本記事では、OpticStudio シーケンシャル モードで光学系を定義するための、面の設定方法を紹介します。光学部品の面形状および材質をレンズデータエディタから入力します。
著者 Takashi Ishikawa
[ファイル] (File) ... [開く] (Open) をクリックし、ファイルとして {現在のユーザ}\Documents\Zemax\Samples\Sequential\Objectives\Double Gauss 28 degree field.zmx を選択します。
シーケンシャル レンズ設計では、必ず物体面である面 0 で光線を開始し、面 1、面 2、面 3 …の順に追跡します。したがって、面の配置を互いの相対位置関係で表すことが合理的です。ダブルガウス レンズのサンプル ファイルに戻り、レンズ データ エディタを開き、面 3 をクリックします。エディタでクリックした面が [レイアウト] (Layout) プロットで赤色で描画されます。
光線はレイアウトの左から右へと伝播し、これが Z 軸の + 方向になります。+Y 軸はウィンドウの下から上、+X 軸は画面の手前から奥に向かう方向です。右手の中指をレイアウト ウィンドウの面 1 に触れるように面の奥に向けると、人差指は画面の右方向に、親指は上方向を差します。これは、OpticStudio 全般および光学設計に関する文献のほとんどで使用されている「右手」座標系です。以下のシェーデッド モデルのプロットには、必ず座標軸が表示されます。
また、[レイアウト] (Layout) ウィンドウでマウスを移動すると、マウス ポインタの位置座標がウィンドウのタイトル バーに表示されます。
[レイアウト] (Layout) ウィンドウでマウスを左右に移動すると、Z 座標の値が変化し、上下に移動すると Y 座標の値が変化します。
レンズ データ エディタには、面 1 について以下のデータが表示されます (OpticStudio のデモ版を使用している場合、小数点以下の桁数が少なくなります)。
Radius of curvature 曲率半径: 54.153
Thickness 厚さ: 8.747
Material 材質: SK2
Clear Semi-diameter クリア半径: 29.225
Conic コーニック: 0
単位が明示されていない長さは、すべて「レンズ ユニット」を単位としており、このファイルの場合は mm です (「[システム エクスプローラ] (System Explorer)」の「[単位] (Units)」を参照)。
面 1 の曲率半径は、54.153 mm です。曲率中心が Z の正方向に位置することから、曲率は正の値になっています。これに対して、面 7 の曲率中心は Z の負方向にあるので、曲率半径は -25.685 mm になります。面 1 の厚み 8.747 mm は、面 2 が面 1 から +Z 方向に 8.747 mm 離れた位置にあることを意味します。つまり、「厚み」とは、ある面から次の面までの Z 軸に沿った距離です。エディタでこの値を「z 方向の距離」ではなく「厚み」としているのは、面 1 と 面 2 で構成するレンズを記述する場合、中央の厚みで表現する方が自然だからです。面 1 の [材質] (Material) タイプは SK2 に設定されています。これは、面 1 と面 2 の間の空間が、SK2 という名前の特定のガラスで満たされていることを意味します。エディタで SK2 ガラスをクリックしてから、[ライブラリ] (Libraries) タブの [材料カタログ] (Materials Catalog) アイコンをクリックします。
SK2 が [ショット] (Schott) カタログに登録されている材料であることがわかり、このガラスに関して OpticStudio に収録されている全データが表示されます。
注 : このチュートリアルでは、このダイアログの詳細には触れません。詳細については、テクニカル リファレンスの「ガラス カタログの使用」を参照してください。
次の面 2 の [材質] (Material) 列は、何も入力されていない空欄です。これは、面 2 が標準の温度と気圧の「空気」でできていることを意味します。温度と気圧は、いずれも光学系全体で変更できるほか、面単位で変更することもできます。これらは、光学系に重要で微妙な影響を及ぼします。第一に、ガラスの屈折率は温度と波長の両方に依存し、空気を基準とした比屈折率も気圧によって変化します。第二に、ガラスは温度に応じて膨張収縮するので、レンズの半径や厚みなどの寸法が変化します。第三に、レンズの組み込み材料の膨張収縮により、レンズ間の距離が変化します。
OpticStudio の熱解析機能では、これらの影響をすべて考慮できます。OpticStudio では、任意の具体的な温度または温度範囲で、設計の解析と最適化が可能です。なお、これらはこのチュートリアルの対象外なので、ここではすべてのレンズが 20℃、1 気圧にあるものと仮定します。
注 : 温度と気圧を包括的にモデル化する OpticStudio の機能の詳細については、テクニカル リファレンスの「熱解析」を参照してください。
[クリア半径] (Clear Semi-Diameter) の列には、面の半径方向高さが表示されます (半径と呼ぶのは曲率半径との混同を避けるためです)。この値は、OpticStudio による自動計算 (デフォルト) またはユーザによる直接入力の 2 つの方法で計算できます。
自動計算の場合、エッジの光線が必ずレンズを通過するように半径が設定されます。これは、視野全体からの光線が全開口を通過するうえでレンズが「必要十分」な大きさであることを意味します。通常、これより若干大きめにレンズを製作し、光線の通過には使用しないガラス部分を生成します。この部分でレンズを構造材に保持し、光線が遮蔽されないようにします。システム エクスプローラの [アパチャー] (Aperture) グループにある半径マージンを追加することで、このガラス追加量を容易に指定できます。
KA-01906
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