなノンシーケンシャル光学系を開きます。NSC エディタで [オブジェクトプロパティ] (Object Properties) を展開し、次のように [タイプ] (Type) ドロップダウンメニューで [CAD パート : Creo Parametric®] (CAD Part: Creo Parametric®) を選択します。

 

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適切なprtファイルを選択します。

 

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[OK] (OK)をクリックし、新たな NSC シェーデッドモデルを開いてパートを表示します。Creo Parametric で表示されていたコンポーネントがOpticStudioでも同様に表示されます。

 

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この例で、Creo Parametric のパートファイルで使用されている単位はミリメートルですが、これはOpticStudioでもデフォルト設定のレンズユニットです。Autodesk Inventor または PTC Creo Parametric を開くと、その単位が現在のレンズユニット設定と一致しているかどうかがOpticStudioによって自動的に判断されます。単位が異なっていると警告が発行されます。混乱や誤りを避けるために、OpticStudioのレンズユニットと CAD プログラムの光学系の単位を同じ単位に設定することを強くお勧めします。

OpticStudioで開いた CAD オブジェクトには、コーティング、材料、散乱関数などの光学プロパティが適用されていることがあります。また、NSC エディタのパラメータ列にパートの寸法が直接表示され、そのパートの特徴的な特性を動的に制御できます。[オブジェクトプロパティ] (Object Properties)を展開して[CAD] (CAD)設定へ移動します。ここには、PRT ファイルに定義されているスマート寸法とコンフィグレーションがすべて表示されています。Creo Parametric のコンフィグレーション機能は、OpticStudioのマルチコンフィグレーション機能にきわめて類似しています。同じパートに定義した複数の設定を 1 つのファイルに保存できます。Creo のコンフィグレーション設定を制御する CPCN マルチコンフィグレーションオペランドを使用すると、Creo Parametric OpticStudioの各種機能を互いにリンクできます。

デフォルトでは、このようなパート寸法は NSC エディタにパラメータとして表示されません。しかし、それらのどの寸法も、[パート寸法名] (Part Dimension Name) コンボボックスで選択して[表示可能] (Expose)をクリックすることで表示されるようになります。Inventor の寸法を表示するための同様な設定があります。

 

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この例では[すべて表示可能] (Expose All)をクリックします。これで、すべての寸法が NSC エディタに表示され、動的に変更できるようになります。

 

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いくつかのパラメータを変更して NSC シェーデッドモデルを更新し、どのように変化するか確認してください。以下の図では、d0 500 mm から 550 mmd1 85 mm から 90 mmd19 25 mm から 40 mm にそれぞれ変更しています。

 

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クライアントマシンにOpticsBuilder for Creo 7 がインストールされていて、以下の記事にあるOpticsBuilder for Creo Parametric 7 向けの手順を実行していないとします。

この場合、ZemaxOpticStudioでは、CAD パート : Creo Parametricのオブジェクトの作成や読み込みの際に問題が発生することがあります。したがって、Creo Parametric 7 とのダイナミックリンクを使用する場合は、上記の記事にある手順の実行が不可欠です。

変更したファイルの保存

OpticStudio CAD オブジェクトに適用した変更は、そのオブジェクトのネイティブファイルフォーマットで保存できます。その場合、変更したオブジェクトを PRT パートファイルとして保存します。Inventor では IPT ファイルとして保存します。そのためには、NSC エディタのツールバーへ移動して [CAD ツール] (CAD Tools) を展開し、ドロップダウンメニューから[変更した部品の保存] (Save Modified Part)を選択します。

SaveModified.png

変更したオブジェクトを新規ファイルに保存できるほか、元の CAD オブジェクトと同じファイル名で保存して、元のファイルを上書きすることもできます。新規の CAD ファイルとしてオブジェクトを保存すると、現在OpticStudioで使用している CAD ファイルは自動的には置き換えられません。現在の CAD ファイルを別のファイルに変更するには、[オブジェクトプロパティ] (Object Properties) [タイプ] (Type) 設定に戻り、新たに作成した CAD ファイルを [データファイル] (Data File) ドロップダウンメニューで選択します。

変更したパート寸法の保存のほか、コーティングや材料など、OpticStudioで割り当てたあらゆる光学プロパティもネイティブの CAD ファイルに保存できます。PTC Creo Parametric では、光学プロパティがアノテーション注記として保存されます。このアノテーションは、パートまたはアセンブリのモデルツリーにあります (モデルツリーの [フィルタ] (Filter) [アノテーションを表示] (Display Annotations) をチェックしておく必要があります)。Autodesk Inventor では、[iProperties] (iProperties) ダイアログボックスの [カスタム] (Custom) タブで光学特性を保存します。Creo Parametric では、アノテーション注記の名前が「Z」で始まりますが (プロパティ全体が記述されるのは注記名ではなく、注記のテキストです)、Autodesk Inventor では、光学プロパティの名前が「OpticStudio」で始まります。

オブジェクトの作成元プログラムで保存された情報は、そのプログラムにとって特に意味はありませんが、参考として提供されます。ただし、同じファイルを別のOpticStudio設計に読み込むと、そのファイルに保存されているプロパティ情報をOpticStudioで読み込むことができます。その情報を使用して、新しいOpticStudio設計で該当のオブジェクトに光学プロパティが割り当てられます。

OpticStudioで変更した Creo Parametric のパートを次のスクリーンショットに示します。この Creo Parametric パートには材料として N-BK7 が使用されています。また、電球とベースの外面には散乱プロファイルが割り当てられています。電球の内部には 2 つのフィラメント光源が定義されていて、得られた遠視野角度分布がディテクタ () に表示されます。この例は、添付資料に *.ZAR のアーカイブファイルとして保存されています。

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