入門ガイド 1.4: 正規化座標系

本記事では、OpticStudio で視野とアパチャーの定義に使用する正規化座標系について説明します。正規化座標系を用いることで、定義方法や大きさが異なる視野を、同じ数値で表現することができます。

著者 Takashi Ishikawa

システム アパチャーの定義方法は 6 通り、視野の定義方法は 4 通りあるので、正規化座標で作業すると効率的です。光学系の初期設定では最適なアパチャー定義と最適な視野定義を選択し、これら両方のデータを入力します。以降は、すべての計算で正規化単位が使用されるので、入力した具体的な値や使用した定義を参照する必要はありません。

 

正規化視野座標

正規化視野座標 Hx および Hy は、OpticStudio とそのドキュメント、そして光学設計に関する文献で広く使用されています。たとえば、正規化視野座標の (0, 1) は必ず y 方向の上端を表します。視野点を角度または高さのいずれで定義していても、また視野座標の大きさが異なっても変わりません。同様に、視野座標の (0, 0) は必ず視野の中心です。
たとえば、ミリメートルをレンズ ユニットとした物体高を使用して、(x, y) 方向に 3 つの視野点 (0, 0)、(10, 0)、(0, 3) を定義したとします。動径座標が最大の視野点は 2 番目のものなので、最大円形視野は 10 mm です。視野を物体高で定義しているので、正規化座標 (Hx = 0, Hy = 1) は物体面上の (x =0, y = 10 mm) の位置を表します。正規化座標 (Hx = 1, Hy =0) は、物体面の (10, 0) の位置を表します。
Hx2 + Hy2 ≦ 1 が成立するかぎり、レンズの視野にあるどの点も (Hx, Hy) 座標で定義できます。
正規化視野座標が単位円上の点を表すことから、この定義方法を円形視野正規化と呼びます。OpticStudio は矩形視野正規化もサポートしています。この方法では、正規化視野座標が単位矩形上の点を表します。
 

正規化瞳座標

正規化視野座標と同様に、正規化瞳座標も OpticStudio とそのドキュメント、そして光学設計に関する文献で広く使用されています。まず、任意の最も便利な方法でシステム アパチャーを定義します。つづいて、単位円上にある任意の点を正規化瞳座標 Px および Py で定義します。したがって、システム アパチャーの定義方法やその値にかかわらず、点 (0, 1) は光学系に入射する光束の上端を表し、(0, 0) は光束の中心を表します。
 

正規化座標の使用方法

視野 28°のダブルガウス レンズのサンプル ファイルを開きます。システム エクスプローラの [視野] (Field) セクションを開き、視野が角度 (°) で定義され、最大視野点の値が 14°であることを確認します。この値は視野の半角なので、全視野角は 28°です。
 : OpticStudio では、使用する定義が必ず明確になっていますが、これらの定義が光学業界全体で広く使用されているわけではありません。重大な誤りを避けるために、重要な光学系の仕様では、どのような定義を使用するかを必ず顧客との間で明確にしておく必要があります。
次に、システム エクスプローラの [アパチャー] (Aperture) セクションを展開し、システム アパチャーが [入射瞳径] (Entrance Pupil Diameter) で定義され、その値が 33.33 であることを確認します。[単位] (Units) タブに移動してレンズ ユニットを確認するとミリメートルであることから、EPD は 33.33 mm になります。
最後に、[波長] (Wavelength) セクションを展開し、この設計では、0.4861 ミクロン、0.5876 ミクロン、0.6563 ミクロンの 3 波長を使用することを確認します。主波長は、波長番号 2 の 0.5876 ミクロンに設定されています。
ここで [解析] (Analysis) タブをクリックし、[光線とスポット] (Rays and Spots) → [光線追跡] (Ray Trace) を選択します。これは、OpticStudio で最も基本的な計算である単一光線の追跡です。このウィンドウを右クリックし、[設定] (Settings) ダイアログ ボックスを表示します。

 

物体面上で光線が出発する位置を正規化座標 (Hx, Hy) で表し、その光線が瞳の中で到達する位置を正規化座標 (Px, Py) で表すことで、あらゆる光線を定義できることを確認してください。光線をいくつか追跡して、この機能で得られるデータを検討します。光学系の面ごとに、光線の (x, y, z) 位置、光線の方向余弦、光路長が表示されます。これらの値は、シーケンシャル光線追跡ですべての計算の基礎となる基本的なデータです。
「任意」の視野座標 (Hx, Hy) を定義する代わりに、視野点番号で光線の開始座標を定義することもできます。

 

視野点 3 で最大円形視野が定義されているため、その点の位置は正規化視野座標で (0, 1) になります。同様に、視野点 2 は (0, 0.714)、視野点 1 は (0, 0) です。選択した解析機能に応じて、視野点番号 ([視野] (Field) ダイアログ ボックスで入力します) または (Hx, Hy) の値のいずれかで視野点を定義できます。

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